最終話 約束
俺は、少し考えてから口を開いた。
「俺も運命を信じてる。というか、この数日で運命を目の当たりにした。
なんて言ったらいいかわからないけど、サクラが来てから、運命がサクラに吸い込まれるように流れているのを感じる。
だから俺に運命の人がいるなら、それはサクラだって思ってる。」
たとえこの能力がなくても。
「でも、シホがいたんだ。
俺だけの運命だったら、俺はあの日誘拐犯に刺されて死んでいたかもしれない。
シホの勇気が、意志が、運命を変えてくれたんだって最近は思う。
結果や行動が全て運命によって定められているとしても、それを起こすための意志までにも、運命は作用できないんじゃないかって。
だから俺は自分の意志を信じたい。
…ごめん、何を言ってるんだって感じだよね。」
「ううん、わかるよ。
素敵な考え方。
確かにそうかもね、私を助けてくれたことに優介くんの意志がなかったら、悲しいし。」
少し沈黙が流れる。
「そっかー。やっぱりシホちゃんがライバルか。
優介くんの意志はシホちゃんにあるってことでしょ。」
不貞腐れたように彼女は言った。
「じゃあさ、約束して。
もし、これから優介くんが、
運命を信じたくなったら…」
「また私を探して見つけ出して。」
そう言って彼女は左手を出して小指を立てる。
俺もつられて左手を出した。
「わかった。 約束だ。」
ギュルルルルル…
3…
2…
1…
…0
ここまで読んで下さってありがとうございまた!