第七話 勇気
男のナイフが俺たちに振り下ろされる。
俺は思わず目を瞑る。
その瞬間。
「ハァッ!」
カラン、とナイフが地面に落ちた音がした。
目を開けるとそこには野崎シホがいた。
彼女の上段蹴りが男に炸裂したようだった。
追撃の構えを見せると、男は一目散に逃げ出す。
「シホ! どうしてここがわかったの。」
「どうしてって、優介がカフェから出て行った後、いてもたってもいられなくなってGPSのアプリで追いかけてきたのよ。」
泣きながらそう言い、俺に抱きつく。
「2人とも本当に無事でよかった…!」
「ごめん。来てくれてありがとう。シホ。」
2人の女性を抱いたまま座っていると、警察が到着した。誰かが呼んでくれたのだろう。
その晩、俺たちは警察で事情聴取を受けた。
警察や親たちから、お叱りと感謝と心配の言葉を受け、感情がぐちゃぐちゃになった。
翌日。
学校へ行くと、俺とシホは佐々木サクラから改めて感謝を伝えられ、2人して照れ笑いした。
周りからは英雄扱いだった。
「私だって結構活躍したんですよ!」
リリィが不満げに言う。
俺は感謝してるよ。
でも俺だって運命の赤い糸がなかったら何もできなかったかもしれない。
だから本当にリリィのおかげなんだ。
だけど力を与えられたことすら運命だとしたら?
その先は考えないようにした。