第二話 転校生
火曜日、朝8時。俺はいつものように自転車に乗り、登校していた。毎日変わらない景色。
いつもと違うのは…このハイテンション天使がついてきていることだ。
「おはようございます! 人間界でお泊まりしたの初めてですよ! ドキドキしました!」
ドキドキしか語彙のないこの天使は、昨日から俺に付き纏い続けている。高校はもちろん、俺の家のトイレや風呂にまで。どうやらコイツの姿や声は俺以外には認識されないようだ。
教室に入ると、すでに担任の先生と見慣れない女子生徒がいた。
「おう齊藤。おはよう。」
「おはようございます。」
先生に挨拶すると、女子生徒も会釈した。
咄嗟に俺もぺこりと頭だけ下げた。
チラッと見ると、その女子と目があった。
銀色の髪留めが印象的だった。
「はいみんな注目! このクラスに転校生がきました。」
教室内は当然ざわついている。
転校生は先生の合図で一歩前にでて話し始めた。
「初めまして! 北海道からきました、佐々木サクラといいます。
いろいろあって、昨日の夜こっちについたのでこの辺のことはよくわかっていないのですが、今日からよろしくお願いします。」
と、少し早口で話しきった。
黒髪ロングで端正な顔立ちと、少し訛った自己紹介はクラスの男子たちの心を掴んだ。
北海道からきた、と言ったがまさか…と思い、机の下でこっそり小指を立ててみる。
ギュルルルルル…
5m
…これが運命の力というやつなのだろうか。
転校生、佐々木サクラは先生に案内され、俺の横の空席に座る。
「よろしくね、齊藤優介くん。」
小指を戻し、俺はまた、頭だけで会釈した。