表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

第一話 邂逅


「あなたの運命の人、知りたくないですか。」


いきなり目の前に現れた天使がそう言った。



水曜日、朝8時。俺はいつものように自転車に乗り、登校していた。12月中旬だというのに、雪の降る気配はない。


毎日変わらない景色。


いつもと違うのは、今、急に目の前が明るくなったことだ。

急いでブレーキをかける。


そこには美しく輝く天使…ではなく

ハロウィンのかわいくデフォルメされたお化けのような生物がふわふわ浮いていた。

三角巾の代わりに天使の輪っかがついている。


「始めまして。私は運命の天使です。

 あなたの運命の人、知りたくないですか。」


高い声で話しかけられた。


寒さで俺の頭がおかしくなってしまったみたいだ。

問いかけを無視してその天使の横をすり抜ける。


「ちょちょちょ! なんで無視するの優介君! せっかく雰囲気出して話しかけたのに!」


ハッとした。


どうして俺の名前を知っている。


すぐさま振り返ると、心を読んだかのように天使は答える。


「知ってますよー。天界じゃ有名人ですよ?」


天使は浮いたまま近づいてきて続ける。


「運命率が最も高いことで有名な齊藤優介君!」


…わからない単語だらけだ。


俺が怪訝(けげん)な顔をしていると、


「あー! そんなことより挨拶がまだでしたね!


 初めまして! 私、運命の天使、リリィと申します!

 いきなりで恐縮ですが、優介君にはこの能力を差し上げます!」


 その名も運命の赤い糸! 

あ、運命の赤い糸って知ってますか?」


テンションと勢いに押され、つい答える。

「なんか小指に赤い糸が結ばれていて…運命の人と繋がっているみたいなやつ…?」


「その通りです! なんとこの赤い糸は、運命の人との直線距離がわかる優れものなのです!」


「え?


距離だけ?


あ、あのリリィさん…でしたっけ。距離だけ分かって何になるんですか。」


「ドキドキを感じられます! 顔も名前も分からないけど、何m先には運命の人がいる…! もうそれだけでドキドキしますよね!」


通販番組ばりに推してくる。


「あとさっきから、有名だとか、運命率とかなんなんですか。」


「あーすいません! 運命率というのはですね、将来、運命の人と結ばれる可能性のことを指します!」


なるほど、運命といえど、決まりきっているというわけでもないのか。これは新説だ。


「そして! 優介君はその運命率が99.99%を超えています! 

 これはすごいことですよ!」


…決定的じゃないか。


「ではでは早速見てみましょう!」


「いや大丈夫です。俺、彼女いるし、知らない方が幸せな気がするんで。」


「そんな遠慮せずに! 絶対に損はさせませんよ!


さぁ左手の甲に注目してください!」


天使は強引に俺の左腕を掴み、腕時計を見るときのように左手を胸の前へ持ってくる。


「そして小指を立ててください!」


ピンッと小指を立てさせられる。すると、左手の甲にハートが浮かび上がり、その中にデジタル時計のようなセグメント表示ができる液晶が現れた。


ギュルルルルル…


と音を立てながら数字が高速で表示され続けている。何か演算をしてるのだろうか。

数秒後、液晶にある数字が表示された。


814 km


「ご覧ください! 優介君の一番の運命の人は814km先にいます!」



「…いや遠すぎだろ…遠すぎて実感わかないわ。」


「私調べによりますと、この街からだいたい北海道くらいまでの距離ですね!


 あ…彼女さんて、北海道旅行中だったりします?」


ド平日だぞ、そんなわけないだろと睨む。


「と、とにかく高校へ行きましょう! 遅刻しちゃいますよ?」


天使でも一応空気は読めるみたいだ。


「私高校初めてなので楽しみです〜!」


いや天使(お前)もついてくるのかよ。


思わず吐いたため息は白かった。



不思議で運命的な1週間が始まる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ