恋に溺れた悪役令嬢
恋に溺れた悪役令嬢
私、恋に溺れてしまいましたの。
初めまして、ご機嫌よう。私はアメリア・イヴ・マーティン。公爵令嬢ですわ。私、実は所謂悪役令嬢ですの。
順を追って説明しますと、まず、私は所謂異世界転生というものをしたようなのです。前世で必死に創作活動を続けていた結果、何故か異世界の神さまに気に入られて死後好きな世界に転生する権利を得られたのですわ。そしてこの世界で目が覚めましたの。大好きな乙女ゲームの世界。しかし、私はヒロインではなく悪役令嬢に転生していたのですわ。でも、私幸せですの。だって、ずっと大好きだった攻略対象者の一人、エリオット・イーサン・フィリップス侯爵令息と婚約者になれたんですもの!例え、いつか無慈悲に捨てられるとしても、それでも私幸せですの!
だから、私考えましたの。
ーせめて今は、一途に彼を愛し美しい思い出をたくさん作ろうと!
幸いにして弟がいるので公爵家の跡継ぎは心配いりません。もし私がエリオット様に振られた後修道院に入っても問題ありませんわ。ということで早速、五歳の頃からエリオット様を愛で始めましたわ。病弱なエリオット様は大人しく、お外にもあまり出ません。ですから婚約者のわがままとして毎日一緒にお散歩していただきますの。さらに好き嫌いの激しく栄養の偏った食事をされるエリオット様のために、毎日お料理を作り、手ずから食べさせて差し上げました。そして、お勉強や読書が大好きなエリオット様に付き合って、一緒にお勉強や読書をしました。魔法が大好きなエリオット様が思う存分魔法実験を出来るように、私の屋敷の広大な庭を貸し出したりもしました。これに関しては庭師と両親の説得が大変でしたが。そして子供ならではの距離感の近さで思う存分ベタベタぺろぺろラブラブいちゃいちゃしまくりながら、たくさんの愛情を持ってエリオット様の成長を見守り続けました。挫折?トラウマ?私がしっかりとフラグを折りましたわ!
ー…
エリオット様を愛で始めてから早数年。もう十五歳になってしまいましたわ。学園生活も始まりますし、そろそろ潮時なのかしら…。
「アメリア、何を考えているの?」
「エリオット様!すみません、少し考え事をしておりましたの」
「だめだよ。アメリアは僕の事だけを見て、僕だけのことを考えていればいいんだ」
かっ…かっこいい!さすがエリオット様…!素敵!でも何故かしら?なんだかとてもヤンデレっぽいセリフだったような…?エリオット様は甘々溺愛王子系のはずよね?
「わかりましたわ」
「…よかった。じゃあ早速今日のお散歩に行こうか」
にこり、と微笑むエリオット様。ああ、まるで花が咲くようなその笑顔!愛しておりますわ!
「…ふふ、アメリアは本当に僕の笑顔が好きだね?」
「はい!当然ですわ!その微笑みを独占することが出来るなんて感激ですわ!幸せですわ!」
「ふふ。嬉しいよ、ありがとう。僕もアメリアのような可憐で愛らしい子が婚約者だなんてとても幸せだよ」
ああ、なんて可愛らしい方なのかしら!神々しいくらいだわ!例え振られる運命だとしても、私は最後まで貴方を愛し続けますわ!
…そして学園生活が始まり、物語は幕を開けました。ヒロインさんももちろん入学してきましたわ。ですが彼女の皆様からの評価は愛らしいご令嬢ではなく変わったご令嬢でしたわ。なぜなら、折にふれ攻略対象の皆様に言い寄っているからですの。婚約者がいる方ばかりなのにね。その上多数の殿方に言い寄るなんて、逆ハーレムでも築くつもりだったのかしら。エリオット様に対して一途ならともかく、他の殿方とも関係を持つつもりなら容赦いたしませんわ。ただ、エリオット様は何故か他の攻略対象者の方々と違って、ヒロインさんに見向きもされなかったようですわ。何故かしら?もちろん嬉しいけれど。そしてもちろん、ヒロインさんのその浅ましさはすぐに噂になりましたわ。それどころか、何股もかけていたためエリオット様以外の他の攻略対象者の方々からも蛇蝎の如く嫌われているようですわ。学園にも居辛くなって、困っているそうですの。
エリオット様以外の攻略対象者の方々とその婚約者様方はちょっといざこざはありましたが、最終的に丸く収まってらぶらぶいちゃいちゃのご様子ですわ。
まあ、色々ありますけれど、逆ハーレムなんて最悪なものを築こうとされたヒロインさんはざまぁな結末になりましたし、攻略対象者の方々もその婚約者様方も幸せになれましたしハッピーエンドではないでしょうか?
私?私はヒロインさんが現れようがなんだろうがエリオット様への愛を全面に押し出し捧げ、エリオット様を愛でさせていただきましたのでとても幸せですわ。ええ、とっても。
ただ一人の人を一途に愛する。それも一つの選択肢ですわ。
一途なことはいいことです