巻き込まれた竜騎士!残念リッチと金の猛者(亡者)
私はグレイス・ワールト、竜騎士をやっていた。
そして、私の相棒の竜はギガルスと言う…種族は低位であるが古代竜だ。
祖国、ラムサークル王国でモンスターのスタンピードが発生、偵察の命令を受け相棒と一緒に空を飛んでいた。
(一刻も早く王国に戻り確認しなければ! 沢山の仲間が死んでしまうかもしれん。)
そう思い、祖国の国境付近まで近づいた時、突然とてつもない閃光で周りが見えなくなった。
次の瞬間、水の中…突然の事態にパニックになり、水を大量に飲んで気絶、溺れてしまう。
そして、そこから目が覚めれば周りはリッチの群れ…。
この時、ヤラれたと思った。
(我が祖国の敵、イスラーマラル魔王国の仕業か…こんな罠にはまってしまうとは)
状況は最悪である。
50体ぐらい居るが全て上位モンスター…しかも自分らよりも強い奴しかいない。
パニックと恐怖の中、ヤバい奴らに囲まれて絶望しながらも、相棒を探すと自分の後ろに居た。
が…あまりの恐怖からなのか、ふん尿と涙、鼻水がダダ漏れ、目が死んでいる。
十年以上、戦場なども含め、共に過ごしてきたが、この様な姿を見たのは始めてだ。
その中で、1番とてつもない瘴気を放っているリッチが近づいてきた。
私は死を覚悟した。
奴はこう言った。
「いやー、スマン、スマン、横着してドラ肉を召喚つもりだったんだが、誤ってドラゴンライダーごと召喚してしまったんだわ、巻き込んでごめんね!」
…は?
他のリッチがツッコミを入れた。
「だ・か・ら、無理って言ったでしょうが!彼らを元の場所に戻すさなければならないでしょ!後始末どうするの!俺はやらんよ。」
「冷たい事言うなよ、頼むよ、ねぇ、チョト手伝ってよ…ちょっとだげでいいからさぁ。そちらの方もお願いしますよ〜。」
「フザケンナ!そいつら水湖で溺れているのを救出するのに、ど・ん・だ・け・大変だったか分かっているだろ!テメェ、シバくぞ!」
どうやら、このリッチ軍団は、敵ではないらしい…。
別のリッチが私に声をかけてきた。
「キッチリと、そいつからタップリと賠償金取りなよ、手加減したら駄目だ、また同様なバカをヤラかして迷惑事を起こすから。」
…つまり、今回のトラブルを起こしたリッチは、過去にも何かとトラブルや事故をヤッたようだ。
頭が混乱しているが、これだけは聞かないと行けないと、勇気を出して声を出した。
「ここはどこですか?あなた方の所属部隊はどちらになるのでしょうか?」
賠償金取れよと言ったスケルトンが丁寧に説明してくれた。
「場所は『狂気の森』の中にある『カーレス』という街で、全員単なる住民だが、まぁ…何かと訳ありな奴らが多いかな、ゴブリンやコボルトふくめ、全員ネームドだし」
俺は血の気が引いた…
…ヤバい、これが本当ならば、問題起こせはば、自分の命だけでなく、自分たちが住んでいる領地が滅ぶ可能性がある。
先ほどのトラブルよりも深刻な情報を知ってしまった俺は絶望よりもさらに下がある事を理解してしまった。
「大丈夫だよ、よほどの事がない限り街の者が争い起こす気がないから」
後ろから声が聞こえたので、振り返ると、知り合いの行商人兼薬師の商会長のコボルト「ベオン」が居た。
この惨事、知らぬ土地で、知り合いが居ると居ないでは雲泥の差、地獄に仏である。
「ベオン殿!久しぶりです、しかし、なぜここに?」
「いゃ、だって俺ここの住民だし、俺の本店もここだが…。」
ラムサークル王国には、「ゼクワ商会」があり、中堅の商会である。
その商会の会長が「ベオン」である。
我が国の街に1店舗は支店があり、小さな村にも定期的に行商として回っている。
支店では、他では取り扱わない特殊な商品、竜の部位や特殊で高級な医薬品などを販売
各村には、状況に応じて教育者や生活に必要な教科書などを国の要請で運び、ついでに塩や食料、疫病などの治療薬など販売している。
しかも、免税された上に国の補助金を貰ってである。
当然、補助金どころか免税もされていない商会ギルドから批判が出たが、国王の一喝で沈静化!
「貴様ら、窮地に陥った時、何をしていた?何もしなかった奴がガタガタ騒ぐな!」と国王が怒鳴りつけ、その事が民衆に広まり、不買運動勃発…ギルド系列の店が大量に倒産した。
ちなみに、現在ベオンは公爵よりも発言力があるが…放浪癖がある為、店の幹部にほとんど丸投げ、当の本人はトンズラである。
「大きな問題起きたら、その時は…こちらでどうにかするよ。」とベオンは幹部に語ったが…商会立ち上げるまでの行動が壮絶だった為、失敗して会長が対処=最悪、撲殺刑と思っているらしい。
本人はそのつもりはない様だが…。
おかげで、不正が無く商会は発展…現在に至る。
話は戻り、先ほど賠償金と言っていたスケルトンとベオンが今回の惨事について話し合っていた…「これは商期」と聞こえた様な。
ベオンが語り始めた。
「グレイス君、我々が手続きから賠償金の支払いまでしっかりやりますよ!なぁ〜に、成功報酬で手数料は賠償総額のたったの10%ですよ。手間もほとんどかかりません、どうです?」
さすがベオン会長…瞬時に『トラブル=金儲け』につなげるところが凄い。
賠償金を取れと言っていたスケルトンの名は『サンタナ』とか言っていたが…非常に手際良い。
あの短時間で、すでに書類を完成させ、手続きの説明と金額を提示してきた…仕事速過ぎだろ!お前ら!
サンタナの目に光が灯り語りだす…。
「こんなにも面白く、たっぷりと銭を毟り取れる様な事案、そう簡単にあるものか!逃す方がアホだ!」
…色々とあり過ぎて、なんか頭が痛くなってきたので、相方が気になり居る方向に目を向けると、周りに怯えながらも何とか復活していた。
気を取り直し、ベオンとサンタナに業務中に発生した事故なので賠償金の支払い先は国だと話をした所、「公務中の労災?マジか!面倒くさい上に全然金にならないじゃん!あっ、送迎で金取れるわ」とか叫んでいた。
お前ら、どんだけ金が好きなんだよ…。
まあ、良くも悪くも、金の猛者(亡者)には間違いはない。