召喚士 上位スケルトンを大量に呼ぶ。
「クックックッ…ついに念願の書物が手に入るぞ!」と叫ぶリッチ。
長かった…この地に来てから20年、コツコツと準備をしてきたのだ。
30年前…当時、その書物を手に入れる為に、盗賊、国の軍隊、神や邪神までが動き出しているとは予想もしていなかった。
あの書物が簡単に手に入ると舐めてかかっていた結果、恐怖と絶望を味わい死んでしまった。
しかし、彼は諦められなかった。
〘あの書物をなんとしてでも読みたい!〙
その執念が彼をリッチに変えてしまった。
執念とは凄いものだ…あの屈辱的な敗北から20年のも間、少しづつ力を蓄え、この日の為に100体以上の上位クラスのスケルトンを集めたのだ!今度こそ失敗は許されない!
「さあ行こう!アンデッドの同人誌即売会!」
そう叫ぶと、スケルトン達は歓声を上げ会場に歩き始めた。
1ヶ月前…
リッチは隣にいる男に声をかける。
「流石、噂に名の高いネクロマンサーだ!これだけの上位アンデッドを集めるとは、流石だ。」
「ネクロマンサーでなく、俺、召喚士なんですけど…。」
「今まで1000体以上アンデッドを召喚したのにか?」
「そんなに召喚した覚えは無いですよ、アンデッド専門求人雑誌『ドクロボーン』などに求人の依頼はしましたが…。」
「世の中が変わると召喚方法も変わるとは…。」
「召喚でなく求人です…それに昔流行った強制召喚とも全然違いますので…」
〘流石、神や邪神も認めるネクロマンサーだ、根本的にやり方が違う…。〙
そう思うと今回準備を彼に依頼した事に大変満足していた…依頼を受けてもらうのに3年はかかったが…。
しかし疑問が残る…他でも同じ様にアンデッドを集めていたが、上位アンデッドは集まらず、低位か中位のアンデッドがほとんどだ。
「ネクロマンサーよ、一つ疑問が有る。何故、色々な輩…神や軍隊までもがアンデッドを集めているにも関わらす、何故これだけの上位スケルトンを集める事が出来た?」
今回の依頼条件を伝え、後は丸投げしているが、町の公的予算では、軍隊や神の予算とではまるで違う。
「召喚士です…勝手にアンデッド限定にしないで下さい。今回、彼らが集める事が出来たのは、求人雑誌以外にもクラーゼ王国の職業安定所にも求人出し、条件を依頼された本を1人1冊以上に限定しているからですよ…しかも彼らはこの道のプロです!効率良く自分達の目的を達成出来るから、この低予算で集まっただけで…。」
「簡単に言うと、転売ヤーか? ヤバイだろ…。」
「否定はしません、しかし目的さえ達成出来れば良いのでは? これは1種の戦争ですので、半端な奴を雇っても、帰りに襲撃を受けて強奪されるだけですよ。甘ったれたアンデッドなど要りません、襲ってくる奴など滅ぼせば良いのです、割り切って下さい!」
〘割り切って下さい…なんてあっさり言っているけど、町の予算をを使って図書館の本を購入するのに、転売ヤーを雇うのは問題だろ! 確かにプロだけど…神や国から報復が怖くないの? この人、意外と恐ろしい…平気で殺ろうとするのね。〙
「あんた、報復怖くないのかい?」
「妻から低位の神、2、3人程度なら、私たちが滅ぼすから安心してと言われているので大丈夫です、この前も邪神殺してますし…正直、気にしたら負けです。」
〘そう言えば思い出した! 彼の嫁は世界最凶の嫁軍団だったと聞いた事がある。 火薬庫の嫁軍団と呼ばれていた様な気がするが…ある意味、最凶のアフターサービスか?〙
「あんた、今回の仕事で嫁に脅されていないか?」
「…何の事でしょうか?」
「…」
「…」
リッチでありながら、大した不満も無く、この町の司書をやっている。
その第二の人生が、聞く事により終わる様な気がして、それ以上聞けなかった…。
〘深く考えるのを止めよう…なるようにしかならない〙
その後、順調な流れでリッチの依頼は無事達成されるが、その間、即売会の開催を妨害したきた国や邪神などを、召喚士の嫁軍団が全て滅ぼしたと言う話を1ヶ月後に聞く事になる。
そんな恐ろしい嫁が居て、あの召喚士は幸せなのだろうか?
そんな事を思ったが、知らぬが仏と思い、リッチは司書の仕事を再開した。