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キミに降る雪

作者: うさ かいり

シナリオ形式になっています。

登場する学校名はすべて架空のものです。

現実とまったく関係ありませんのでご了承ください。

括弧の中の数字は登場人物の年齢です。


〇能代市立能代北山小学校・前

   校門に『能代市立北山小学校』のプレートと子供たちの歓声。


〇同・校庭・中

   北城勇矢(10)と広井雪乃(10)が2チームに分かれて雪合戦をしている。

   勇矢、雪乃を避けるように雪玉を投げ、次々と命中させ得意顔。

   勇矢の隣の田中(10)、雪玉を丸めながら。

田中「さっすが!」

   雪乃の隣の春子(10)、顔にかかった雪をはらって。

春子「北城、ずるーい!」

勇矢「なにがだよー!」

春子「雪乃だけ狙ってないしー!」

雪乃「え!?」

勇矢「!……あたんねーだけだし!」

   勇矢が怯んだ隙を狙って春子達チーム、勇矢に向かって一斉に雪玉を投げつける。

勇矢「(体に次々と雪玉を受けて)わ!」

春子「雪乃も!」

雪乃「あ……うん」

   雪乃、勇矢に向かって雪玉を投げる。

   雪乃の雪玉、勇矢の顔面に見事に命中。

雪乃「!」

   子供達「やった!」「北城討伐!」などと言いながら一斉に笑う。

春子「かっこわりー」

   春子、雪で真っ白になった勇矢の顔を見てあははと笑う。

勇矢「(顔にかかった雪をはらいながら、)……」

雪乃の声「北城は、かっこ悪い時はいつも無言で」

   頬を染めて勇矢を見つめる雪乃の顔に、雪が舞い落ちる。

雪乃声「でも、北城の周りに降る雪はいつも優しくて――――――」

   顔を赤くして、雪をはらう勇也と目が合って。

雪乃の声「――――――暖かかった」

   空から舞い落ちる雪。


〇県立能代北高等学校・校門・前(夕)

   校門に『秋田県立能代北高等学校』のプレート。


〇同・廊下(夕)

   勇矢(17)の背中に雪乃(17)の声がかかる。

雪乃「待ってよ、北城」

   勇矢、無視して歩いて行く。

   雪乃、勇矢の背中を追いかけて。

雪乃「部活辞めたって本当なの?」

勇矢「……」

雪乃「なんで?ねぇ、なんで辞めちゃったのよ!?次の大会で全国制覇だってがんばってたのにさ」

勇矢「……」

雪乃「もうやんないの?バスケもうやんないの?」

   勇矢、足を止め、背を向けたまま。

勇矢「おまえにはカンケーねー」

雪乃「!」

   勇矢、再び歩き出す。

雪乃「ちょっと……」

勇矢「おまえバスケ部じゃねーべ」

雪乃「北城!」

勇矢「(足を止めて)まだなんかあんのかよ」

雪乃「北城の……ばーかーっ」

   廊下を歩いていた数人の生徒が二人を見る。

勇矢「……そ」

   雪乃、歩き出す勇矢の背中を見つめて。

雪乃「(つぶやくような小さな声で)……ばか……」

   雪乃、涙が滲む。


〇同・自転車置き場(夕)

   とぼとぼと歩いてい来る雪乃。

   鞄から自転車の鍵を取り出す。

   兎のマスコットが付いたキーホルダーが揺れる。

   雪乃、キーホルダーを見つめる。

勇矢の声「おまえにはかんけーねー」

   雪乃、キーホルダーを外すと、投げ捨てる。

   雪乃、自転車にまたがると勢いよく走りだす。

   雪が降って来る。

   捨てられたキーホルダーの兎の顔に雪がはらりと落ちて溶ける。

   それが兎が流した涙にも見えて。


〇広井家・全景(夕)


〇同・車庫・中(夕)

   雪乃、自転車に鍵をかけて鍵を抜き取る。

   雪乃、キーホルダーが外された鍵を見つめる。


〇北山小学校・自転車置き場(回想)

   揺れるキーホルダーの兎。

   雪乃、手に持ったキーホルダーの兎を見て。

雪乃「かわいい」

勇矢「やる。おまえ、このまえ、自転車の鍵なくしたって……それ、つけとけば」

雪乃「……ありがとう」

   嬉しそうに笑う雪乃を見て、思わず顔を背けて照れた顔の勇矢。


〇元の車庫・中(夕)

   鍵を見つめる雪乃、鍵をぎゅぅっと握る。

   雪乃、思い立ったように自転車の鍵のロックを外すと自転車にまたがる。

   

〇道(夕)

   雪が降る中、自転車を走らせる雪乃。


〇能代北高等学校・校門(夕)

   校門に薄っすらと雪が積もり始めている。

   雪乃、自転車で走り抜ける。


〇同・自転車置き場(夕)

   薄暗い、ガランとした駐輪スペース。

   雪乃、スマホの灯りでキーホルダーを投げ捨てた辺りを探すが、舞い落ちる雪と積もり始めた雪しか   見えない。

   雪乃、両手を雪の中に突っ込む。

雪乃「冷たっ」

   雪乃、雪乃中に突っ込んだ手を動かして雪の中を探る。

   必死で探す雪乃。

   その体に舞い落ちる雪。


〇雪乃の部屋・中(朝)

   雪乃、額に冷却シートを貼って寝ている。

   息苦しそうに呼吸しながら天井を見つめ。

雪乃「ばかみたいだ」


〇能代北高等学校・教室・中(朝)

   雪乃、教室に入って来る。

   友達と話していた春子(17)、雪乃を見て。

春子「雪乃ーもうだいじょうぶなの?」

雪乃「うん。三日寝たらなんとか」

春子「……来ても今日は遅刻かと思ってたけど」

雪乃「なんで?」

春子「聞いてないか……」

雪乃「なに?」

春子「北城、引っ越すんだって。今日、9時の電車だって。田中が言ってた」

雪乃「え!?」


〇同・教室・外(朝)

   教室を飛び出す雪乃、担任教師とぶつかりそうになる。

担任「あぶないな、広井!って……おい、授業だぞー」

   雪乃、背中で呼び止める担任を無視して走る。


〇同・校門(朝)

   雪乃、自転車で飛び出して行く。

春子の声「お父さんの働いていた工場閉鎖になって、秋田の実家に戻るんだって」


〇道(朝)

   雪乃、自転車を走らせる。

春子の声「学校辞めたのは、住み込みで働くかららしい」

   雪が降って来る。

   雪の中を必死で自転車をこぐ雪乃。

春子の声「もうかなり前から決まってたらしいけど、あいつあんまり自分のこと話さないから」

雪乃「かっこつけんな!」

   突然、自転車がスリップして転倒する。

   雪乃、体を起こす。

雪乃「なんで……言ってくれないんだよ……」

   雪乃、滲んで来る涙を片手で拭い立ち上がる。


〇五能線能代駅・全景(朝)


〇同・ホーム(朝)

   ホームにあるバスケットゴールにシュートを決める勇矢。

アナウンス「間もなく、列車が入ります。危ないですから白線の内側までお下がりください」

勇矢「……」


〇同・改札口・前(朝)

   雪乃、息を切らせて来る。

   ホームから発車のベルが聞こえる。


〇同・ホーム(朝)

   雪乃、ホームへ飛び出して来る。

   走り出す電車。

   雪乃、電車を追いかけ転倒する。

   走り去る電車。

雪乃「待って……!待ってよ……」

   雪の中に倒れたまま泣き出す雪乃。

   雪乃の周りに雪玉が投げつけられる。

雪乃「!」

   雪乃、振り返ると勇矢が立っている。

勇矢「やっぱあたんねー」

雪乃「(泣き笑いで)……かっこわる」

勇矢「うるせー……」

   雪乃、涙を拭うと勇矢の手が伸びる。

   その手を雪乃の手がしっかりと握って。

雪乃の声「こんな雪の中でも、北城の手は暖かくて、周りの雪はやっぱり暖かかった」

   向かい合う二人の姿に、優しく舞い降りる雪。

   (終わり) 


   





   



   

   



ニュースで雪が降っている地方の様子を見ていたら、以前シナリオを勉強していた頃、雪の課題で書いた話を思い出し、ひっぱりだしてみました。

一部書き直しました。

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