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第6話 地獄

 光が収束するように、意識が生まれた。

 なんだか悪夢を見ていたような気がする。

 見知らぬ大自然の中、美少女に腹パンされて意識を失うなんて。


 頭が鮮明になってくる。

 俺は今、胡座をかいている、のだろうか。

 背中に硬い、木、か?にもたれている。

 しかし状況が把握できない。

 そこまで考えて。

 思考に没する前に意識を割かれる。


 言いようの無い、悪臭。

 思わず酷く咳混み、悪態を吐く。

 目が覚めた最初の出来事としては、最悪である。

 まったく目覚めが悪い。


 生ゴミよりも生々しく、纏わり付く激臭。

 数分嗅げば、鼻が麻痺することだろう。


 自分の置かれた場の辺りを見回そうとすると、視界は何かに塞がれ、自然光すらない。

 目は開いているが情報が何一つ入って来ない。

 昼夜がわからないというのは存外、恐ろしい。

 取り敢えず夜としておこう。


 それ以前に長時間同じ体勢だったのだろう、マヒしているようで全体的に感覚がない。

 両腕は頭上で拘束されているのか、ビクともしない。

 時折、腕を伝って降りてくる、嫌悪感のある液体が肩を濡らす。

 臭いの正体はコイツだろうが、一体どうすればこの吐き気を催す香りを生み出せるのか。

 拘束はまだ我慢できるが、臭いのはダメだ。

 粘ついた粘液が体中に這う感覚、風呂に入り落としたい。本気で。

 気持ちの悪さから、腹の底より吐き気を催す。

 吐いたらある程度、マシにはなれそう。


「「「」」」」


 ダムの放水に負けない勢いであったとも。

 何がは言わぬよ。


 身体と気持ちが環境に順応して、余裕が出た頃。

 周りの声が徐々に耳に入る。

 滴る水の音。

 柔らかいモノがぶつかる音。

 それと声、か。

 男の呻き声と女の。


 イメージが浮かぶ。


 全力疾走後の。

 分かるだろうか。

 それは自己満足マラソン大会で見聞きが可能。

 はっきり言えばまぐわう際に聞ける。


 甘くて荒い吐息、声からして若い娘だな。

 通学途中で最寄の中学校から耳にする。


 単体ではなく、四方から届く。

 複数体いるのだろう。

 現状六つだろうか。

 というのも男女で一つの意味だが。

 それらがひっきりなしに垂れ流され続けている。

 リズミカルな水音に加え、苦悶と楽しげな声音。


 突然ではあるが、諸君に問う。

 行為を聞き、自身もしたいと、思うか。

 どう思おうが勝手だから正解はない。

 しかし、敢えて意見を述べるなら、私はNoだ。

 前提として、EDでも無いし至ってノーマル。

 可愛い異性を見れば萌えるし燃える。

 ならば行為も同様では?


 否、それは違う。

 それは何故か?至極簡単な理由である。

 目は見えないが、聞こえてくる声。

 甘美な奉仕を受けている彼等は、皆声にならぬ声で震えているからだ。

 そういったプレイ、とは言えぬだろう。

 助けを求め、謝罪を続け、言葉を無くす。

 楽園とは正反対の、地獄の不協和音である。

 あまりにも趣味が悪い、文字通り反吐が出る。

 響く声も気付けば聞こえなくなり、打ち付ける音。

 若い雌の声だけだ。

 死んだな。


 定まらないリズム、だけれど一定の調和を保ちつつ。

 搾取の為だけの行為。

 恐らく俺の世界ではご褒美であり、尚且つ望まれているモノ。

 男性であれば悦び、富をもって引き換えと勇むだろうが。


 目のあたりにしたもの、それが現実。

 まあ目は見えないので耳と言い直すべきか。

 兎にも角にも、地獄から逃げ出さねばならない。

 さもなくば、訪れるは苦悶後の死。

 同じ道など辿りたくない。

 女は好きだが、このシチュエーションだけは勃たない。


 さて。

 現状マヒしている、両肩から腕、両太ももから足のつまさき。

 見えない視界にぬるぬるとした液体にまみれた床。

 どう駆動させ、この困難に立ち向かおうか。


 脱出できなければ、もれなく喰われるだろう。

 性的に、な。


 見知らぬ土地にハンデしかない上、Lv1。

 はっきり言って、無理難題。

 動けないのだからどうしようもない。

 

 声量が減るたびに、鳥肌が酷くなる。

 胃が痛み、穴が開きそうだ。

 狙われている。

 直感がそうつけているが打開策は無い。

 いっそここで意識を失った方が楽ではあるだろうな。


 情けない願い事だが、


 誰か。

 俺を救ってくれないか。

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