第3話 愉快な姉妹
「ニンゲン?」
「知らないわ。貴方嘘をついてるんじゃないの?」
姉妹と告げられた後、俺の種族は何かと聞かれた。
種族と問われて、意味不明ではあったが取り合えず話を進めた。
答えればこの有様だった。
なんなのだ。
「人間だ。人とも言う。」
「ふうん、それで本当は?」
「いやだから」
全く信じられていない。
高度な文明を築き、地上のほとんどが人であった。
人間程有名な種族はいないだろう。
それにこの姉妹も、人型であるじゃないか。
それを聞いたことが無い?
「まあいいわ。ほらケミ、こいつの腕縛って」
「はぁーい。」
さっきから黙って話を聞いてたケミ(というらしい)は自身豊満な肢体に巻きつけていた縄の様な物を器用に解いていく。
大木を軽く1周は出来るであろう長さ。
本来の用途は知らないが、これは不味い。
これで身体を縛られる未来は想像に容易い。
しかし何も罪を犯していないのに捕縛とは。
いや縄張りに侵入したのは悪い事、か?
「待ってくれ」
「待たないわ」
「そこをなんとか、頼む」
「お姉ちゃん?」
雰囲気がヤバい、俺は完全に犯罪者側だ。必死に頼み込む。
どうするの~?とウキウキな妹。
彼女は別にどちらでも良いらしい。
むちゃくちゃな姉と比べると幾分かマシだな。
非常に面倒だ。
が、姉を説得する他に救いの道は無い。
「ここはどこなんだ?」
そう、まずは場所だ。
場所さえ分かれば。
「仕方ないわね。」
「ノアノだよ!」
「先に言わない!」
「お姉ちゃん前置き長すぎだもん。」
「必要な間だったのよ!」
姉妹できゃっきゃ、ウフフしてる光景は絶景そのもの。
元気な色々がたわわんと。
本当、元気だな。
それにしても。
ノアノ。
知らないぞ。
どこだそれ。
「さて。もういいでしょ?」
「もう1つ。」
「何よ。」
俺は遮る様に問う。
姉妹が素っ気無いのはまだ疑っているからか。
なんでもいいが。
「君ら、姉妹はどういった種族なんだ?」
そうこの姉妹だ。
薄々気付いてはいたが、ここは異世界。
聞いたこと無い場所に、目の前の娘たち。
紛れも無い、ファンタジーゲーム等にある場所だろう。
ピンと立てた耳、くねくねと動く尻尾。
わいせつ罪に一歩手前の容姿、格好。
いや、きっと触れている。間違いない。
「猫種族だけど貴方、それも知らないの?」
馬鹿にされた。
「初めて聞いたんだが。」
「相当頭が弱いようね?」
「そうだねお姉ちゃん。」
悔しいが立場が立場なので何も出来ない。
日本であれば逆であるはずなのに。
いや変わらない。
男の地位は落ちたものだな。
「ケミ、縛っちゃって。後、一発いれていいよ」
「了解だよ、お姉ちゃん。」
悲しい現実を突き付けられ、さらには物騒な一言。
ここの一発というのは、物理的なあれだ。
「痛いのは勘弁してくれないか?」
「無理ね。貴方の雰囲気、おかしいもの」
「おかしい?」
「そう。おかしい」
何がおかしいのか?
格好だろうか。
奇怪なのは君たちではないか。
「アンタね」
「おねーちゃん!」
「ああ、はいはい。いいよ」
「やった」
鈍い音と衝撃に、傾く視界と急速に失う色を見ながら再び。
女の子に気絶させられる展開なんて、誰が望んだんだ。