第6話 衝撃
「こんのっ!駄脂肪がっ!!」
そう言って魔法が放たれ、ハイリ姉さんに向かって白い炎が飛んでいく。
「甘い。」
それをハイリ姉さんが手に聖気を纏わせてから、白い炎を横から殴り、白い炎を霧散させた。
だが、白い炎は次に放たれる魔法を隠す為の偽装、本命は黒く禍々しい炎のようだ。
未来視で、黒い炎をハイリ姉さんがさっきと同じように霧散させようとして失敗して燃えるのがのが見えた。
避けるように叫ぶ。
咄嗟のことだったが、かすることも無く、ハイリ姉さんは無事だ。
「邪魔しないで欲しいのです!ウィーはこの駄脂肪を撃滅すると決めたのです!」
さっきまでの魔王の雰囲気はどこかにいき、そこには年相応の話し方をする少女がいた。
「流石にハイリ姉さんを殺すような攻撃は放っておけないよ。」
「フューくんは私の味方。まな板は私達を放って置くべき。」
「フュー兄は渡さないのです!」
その言葉を聞いた僕達は固まった。
「………ん?兄?どういうこと?」
「?あれ、言って無かったですか?
フュー兄は私と腹違いの兄妹なのですよ?
父はアスクトとベフティルを自由に移動できる体質なのです。
聞いて無かったです?」
そんな………、僕が魔王の兄妹?
「ちょっと待ってよ、それならなんで僕の髪の毛は今黒いの?」
「それは、わからないのです。
ただ、この世界では黒い髪は救世主の資格を持つもの、そう言われているのです。」
救…世主。
確かに《未来識》を使えば、救世主になれるかもしれない。
だけど、ハイリ姉さんに聞いた話だと、僕の髪の毛は、僕の今の記憶の最後の辺りで黒に染まったらしい。
「僕は救世主じゃないよ。
だって、自分の記憶すらろくに思い出せない。
それに、みんなみたいに戦う力があるわけでもない。
未来が見えることは確かに有利に立ち回れるけど、見えた未来通りになるのは自分がその通りに進んだ時だけだよ。」
逆に少しでも違うことをすれば、未来は簡単に変わる。
未来は常に揺れ動いている。
いや、分岐し続けていると言ってもいい。
分岐する未来を完全に把握しきるのは困難を極める。
なら、何故予知夢を見ることが出来るのかというと、恐らく未来はどこかのタイミングで一回収束される。
その収束した地点の未来を予知夢という形で見ているのだろう。
もし、収束地点の予知を変えたいなら、その未来とはかけ離れたことをしなければならない。
だが、近い未来ならすぐに変えられる。
だが、未来を変えると周りの人間の動きが変わってしまう。
例えば、剣での切り合いをしていたとき、未来予知では、右側に相手の剣が振り下ろされるのが見えて左側に避けると、振り下ろして終わっていた攻撃に切り上げが追加されることがある。
一応未来予知ならば、その変えた後の情報がわかるので、対応することは可能だけどね。
とりあえず、僕には救世主になるだけの能力は無い。
しばらくすると、戦い疲れたのか、2人が戻ってきた。
今回の戦いは、持ち越して行うそうだ。
「フューくん。」
「フュー兄。」
僕は2人に手を引かれて、魔王城にもどった。