2さじめ
「ニンゲン卒業」
確かにぼくは昨日、星空に向かってこう言った。
「ニンゲン辞めたいなあ」
それをウッカリ耳にして、お節介を焼いた星の神様がいたらしい。
目が覚めたらぼくはカエルになっていた。
ニンゲン用の広大なベッドで、ぼくは呆然とした。
星の神様にクーリングオフを願いたいが、正直、夜空には星が出過ぎていて誰が張本人かサッパリわからない。
諦めて部屋から出ようにも、ドアはとてつもなく遠いし、窓はとてつもなく高い。例えたどり着いたとしても、到底開けられまい。
ああ~。参った。ニンゲンに戻るか、せめてカエルとしてやっていける環境に飛ばしてくれないかなあ……。
その時、部屋の中に閃光がビカリと入った。ぼくは少しばかり嫌な予感がした。
くらんだ目を開けるとそこは森だった。ああ……やっぱり。ぼくはこれからカエルとして生きていくらしい。
仕方ないと思ったぼくは、森の中を歩き、綺麗な池を見つけた。
よし。ここを家にしよう。毎日好きなように生きて良いんだ。
ぼくは揺れる水面に目をやると、星の神様がせっかちだってことを思い出した。
「ニンゲンに戻ってる……」
ぼくはまたも途方にくれたが、その後目の前がビカリと光ることは一度もなかった。