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「オイラは、今回はやめておくよ。オイラの能力は葵の中にいなきゃ意味無いし、何かあった時にオイラの力が必要になるかもしれないだろ?」

 誰の魂魄から始めるか、という話になると、穂跳彦が表に出てきてあっさりと言った。たしかに一理あるのだが、何となく面倒臭いだけのようにも思える声音だ。

「まぁ、良いだろ。荒刀海彦は出るな? 末広比売と勢輔はどうすんだ?」

 隆善に問われて、穂跳彦は葵の顔で「うーん……」と探るように唸った。

「すえは出てみたいってさ。勢輔は……何て言うの? 葵にしがみ付いて離れない、みたいな?」

 葵の内に宿る魂魄達のうち、勢輔は一番日が浅い。そもそも、葵に宿った原因は、一人でいるのが寂しかったからだ。離れ離れになるのが怖いのだろう。

「では、今回は父上様と末広比売の二人だけなのでございますね? それで……どのようにして葵様の体から出るのでございますか?」

 その言葉に、葵と紫苑は「あ」と呟いた。たしかに、出し方がわからない。迎え入れる時は簡単だったのだが、出すとなると……。

『正直に言うと、私もわからん。簡単に出入りができるようなら、葵の調子が悪い時には外に出ているぐらいの分別は持ち合わせているつもりだ』

 穂跳彦も葵の顔で首を傾げ、末広比売や勢輔が知っているわけもなく。自然、全員の視線が隆善に集まった。

「あ? どうやったら荒刀海彦達が自発的に出れるかなんざ、俺も知らねぇよ。今後の課題として、自分達で考えとけ」

 無責任極まりない。「じゃあどうするんだ」という視線にさらされ、それでも動じる事無く隆善はじゃらりと数珠を取り出した。

「自発的な出方は知らねぇが、追い出し方は知っているんでな」

「……隆善師匠……それって、もしかしなくても……」

 元に戻った葵が、少しだけ嫌そうな顔をした。それに対して、隆善はにやりと笑う。

「そうだ。悪霊祓いをする。葵、お前は悪霊に憑りつかれた憑代。でもって、荒刀海彦達は祓い落とすべき悪霊。そういう役割だと思えば、いつも通りだろうが」

「貴様、我らを悪霊呼ばわりするか!」

 葵の目が瞬時に金色に変わり、ぎょろりと隆善を睨む。荒刀海彦が表に出たのだ。その様子に、隆善は増々意地悪気な笑みを浮かべた。

「よーしよしよし、その調子だ。どう見ても凶悪な悪霊に憑りつかれた、哀れな少年その一だぞ、葵に荒刀海彦。落とし甲斐があるってもんだ」

「まだ言うか!」

 荒刀海彦は更に怒り、葵の額に青筋が浮いている。これはこれで、稀有な様子だ。

「……あのさぁ……始めるなら早く始めてくれる? 眠いんだけど……」

 ぼそりと、惟幸が呟いた。またも声が低くなっている。眠さのせいで、相当に機嫌が悪い。

 全員の表情が凍り付き、急にきびきびと動き始めた。

「えっと、隆善師匠。俺、まずどうすれば良いですか?」

「禊しようと思うと時がかかり過ぎるからな。お手軽に水被ってこい。やらねぇよりマシだ」

「わかりました!」

 頷き、葵は慌てて井戸のある方へと走っていく。その後ろ姿を見送りながら、虎目が深い溜め息を吐いた。

「まさか、惟幸がこんにゃ時限爆弾と化すとは思わにゃかったにゃー……。最初からこんにゃペースで、どうにゃる事やら……」

 そして、もう一度深い溜め息を吐く。その様子を知ってか知らずか、惟幸は大きな欠伸を一つした。

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