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召喚獣? いえっ召喚人です!  作者: 音野 一角
第一章 来界編
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1-7 召喚人VII 〜最初の一歩〜

 評価にブークマーク登録本当にありがとうございます。

 土日は更新出来ず、誠に申し訳ございませんでした。

「アイちゃんのおかげでいろいろとわかったよ。ありがとう」

「どういたしましてなのです?」


 アイちゃんの話から俺の立てた仮説は七、八割、いや九割以上の確率で正解だと思うけど、念には念をって奴だ。


 アイちゃんの安全を考えれば仮説をできるだけ証明しないとダメだな。


「アイちゃんはここでどれくらい生活してたんだい?」

「えーと、三週間ぐらいになるのです」

「食料の備蓄はまだあるの?」

「はいなのです。えーと、二人分でも一ヶ月以上はあると思うのです」


 二人で一ヶ月なら一人で二ヶ月か。


 万が一俺の仮説が不成立だった場合、それだけあれば誰かが、そう母親たる仁美が見つけてくれるだろ。


「悪いけど倉庫まで案内してくれる?」

「はいなのですっ」


 ここで生活するだけなら食料だけで問題ないけど、何か使えるものがあるかもしれないからな。

 確認確認っと。


「ここなのですっ」

「ありがとな」


 アイちゃんの頭を一撫でした後、俺はあるものの確認を開始した。


 食料は……確かにこの量があれば二人でも一ヶ月は軽くあるな。

 てか、多少節約するだけでも半年くらいならどうにかなる勢いだぞ、これ。


「ねえアイちゃん。ここって召喚士の聖地みたいな場所の一つなんだよね?」

「そうですよ?」

「それならなんでこんなに食料が保管されてるの?」


 積み重なった箱の一つを手に取り中を確認してみると、明らかに長期保存が前提の食料ばかりだ。


「えーとですね、ドームはどれも町から少し離れた場所に建ってるのです。町を覆ってる防壁から出るとそこには魔物がいっぱいいる危険地帯なのです」

「つまりドームは緊急時の避難場所としても活用されているって事?」

「はいなのですっ」


 道理で保存食が多いわけだ。

 緊急避難場所として使われてるならそこに食料を置いておくのは大切な事だ。


 だけど、召喚士にとって聖地であるドームをそういう風に使われてアイちゃんはどう思ってるんだろうな。


 まあ、そのあかげで助かってるわけなんだけど……ちなみに、やぶ蛇怖いから聞いたりするつもりはない。


「ん、これは」


 倉庫スペースの中を確認しながら歩いていると、ふと目的の物を見つける事に成功した。


「良かった。やっぱりあった」


 俺が小さくつぶやきながら手に取ったのは、鋼色にきらめく一本の刀剣だ。


「あの、健太さん? もしかして……」

「そっ。俺が探してたのはこいつだ」


 刀剣ってのは消耗品だからな。

 このドームが避難場所だとしても、魔物なんて危ない奴らがたくさんいるこの世界なら、備蓄の中に予備の武器があるだろうなって思っていたんだ。


 前回に狼と戦った時に使ってたのはただの棒だったからな。


 もしもあの時に使ってたのが刃のある刀剣なら首を切り落としていたはずだ。

 それならガブられる事もなかったはずなんだ。


「それじゃあアイちゃんはここで待っててくれるか?」

「えっ、ど、どうしてなのですか?」

「さっきも言ったろ? 俺は弱い。正直言ってアイちゃんを守りながら森を抜けられる気がしないんだ。だからまずは俺一人で町に向かってみるよ」

「き、危険なのです!」

「まあまあ。町につけたらすぐに助けを呼んでくっから。そんな心配しなくていいよ」

「ち、違うのです! 健太さんの身が危ないのです!」


 うっすらと目元を濡らしながら言うアイちゃん。いやほんと、優しい子だね。この子は。


「大丈夫大丈夫。俺はアイちゃんの召喚獣、いや、召喚人なんだろ?」

「な、何を言ってるのですか?」

「とりあえず、俺は大丈夫だよ」


 もしも俺の仮説が不成立ならば大丈夫じゃないけど、大丈夫。問題ないはずだ。


「必ず生きて戻って来るから。だから、召喚士様はここで俺の無事を祈ってて」

「健太さん……」


 心配そうな目で俺を見つめるアイちゃんの頭を撫で回した後、俺は剣を腰に差してドームを出た。


「……さて」


 俺はゆっくりと歩きながら手を胸に当てて深呼吸を繰り返した。


 さっきからうるさい心臓の鼓動を少しでも抑えるために。


「大丈夫、大丈夫だ。落ち着け」


 アイちゃんの手前、余裕があるように見せていたけど、はは、やばいなやっぱり手が震えてる。


 仮説に自信はある。あるけど、だからと言って不安がないわけじゃ、恐怖が消えているわけじゃない。


 これから対峙しようとしているのは、俺を二度殺した奴なんだから。


 俺の身に起きている不可解な現象。

 多分誰だって想像できているだろうけど、それは死ぬとドームで生き返るって事だ。


 理由は俺が召喚人だからだ。


 アイちゃん曰く、召喚獣は死んでも召喚士が祈る事によってドームで生き返る。


 だけど俺の場合は普通の召喚獣ではなく、人間、いや、もはや元人間と呼ぶべき存在だ。


 人でありながら召喚獣。そう普通ならありえない存在なんだ。

 だから召喚士の祈りという過程を無しで自動で蘇るって可能性は十分にある。


 俺の現状をわかりやすく例えるなら、ドームはセーブポイントって事だ。


 死ぬ事で人生という物語に終わりを迎えるとセーブポイントで蘇る。


 ただ、これはゲームの世界じゃなくて現実だ。時間を超える事は出来ない。


 だから過去に戻ってやり直すではなく、時間は経過したまま、セーブポイントで復活って判定になっているんだろう。


 俺は死ねばドームで蘇る事が出来る。

 アイちゃんの話からして復活までのインターバルは無いに等しいだろう。


 まあ、死ぬ程の痛みってのはあるんだけどな。命が消えていく感覚ってのがさ。


 復活すれば痛みはないけど、死の恐怖って奴はそう簡単には消えてくれないみたいだ。


 死のトラウマね。いやはや、滅多に出来ない経験だな。まったく。


 一回目の復活の時、アイちゃんはドームにいなかった。

 だから俺の復活はアクティブスキルじゃなくてパッシブスキルなんだと思う。


 ……ま、念のためにアイちゃんには祈りにをお願いしといたけどね。


「確かここら辺だったよな」


 俺が狼と戦った場所。俺が奴に殺された二度目の場所までやってきた。


 その証拠に狼の首に叩きつけた木の棒が転がっていた。


「さて、ここからは警戒を強めた方が良いよな」


 抜刀術なんてやった事ないからな。先に抜いていた方が初速は早くなる。


 という事でここから抜き身を握った状態でゆっくりと、周囲の警戒はマックスで進んでいくとしよう。


 俺が最初に襲われたのはもっと奥だったはずだ。


 二度目の場所はアイちゃんを追い掛けていたからあんな手前だったって感じだと思うし、本来の縄張りみたいなのはもっと奥なんだろうな。

 それでも警戒をしないに越したことはない。


 え? どうせリトライ出来るのならそんなに警戒しなくていいだろって?


 確かにって言いたいところだが、残念な事にリトライの件についてはまだ仮説の段階なんだ。


 大丈夫だとは思うけど、一○○パーセントじゃない。確率的には九五パーセントくらいだ。


 復活失敗の可能性がたったの五パーセントなら気にしなくて平気だろって? はは、馬鹿を言っちゃいけないね。


 五パーセントという事は、単純計算で二十回に一度は失敗するってレベルだぞ?


 それに某化け物狩りゲームだと五パーセントって結構高く感じるんだよな。


 それにだ。二度目復活したからと言って、三度目もあるとは限らない。


 まだまだ検証が不足しているんだ。復活の件について不確定要素があまりにも多過ぎる。


 だから復活についてはそうなったら良いなくらいの気持ちでいるべきなんだ。


 それに何よりな。


 痛いのが嫌だ。


 みんな想像して欲しい。今まで君が経験した痛みの中で一番激しい奴をだ。


 その十倍は痛かったぞ?


 そりゃそうだ。普通なら一度しか経験しないであろう、死の痛みだからな。


 もうあんな痛みを、身体から命が抜けていくような感覚を味わいたくないんだ。


 だから、


「今度こそは負けねえぞ。狼野郎」

「ガルルルルッ」


 俺は目の前で瞳を輝かせる狼に宣戦布告をした。

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