1-4 召喚人IV 〜責任取ります!〜
文字数が安定しなくてすみません。今回短いです。
これは一体どういう事だ?
「健太さん!」
「うおっ」
目を真っ赤にしたアイちゃんにいきなり抱きつかれた。
ななな、これまたどういう状況!?
「生きててよかったのですーっ!」
ああ、そうか。俺の事を心配してくれてたのか。
グリグリと小さい頭を擦り付けてくるアイちゃんを見ていたら、動揺していた心も静まってきたな。
「アイちゃんは大丈夫?」
頭をぐりぐりと押し付けられてるし、すぐには離れてくれそうにないため、俺はアイちゃんの頭をゆっくりと優しく撫でながら聞いた。
「はいなのです! 健太さんのおかげで助かったのです!」
「そっか。良かった」
アイちゃんの気が済むまでこのまま泣かせあげるとするか。
大丈夫、俺は中学生に抱き着かれて興奮するようなロリコンじゃない。
イエスロリータノータッチ……だっけ?
あれ、これってその考えだとアウトじゃね?
☆ ★ ☆ ★
「と、取り乱してごめんなさいなのです」
数分後、やっと落ち着いてくれたアイちゃんが赤い顔をしてぺこりと頭を下げた。
ぐふふ、初心じゃのぉー。
「まあまあ、俺の事心配してくれたんだよね? ありがと」
最後に頭を一撫でしてあげると、アイちゃんは気持ちよさそうに目を細めていた。
「えへへぇー」
それにしても、一体どういう事だ?
アイちゃんを助けられたなら、あのまま死んでも良いって本気で思ってたんだけどな。この感じだとアイちゃんに助けられたって事か?
て事は狼の初回ガブガブフィーバー時も、助けてくれたのはアイちゃんなのか?
いや、それだとしっくりこない。
ここで通算三度目になる目覚めた。
あの時のアイちゃんの反応は、アイちゃんが俺に何かをして、その結果回復してくれてよかったって感じじゃなかった。
「あ、あの健太さんにお話があるんですけどいいですか?」
「ん? ……何かな?」
息を整えた後、突然真剣な顔で切り出してきたアイちゃんに、俺は驚きながらも、聞く姿勢を整えた。
「えっとですね。単刀直入に言うのです。健太さんは私の召喚獣。いえ、召喚人なのです?」
首をこくりと傾げながら言うアイちゃん。
いやいや、君が疑問調になったらダメだろ。
いや、それよりも気にするべきワードがあったな。…………ふむ、召喚獣……ね。
「詳しく教えて貰えるかな?」
「は、はいなのです。最初にも言いましたけど、私は召喚士見習いなのです」
そういえばそんな事を言っていた気がする。
俺はアイコンタクトで続けるように伝えた。
「知ってるかもしれませんが、ここを含めて世界中の各地にあるドーム状の建物はその昔、偉大な大召喚士様が建てたと言わているのです」
ほう。初耳だな。まあ当然か。俺は本来この世界の人間じゃないからな。
うむ、続けろ。
「ドームには大召喚士様の加護があるとされていて、召喚士見習いは皆ドームで祈りを捧げ、己の召喚獣を得るのです」
「……て事はまさか、アイちゃんの祈りによって召喚されたのが……」
驚愕の表情を浮かべた俺に向かってアイちゃんは視線チラチラと外しながら、遠慮がちに言った。
「はいなのです。健太さんなのです」
召喚士見習いとして大召喚士とやらが建てたドームで修行をしていたら、俺を召喚してしまったって事か。
俺を見て驚いてたのも、いきなり人間ですかと確認してきたのも、召喚獣、つまり獣が出てくると思ったら人が出てきて、あたふたしてたって事か。
「えーと、普通の召喚士について聞いていいかな?」
「は、はいなのです。通常の召喚士はドームで祈りを終え、己の召喚獣を得る事でどこででも召喚獣を呼び出せるようになるのです!」
「ほう。一度呼び出せれば後はどこででも自由に出し入れ出来るって事?」
「はいなのです! 召喚士は最初の祈りがすっごく難しいんですけど、一度呼べれば後はそうなのです!」
最初に苦労するけど後々楽になるジョブ、それが召喚士って事ね。なるなる。
「それじゃあ次の質問。召喚獣って本来どんな形なんだ?」
「え、えーとですね。形は召喚士の力のイメージによって変わるのです」
「力のイメージ?」
「はいなのです。召喚士が最も強いと思う存在を作り出すのです」
「それは既存の動物以外でも良いって事か?」
「はいなのですっ」
力のイメージね。
確かにそれなら普通は召喚獣だよな。
人が強いのは武器や道具のおかげ。戦闘能力って面では基本的に他の生き物より低いからな。
想像上の存在でいいって事は、ドラゴンだったり伝説上の大きな狼だったり、そういうぱっと見でいかにも強いと感じるのを召喚するって事なんだろうな。
「ちなみに過去に人を召喚したっていう事例は?」
「え、えーと私は一年ほど前に一度だけやってしまったのです」
気まずそうに視線を逸らしながらいうアイちゃん。
そういえば俺を召喚した時にまた怒られるって言ってたな。
過去に人を召喚した事があるって事か。
それなら同じ召喚人同士何か話を聞きたいな。
俺の存在が普通の人間じゃなくて召喚獣っていう特殊なケースなわけだし、何か普通とは違う何かがあるかもしれない。
先輩がいるっていうなら、その人からいろいろ聞いた方が賢明だな。うむ。
「前に召喚した人ってのは今どこにいるのかわかるのかい?」
「はいなのです。でも今は旅の途中なのですっ」
「そっか」
旅か。その人も俺と同じように日本から来てるのだろうか。
もしそうだとしたら、異世界なんて外国以上に一度は旅してみたい所だもんな。
当分は帰ってきそうにないな。残念。
まあいいや。とにかく一つわかったことがあるしな。
アイちゃんの召喚獣だからといって、ずっとそばにいないといけないわけじゃないって事だ。
そうじゃなければ一人目の召喚人が外を出歩くなんて事普通はないからな。
「あ、あの健太さん?」
「ん? どうした?」
一人で脳みそをクルクルしていると、恐る恐るといった感じでアイちゃんが声をかけた。
「あ、あの、さっきは言いそびれてしまったのですが、健太をここに召喚してしまったのは確実に私なのです」
手をぎゅっと握りながら何やら覚悟を決めたご様子のアイちゃん。なんぞ?
「せ、責任はちゃんと取るのです!」
ドドンッとかバンッとか、そんな感じの効果音を背景に、アイちゃんはそう宣言したのだった。
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