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召喚獣? いえっ召喚人です!  作者: 音野 一角
第一章 来界編
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1-1 召喚人I  〜これってまさか〜

 これは一体どういう状況だ?

 俺は確かひき逃げにあったはずだよな?


 感覚からしてこれはもう助からない、死ぬ寸前だと思ってたんだけど、今こうして思考できてるって事は、生きてるって事なのか?


 という事はだ。最後に声の聞こえたあの女性にはお礼を言った方が良さそうだな。


 あの人が救急車を呼んでくれたおかけで九死に一生を得たわけなんだろうし。

 だけど、ああいう良い人ってその後連絡しようにも出来ない事が多いんだよなー。


 助けてもらった側からすればお礼の一言でも言いたいし、何かしらの連絡手段をくれるとありがたいんだよな。


 ……あ、だけど、あの人は女性だったし簡単に連絡先を教えるべきじゃないのか。


 ぐぬぬ、世の中とはなんと難しいものなのーー


「あ、あのー」


 俺が一人で余計とも言える、むしろ余計としか言えない事を考えていると、思考がこんなにも脱線している原因の少女が、おそるおそるといった感じで問い掛けて来た。


(声を掛けられた以上仕方ないか。現実逃避終わりっと)


 心の中でため息をついた後、相手が年下、おそらく中学生くらいの可愛い女の子だという事もあって、俺はできるだけ優しい笑みを作った。


「何かな?」

「あ、あのですね。一つだけ確認したい事があるんですけどいいですか?」

「どうぞ?」


 確認したい事ってなんだ? この子とは初対面だと思うんだけど、思わず疑問調になっちまった。

 そしてその少女は、とても言い出し辛そうに言った。


「あ、あなたは人間ですか?」

「…………」


 いきなり人にむかって人間ですかってどういう事ですか?

 驚き過ぎて言葉が出てこなかったぞ?


「え、えーと、そのぉ」


 しょんぼりといった感じになっていく少女。

 バカにしてるとか、からかってるとか、そんな雰囲気じゃないな。


 それに確認って言ってるって事は、俺が人間だと彼女自身思ってるけど、念のために本人確認してるって事か?


 理由とかまったくわけわからないけど、まあ、減るものがあるわけでもないし、そもそもこんな少女にこんな顔をさせ続けるのも嫌だし、答えるとするか。


「俺は人間だぞ」

「…………」


 俺が笑顔で答えた瞬間、ピタッと動きを止める少女。


 あれ? もしかしてこの子怯えてる? 小さくプルプルと震えてるし、もしかして今まで知らなかったけど、笑顔が怖い系男子だったのか俺?


「え、ちょっ落ちつーー」

「うわーんっ!」


 どうにか落ち着かせようと、俺は怖い人間じゃないのだと誤解を解こうときたら、盛大に泣かれました。


 ……えー。そ、そうか……俺の笑顔ってそんなに怖いのか……。


「うわーんっこれじゃあ仁美お母さんに怒れちゃうですーっ!」

「ん?」


 仁美お母さん? なーんかよく聞いてた名前だけど、まあそれは偶然だろう。

 それに一つ朗報。多分俺が泣かせたってわけじゃなさそうだな。


 ふー、危ない危ない、幼女を泣かせるなんて年上としてアウトだからな。うむ。


 あれ? けどさ、確かに俺が泣かせたってわけじゃないと思うんだけど、目の前で幼女が泣いてるっていうこの状況そのものはアウトじゃね?


 いやいや、アウトとかアウトじゃないのか、たとえ世の中が善意で声を掛けただけだというのに、相手が幼女だったからという理由で警察のお世話になってしまうようになっているとしてもだ。

 それでも人間たるもの、否っ男たるもの目の前で困っている少年少女がいたら助けるべきだと思います!


「えーと、大丈夫?」


 くっ、何が大丈夫? だよ!


 散々落ち着くためにいろいろと無駄に思考を巡らせたってのに、口から出てきた言葉はなんと情けないことか!


「ご、ごめんなさいなのですっいきなり泣き出しちゃって」


 必死に泣くのをこらえようとしている少女だけど、だめだ、涙が止まる気配ない。


「俺は大丈夫だからとりあえずは落ち着いて。ね?」

「うぅ、はいなのです」


 安心させてあげるために俺は立ち上がると、優しく笑いかけながらゆっくりと頭を撫でてあげた。

 すると少女は恥ずかしそうに頬をほんのり赤くしながら、ゆっくりと深呼吸を始めていた。


 よし。この感じなら通報される心配はなさそうだな。


 いや、だけど状況を知らない第三者から見られたら通報もんじゃね?


 そういえばここってどこなんだ?


 目の前の少女にばかり気を取られて俺自身現状把握が出来てないんだよなー。


 俺は規則正しい呼吸音をBGMにしつつ、キョロキャロを視線を旅させた。


(なんだここ?)


 まるで球体を半分に切って、それを中側から見上げたような天井。言い換えるならばドーム状の天井だ。


 広さは……まあまあ? よくある体育館ぐらいだけど、天井の高さがある半端ない。


 他に人はいないみたいだし、とりあえず通報はないな。


 いや、待て。ドームの外に出るであろう扉を一つ発見したぞ。


 このままナデナデしてるとあそこが開いて、登場してきた人によって通報されるパターンだなこれは。


 ふふふ、だが甘いっ俺はそう簡単にフラグは踏まんぞ!


 あいている方の拳をギュッと握りしめる俺。つまりガッツポーズって奴だ。


(ん? なんだこれ)


 ずっと上や横に注意を向けていた俺だったけど、拳を下ろした時に偶然視線を下ろした事によって、それに気付いたのだった。


(白い線……いや、これは模様か?)


 俺たちの真下に描かれた魔方陣っぽい奴に。


(ーーっ!? まさかこれって!)


 いやそんな馬鹿な! そんな事、あるわけがない!

 これじゃあまるで、


 異世界転移じゃねえかよ!


   ☆ ★ ☆ ★

 

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