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泣いた向日葵

作者: 封弥


朝。煩すぎる目覚ましが鳴り、俺は目を覚ます。


「また今日が始まってしまうんか…。面倒や。…オカン、飯くれへんか?」

「はいはい。何時くるさかい」


そう言う母の返事の後、俺は着替える。

着替えが終わり、朝食も済ませ家を出る。

珍しいぐらいに晴れている青空。

今は夏。あまりにも早く出過ぎたかもしれない。


河原に寄り道して、その河原の上に生えている草の上に体を倒す。

空には雲一つ無い。

この時期、良く雨が降ると思ったがかなり晴れている。


微睡みかけて、目を閉じた瞬間、誰かが俺を呼んだ。


「へーじっ」

「…和葉?」

「おはよ。今日は珍しく早いんやね」

「何か早起きしてしもてな」

「あたしも、妙に早起きしてしもてん。よくわかれへん」


そんな和葉も俺の隣に腰掛ける。

風が柔らかく吹いて、黄色いリボンで結われたポニーテールが揺れる。


「平次」

「何や?」

「向こう、見てみ?」

「あ?」


そう言ってよく目を凝らしてみてみると、隣の河原の上の方に沢山の向日葵が咲く向日葵畑が見えた。

綺麗やな、と和葉は呟く。俺も、綺麗やと一言言って瞼を閉じる。


「寝たらあかんのに」

「一寸ぐらいええやんけ。俺は昨日遅ぉまで事件といてて眠いんや」

「なら、もうちょい遅ぉ起きたら良かったのに…」

「俺は早起きしてしまったんやから、少しぐらい寝かせんかい」

「しゃーないなぁ……五分だけやで?それ以上寝たら断然遅刻やからな!」

「へいへい…」


そう言って俺はすぐに瞼を閉じた。

草が心地よいぐらいに俺に当たる。

さらさら、さらさらと――。



見慣れたはずの寝顔なのに、どうして此処まで愛しく思えるんだろう。

目を閉じて繰り返される呼吸はとても静かで、草が揺れる音が聞こえるぐらい

一体どんな夢…見てるんやろ、平次。

小さい頃の夢やろか。それても、将来のことが夢となったんやろか。

小さくたって大きくたって、平次は変わらない。

いつの間にかそう思えるようになっていた。


「いつまで経っても…変われへんのやな、平次」


その寝顔に柔らかく微笑む。

ふと、時計を見たらもう五分経った頃の時間を指していた。

――あかん!早い所起こさな!


「平次。起きなあかんで」

「……もう五分経ったんか?」

「あたしも寝かけてたわ。さ、行こ平次」


そう言って立ち上がる。


後ろにある向日葵畑を背中に、あたしたちは、学校へと向かった。


「平次は向日葵、好き?」


突然、あたしの口からこんな質問が出た。

ホント何気なしに喋ったような言葉。


「一応はな」

「一応ってな!もーちょい、はっきりとした返事くれへんか!?」

「いや…まぁな…」

「平次?……顔赤いで?」

「茶化すな!!!」

「ご…御免」


何故か突然謝罪の言葉が出た。

もしかしたら、あたしが怒らせてしもたんやろか。

怒ったようなその顔。あたしは、僅かに震えていた。

ホンマに…御免というその言葉が口から出ることもなかった。


学校についても、あの怒った顔が頭から離れず空ろな気分だった。


「和葉?大丈夫?」

「うん、大丈夫やで。気にせんでえぇよ」

「ホンマ大丈夫か?まさか、服部君となんか有った?」

「ううん、何でもあれへんよ。いつものあたしやから…。一寸考え事しててん」

「和葉が大丈夫って言うんやったらいけるな。あ、あたし先生に呼ばれてるから行ってくるな!」


そう言って手を振る友達に手を振り返すことしかできなかった。

何で嘘なんてついたんやろ…。はっきり平次を怒らせてしまったったって言うてしまえば…。

今日も平次は部活。あたし達は今日、部活がないから早めに帰ろうとは思っている。

でも…でも…平次にちゃんと謝らな。

学校について以来、平次と顔も合わせなければ、話もしなかった。


気まずい雰囲気の仲、あたしは平治の部活・剣道部を覗きに行った。

其処には、何時もと同じく汗をかいている平次が。


何故かそこで見ていられなかったあたしは、体育館を抜け出し、朝平次が五分間眠っていた河原へと向かった。

どうして、謝ることが出来なかったんだろう。 どうして、素直に怒らせてしもたと友達に言えなかったのだろう。

後悔が募り、視界が滲む。

手で拭き取っても涙は溢れ続ける。


大分後ろで友達が見ているのにも気がつかず、ずっと泣いていた。


(……和葉。やっぱり、服部君と何かあったんや)



部活を終わらせ、着替えも終わらせて和葉を探そうと思ったがとうの和葉はいない。


「服部君」


そんな声が聞こえ、振り向く。其処には、和葉の友達が俯いた状態で立っていた。

どないしたんや、と聞いてみる。

しばらくの、静寂の後その友達は重い口を開いた。


「……和葉が…河原の方で泣いてた」

「泣いてたやと!?」

「うん…何て言うてるかよく解らんかったけど、何か…『何であたしは平次を怒らせてしもたんやろ』ってそんな感じのこと言ってたで?」

「その河原、何処や!?」

「うーん…向こう岸に向日葵畑がある河原やった気が…」

「サンキュ」


そう言って俺は走り出す。何時お前が俺を怒らせたんや!

和葉!一体何が原因なんや!

無我夢中で走り続け、河原に近づくにつれ、足音を立てないようにしていた。

そして、河原に着く。

其処には、夕焼けに照らされてしゃくり上げる和葉の姿があった。


よくよく聞いてみれば、何でもあれへん!と言う俺の一言が原因らしい。

それで、和葉が自分の所為で俺が怒ったと想った訳だ。


「何やっとんや。和葉」

「え!?へっ…平次」

「俺の一言で自分の所為にするなや。今回は俺が…悪かった。スマン、和葉」

「何で謝んの?謝らなあかんのは、あたし…やのに」

「和葉の所為ちゃうわい。お前の友達から聞いたんや『和葉が…河原の方で泣いてた』って聞いてん」

「だから…わざわざ走ってきてくれたん?」

「あぁ。向日葵が泣いているのなんて見ていられへんからな」

「向日葵が…泣く?」

「和葉や。向日葵ちゅうんは」

「あ…あたしが?そんなに輝いてもあれへんのに」

「和葉がどんな向日葵よりも一番、輝いとるんや」


そう言った俺は一体どんな顔をしていたのだろう。

柔らかい顔なのかもしれない。

褒め言葉にしては上等かもしれへん。

けど…和葉は俺の言葉をどう受け取ったか…。

すると、和葉は顔に笑みを浮かべ口を開いた。


「平次の方が何倍も輝いてんのに…な」


昨期の泣き顔は一体何処に消えたのだろうか。

向日葵が取ってくれたのだろうか。


つられて俺も笑顔になってしまう。

和葉は、誰かを笑わせることが出来る凄い力を持ってるちゅう訳やな。

ホンマ…凄いわ、和葉。此処だけは和葉に負けてしまうんやな。

例え、剣道で勝ってても、推理力で勝ってても和葉の無邪気な笑顔には負けてしまう。


そんな自分が些か悔しく思えた。


風にゆられて、向こう岸の向日葵が僅かに動く。

和葉の心も俺の心も一緒に動いていたのかもしれない。


Fin...

季節はずれで御免なさい><

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― 新着の感想 ―
[一言] 平治と和葉マジよすぎ!素直に好きって言わない所とかグー!!
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