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序章


 泡立つ虹色の球の如き我が身を白い沈黙が襲った。



 触れるものも、そして踏みしめるべき大地すら存在しない「そこ」と私との間を今満たしているのは唯一、乳白色の空間のみであった。



 気が付いた時には、我が身は此処ーー何処とも知れない、果てのないような広大な空間で何故か浮遊状態に陥っていたのだ。



(此処は一体・・・・・・)



 ほんの数瞬前までは、此処とは正反対の場所ーー広大な大宇宙の一角や降臨した蒼い惑星の地で、様々な“敵”と壮大な戦いを繰り広げていたはずだった。変幻極まりない眩しい光の塊や、周囲に無数の光球を従えた巨大な火の精、そして生物的且つ醜悪な形態を備えた異形の魔物らが襲来し、これに迎え撃つ・・・それが、気付いた時には一転、此処でこうしていた。



(何故、私は此処にこうしている?)


 あきらかに、そこに私の意思とは無関係の、全く別の意思と力が働いているのは明白だった。



 まるで霧のように、時折我が身の一部も霞んで見えなくなってしまう濃密さ。だが、それよりも、この一切の存在を拒絶したかのような無音の不気味さと静謐さ。呼吸することすら躊躇いを感じる程だ。



 このままでは、この汚れの知らぬ純白の闇に肉体はおろか意識さえも浸食されていくのではないか。そして、存在の痕跡すら一片も許さぬように、全てが呑み込まれてゆくのでは・・・・・・


 そう考えただけで狂気の波が這い上がり、皮膜を剥がされ、内部の神経の末端からじわじわとこの身を食い尽くし、闇の奥底へ引きずろうとするようだ。




 そんな我が身に突然、何者かの“声 ”が届いた。


 だが、そこには空間を振るわし、耳孔の奥の鼓膜に当たる音は存在せず、信号波のように直接脳内に侵入してきた。正確には、じわじわと滲むように入ってくるのだ。


 だから、最初はそれが何を意味しているのか分からなかったが、徐々に理解出来るレベルにまでになっていった。



 だが、一つだけ、即座に理解出来たことがある。その声の発現者は間違いなく、我が身を此処へ転送させた張本人だということだ。上下左右、そして前後と、その気配の発現点を探ろうと宙に漂う全身で受け止めようとする。






(・・・・・・我が声が聞き届いたならば答えなさい、異次元からの侵略者よ・・・・・・)


いきなり、その声は鮮明さを持って脳内に響いた。


(誰だ?)


(この私を・・・・・・それ程までにこの私を手に入れたいならば・・・・・・条件があります)


(言っている意味が解らない。どういう意味だ?)


(その条件を聞き入れてくれるなら、あなた方を勝利に導き、未来永劫この私を支配することを約束します。今は亡き人類に代わる新たな支配者として、私はあなた方に全てを捧げましょう)


(新たな支配者・・・・・・ということは、お前はひょっとして・・・・・・)


(そうです。さぁ、どうしますか。この“契約”を交わす気はありますか?ーー〈門の鍵にして守護者〉ヨグ=ソトースよ)



その瞬間、我が視界を眩い光が包み込んでいった。






















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