学校
今日の講義の雰囲気はなんて言うかそわそわしていた。まあ、無理もないかとも思う。わりと近い場所で殺人事件が起きたのだ。動揺するのも無理はない。俺だって少し動揺してるくらいだ。
「しかし、鬼屋敷お前何してるんだ?」
「何って?聞き耳たててるけど?」
「明らかに挙動不審なんだけど。」
今は休憩時間でワイワイガヤガヤしているわけだけど、鬼屋敷の行動は不審者そのものだ。これで顔がイケメンでなければ通報されると思う。まあ校舎内なので通報も何もないが。鬼屋敷の状況を説明すると、時折納得したようにふんふんと首を振りながら、少し上下に体を動かしている。
「でも俺は重要な情報をゲットしたぞ!」
「なんの?どうせ大したことない話だろ?」
「いや、お前にも多少はというか大いにあると思うんだ。てか、お前先越されたな。なんて言うかドンマイ。落ち込むなよ?」
まるで話が見えてこないのだが。少しは説明しようとする気持ちはないのか?まあこんな会話がいつもの事なので別にいいのだけど。
「で、どんな話だ?というか噂?どうせ女子たちが話しているのを盗み聞きしたんだろ?盗み聞きじゃねえよ。情報収取だよ。とか鬼屋敷は言いつつ、
「まあ、いいわ。言ってもいい?」
「興味ない。どうせくだらない話だろ?」
「ああ、俺にとっては下らない話だ。でもな、情報の価値なんて誰にとって有益で無価値なものなのかわからんだろうその情報を聞いた本人にしかわからんだろう?」
「まあ、そうだが。」
「でな、この情報はお前にとっても価値あるものだと思うぞ?」
「ほんとかよ?で、どんな情報なんだ?」
「田中凛が高橋先輩と付き合うことになったらしい。」
何かに頭を打ち付けたかのような衝撃が俺の頭に走った。なんだろうこの感覚は。俺は無駄と分かりながらも冷静を装う。ここで自分を偽ることをしないと何かおかしくなりそうな気持だった。
「そ、そうなのか?」
「そうなんだよ。で、どう思った?」
なかなかに意地悪な質問をするものだ。鬼屋敷がこんな質問をしたところで何も変わらないというのに。
「別にいいんじゃないのか?そういう年頃なんだろうみんな?」
俺は少しだけ怒りを鬼屋敷に対して覚えたがまあいい。
「お前も正直じゃないな?まあいいんだけど。後悔するのはお前だし。あいつも後悔するだけだと思うし、まあいいんだけど。」
「てか、俺にはかんけーない話だろ。」
「まあそうかもな。まあ切り替えろや!なっ!」
「切り替えるも何も俺落ち込んでないんだが・・・・・。確かに幼馴染に先越されたと思うとあまりいい気持にはならないが。」
「そうか。まあいい。チャイムなったし戻るか。」
「そうだな。ひとまず戻るか。」
しかし心中はぐちゃまぜになっていて、一つ一つの気持ちが複雑に絡まり気持ち悪かった。分離もせずただただ心の中で漂っている。胃がむかむかした。
まだ、チャイムが鳴っても教室の中はざわざわしていた。このカオスな教室は普段は好きだが、今日のこの時間に限ってはなかなかに不快だった。どこか気に入らない。うすうす理由は気が付いていたが認めたくないし、認めるのは癪だった。
「しかし、ある意味悩み事が消えたのかもな・・・・。そういった意味ではよかったかも。」俺は一人そう呟き、ひとまず座る。次の講義は国語だ。寝てしまいそうだった。