学校
いつの間にか放課後になっていた。帰宅部の俺は早々に帰ることにする。まあ、家に帰っても何かするわけではない。でも学校にいても仕方がない。それに鬼屋敷は用事があるらしいし、小林に至っては行方不明。こうなるとどこにも遊びに行くこともできないわけだ。俺は素早く帰るる準備をする。そこでなぜか俺に喋りかけてくる奴がいた。できれば喋りかけて欲しくない人物だった。
「あれ?黒羽根帰るの?でも、小林は欠席だし、鬼屋敷も今から委員会の仕事だし・・・・ってことは今から予定はないってこと?」
ちっ・・・。こいつはなかなかに察しがいい。しかし、ここでそれを認めるわけにはいかない。なんせ認めたらこれからの展開が見えている。
「いいや。俺は今からすごく忙しい。だから俺は帰らせてもらうよ。では。田中さらばだ。また、明日学校で会おう!」
「ちょっと待ちなさい。」
「なんだ。俺は忙しいんだ。帰らせてくれ。」
田中にカバンをがっちりとつかまれながらも俺は田中の方を出来るだけ見ずにそう答える。
「こっち向きなさい卜部。」
「よ、要求には応じることができない。俺は早く帰らないといけないのだ。これは決定事項であり、だれも覆すことはできない。」
「で、何の用事?」
「言うことはできない。」
「ふーん。」
ここまでの俺はもう冷や汗だらだらだ。神様助けてこの女怖い。
「まあ、いいや。今度、卜部先生にでも聞いてみるかあんたの様子を。」
「それは卑怯じゃね・・・・。わかったよ。手伝えばいいんだろ?」
「素直でよろしい。」
俺は溜息をつく。なんでこんな奴に捕まってしまったのだろうか。
田中凛という女子・・・・。俺は苦手だ。外見よし性格よし頭のよし成績よし。このよし尽くしのオンパレードということで男女ともに人気が高い。男子の中でもあいつに惚れたはれたの話なんていくらでも出てくる。なんか皆が新手の詐欺に引っかかってるか、熱でもあるか、魔法にでもかかっているのかと俺は疑ったものだがどうやら違うらしい。俺にはそうは見えないが、あいつは俺以外のほとんどの同性からしたら魅力的に見えるらしい。
「で、用事とは何だ?」
「うん、委員会の仕事。ちょっと校舎周りののゴミ拾いでもやってもらおうかなあって。」
「それって今日じゃなきゃダメなの?」
「別に今日じゃなきゃダメってことはないんだけどさ、今頼んでおかないと忘れそうだし?それに私今あんたに四つも貸しがあるし?」
(めんどくせ・・・・。)
「あんた完璧に思ってること表情に出てるわよ。」
「はい、喜んでやらせていただきます。」
「よし。では行って来い。」
「って貸しが四つ?三つじゃなくてか?」
「四つよ。あとで何だったか教えてあげるから。」
(まじかよ。なんか増えてるし。)
おそらく貸しの数に関しては凛の方が正しいのだろうが、どうも納得がいかない俺だった。凛は恐ろしく細かいことを覚えているので、俺が忘れていることも換算してそうだ。浮かない顔をして教室を出た。
校舎を一周すれば出るわ出るわ大量のごみが。よく今までためてきたものだ。パンパンになったゴミ袋がいつの間にか三つになっていた。
「少し真面目にやりすぎたかな。」
自分はやり出したら止まらないというかとことんやってしまう癖があるのだが、今日のゴミ拾いに関しても同じだった。あとはゴミを校舎裏に運んで凛に報告したら終わりだ。
「ねえ。あなたが黒羽根?」
「ん?」
突然話しかけられる。話しかけられた方向を見るとそこにはこの学校の有名人さんがいた。この女子の名前は卜部鏡花。今まで接点などまるでない。俺に用事などあるのだろうか?
「そうだけど。」
「そう。」
そう言って彼女はどこかに行ってしまった。いったい何だったのだろうか?