学校
俺は授業の内容が全く頭に入って来なかった。唐突に送られたメールの本文に関しての事だ。フェノメノ。検索してもなかなか意味は出てこなかった。俺は授業中にスマホで意味を検索していたが出てくるのはフェノメノというタイトルの作品。よく知らない作品だ。そして、よくよく調べると次に出てくるのはイタリア語であるということ検索結果。意味は怪物。現象。脱皮。変化。神童。フェノメノ・・・・・・。俺にこれを送った意味があるのかはわからない。小林にしかわからないのではと思う。俺にはさっぱりわからない。でも、これは俺に送られてきた。これが意味するのはどういうことだろうか?
このフェノメノという文が送られてきた後のもちろん俺は警察の人に送ったし、小林に返信も送った。だが、突然着信拒否になるし、電話をかけても繋がらない。いったい、小林は何をやってるんだろうか?俺は何が何やらわからないまま、授業を受けている。全くもって頭に授業の内容が入ってこない。
「全く、全部小林のせいだわ。ほんと。」
俺はここにもいない小林に愚痴を言う。本当に奴は何をしているんだか。
小林と俺との付き合いは長い。それは幼稚園の頃からさかのぼる。小林がガキ大将で俺が御付きの者といったような関係だった。あいつが何かすると言ったら俺はへーこら従っていった。窓ガラスを割ったり、女の子を泣かしたり大人にいろいろと大目玉をくらったりした。他にもいろいろあるのだろうが、今となっては枝葉末節はなかなか思い出せない。その関係は小学校の低学年まで続いた。そして小学校の高学年の頃からだろうか?俺は小林が他の人と違うことに気が付き始めた。いろいろと気が付くというか物事がわかり出した時期というのが正しいかもしれない。まあ、小林が他の人と違った所、それは一言で言うと家柄ということになるだろうか。持っている物は全て格が違った。今でも自分は子供だと思うけど、もっとガキだった頃の自分でも違いは分かった。仕草。声の出し方。身に着けている服、カバン。親。そのどれもが一級品だった。俺が持っている物と比べるとそれは一目瞭然で、俺は自分のことを見回して、少し劣等感と憧れを抱いたものだ。だから、自分とは違う世界にいる小林がなぜ俺と親しいのかすごく不思議だった。その疑問が俺の中で大部分を占めた時期があって、俺は思わずあいつに聞いたことがあった。
「お前ってなんで俺と友達してるの?」
こんな質問すること自体失礼だし、誤解されるような内容だったわけだけど、あいつはただ一言で答えた。
「お前だからに決まってんじゃん。」
なんか今思い返してもテレ臭くて笑っちゃうし、この話でまだ二人で笑うこともあったりするけど、小林らしいなあ。と今でも思う。今じゃ絶対にできない会話だ。
そして、そんな小林が行方不明なのだという。
あいつは本当にいったいどこで何をしているのだろうか?
何かに巻き込まれてなきゃいいのだが。