赤い月
「今日は本気ってわけ?卜部さんちは。」
私は思わず苦笑いをする。この街から見える月を赤く染めるこの魔法は・・・・。この魔法は卜部の家の十八番の魔法だ。この魔法により卜部の者とその協力者の力は増す。具体的にどれくらいの力を得るのかは知らない。だが、これはピンチと言ってよい。なぜならこの魔法が使われるのは卜部が本気であるからだ。この魔法が最後に使われたのは実に100年まえ。その時の我らは死にかけたというからことは重大だ。
そして、この魔法の行使こそが奴らの本気を表わしていた。そしてこの月は相手を倒さない限り消えない。つまり卜部の当主。卜部鏡花を殺すもしくはそれに準ずる(魂を消す)などの処置が必要になってくる。
厳しいがなんとかしないといけない。でも、わかっている。自分がなすべきことは何なのか。だから思ったよりも怖くなかったし、この状況を歓迎している私がいた。
「いいわ。やってやろうじゃないの。」
これはむしろチャンス。一気に卜部を弱体化させるチャンスだ。
それにもうあいつのことがばれてしまった以上は防衛戦だけでは意味がない。こちらからも攻めていかなくてはならない。
「おう主人様よう。」
「何?」
「前方に魔力感知。こっちに近づいている。」
「魔力の大きさは?」
「お前の半分ってとこかな。」
「ということは使い魔か。」
「だろうな。あっ探知に気が付いたみたいだな。」
「すごい。速さだ。」
「でも、関係ないわ。」
私は人ならざる声で魔法を這う動作させる。
「gffuhbjvfydjkjouugyyrs!」
この声は人の言葉では表現できない。いや正確には表現できてはいけない。これがわかれば魔法使いになってしまうのだから。この言葉で私は体を強化。そして身体能力もあげる。そして五感はとら並みに。
そして相手は来た。相手の形は日本刀。それが高速で私を狙う。まず一閃。その速さは人では反応ができるはずかがない。しかし私は軽々避ける。
遅い。私はそう感じた。私に切りかかってくる攻撃を全て私は全て避ける。その間に振るわれた日本刀の攻撃のパターンは実に百。私は最後の攻撃をよけると日本刀の柄を握る。これだけ精巧な使い魔だ。私は目をつぶる。そしてこの使い魔の構成を解明していく。そして
「つかんだ。」
私はその魔力を暴走させる。すると日本刀が砕けた。
「たわいない。」
この程度の使い魔など彼女にとっては何の障害にもならない。それだけ彼女は強いし、魔法使いとしても優秀だ。この街をこの若さで任せられるだけのことはあった。
「ご主人様よう。余裕こいているのはいいけどさ。」
「なに?」
「さっきの反応が一気に百に膨れ上がってるぜ。」
「百?馬鹿な!さっきのが?」
「そう。」
いったいどういうことよ。彼女にとってはにわかには信じられない。普通に考えて使い魔というのは多くても十くらいが限界だ。それを越えると魔力の量が足りなんて話どころではない。体が解けてしまう。
「それだけこの赤い月の魔法が強力ってことか・・・・。」
少しばかりの尊敬と憎しみが私の中に入ってくる。強いものに私は尊敬を惜しまない。敵ながら卜部の者というものは強者なのだ。そして憎しみ。敵へのあいつへ害をなすものへの憎しみ。
「二波が来るぞ。ご主人様よう。」
「わかってる。」
私は最大限に自分の力を引き出す。少しやりすぎたかもしれない。だがここを切り抜けるにはこれしかない。そして嵐のような敵の攻撃がやってきた。その時私は笑っていた。こんな相手と戦えるのだ。感謝するしかない。