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魄の際  作者: 神前 健人
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学校

「お前ってさあ。あからさまな拒絶って受けたことあるか?」

「どうしたんだよ?急に。」

突然、鬼屋敷がそんなことを俺に問いかける。少しだけ真面目ぶったその質問に俺は少しの戸惑いと、そこから俺は昔からの付き合いである鬼屋敷に何かがあったというのは容易に想像することができた。

「うーん。どうだろ?ぱっと思いつくこともないしけどなあ。あるのかな?俺に?」

「じゃあ、ないんだろお前には。」

なんだその決めつけは。鬼屋敷。やっぱり、このパターンは自分の話を聞いてくれっていういつものあれか・・・。ホームルームまでの時間はあと残り五分。それくらいなら俺でも耐えることが出来そうだ。

「お前にはあるのかよ?」

俺は話を聞くことにした。決められたレールの上に乗っかるのはどうも空かないし、少々抵抗を見せたいところだが、鬼屋敷の場合あとあとの考えたことを考えると、この方が得策な気もする。鬼屋敷はネチネチとどうでもいいことを根に持つタイプなのだ。

「ああ、つい最近にな・・・。」

「どうした彼女さんとなんかうまくいかなかったのか?」

「いや、そっちじゃねえ。」

「そっちじゃない?じゃあ、どっちなんだよ?」

「妹の春香。」

「あー・・・。」

なるほど。そっちか。そういえば、こいつは妹が大好きだったな。昔は三度の飯より妹などと言っていたなこいつ。結婚するなら、妹がいいとか昔は本気で言っていたと思う。(本人は冗談だったんだって、とか言っていたが、あれは本気だった。目がガチで怖かったのを俺は覚えている。)妹が好きなのは大変よろしいとは思うのだが、やはり度を過ぎていると引いてしまうものなのだ。

「この前の事なんだけどさ。・・・・。」

一字一句俺からしたら、さっき捨てた消しゴムのカスくらいどうでもいいのだが。まっすぐにそのことを表現するのはやはりまずいし、聞くことにする。

「この前?」

「ああ、この前さ歯磨きをしていたわけだ俺は。そうしたらそこに同じく歯磨きをしに来る妹が来るわけだ。」

何というか、鬼屋敷はよっぽどこの話をしたかったらしい。結論をすぐに話したがっている。いつもならもう少し前振りがあるはずなのだが、そこはカットらしい。五分の尺を考えての短縮らしい。考えたな鬼屋敷。それくらいの知能があったとは驚きだ。

「可愛い仕草で洗面所に歯ブラシにしに来た妹は上機嫌そうに入ってくるわけだ。少し鼻歌交じりにな。そして俺を見て、何かに気が付いたように、俺を凝視するわけだ。少し俺が照れるくらいにな。ややあって、俺の可愛い妹が口を開いてこう言うわけだ。「「兄貴それ私の歯ブラシじゃね?」」と。いやいや、俺は言うわけだ。これは俺のだろうよって。でも妹は食い下がらない。それでそんなやり取りをしばらくしていたわけだが・・・俺たち兄妹は途中で気が付くわけだ。」

「ふん?」

「うちら兄妹もしかして、もしかすると歯ブラシを共有して使っていたのではと・・・・。双方しばしの沈黙。この沈黙は少し心地悪かったな。そして、「「死ねよ。糞兄貴。」」の捨て台詞を吐いて妹は去るわけだ。俺はそれからというもの妹と喋っていない。これが三日続いてる。正直な話、死にたい。」

「どんな目をしてた妹さん?」

「ゴキブリを見る目だったよ。」

「だろうな。」

俺は思わず笑ってしまう。鬼屋敷と歯ブラシを共有とか想像しただけでも気持ち悪い。いくらこいつがモテモテ男子でイケてる奴とはいってもだ。兄妹で歯ブラシを共有はない。

「でも、お前嬉しかったんだろ?」

「まあな。そりゃ嬉しか・・・・。冗談だって冗談。思わず妹のあの時の顔がフラッシュバックしたじゃねえか。」

俺の汚物を見るような表情を見て、慌てる妹大好き変態野郎が一人。それにたぶん、これも本音だったんだろうと思うと、なかなかに笑えないところなのだ。深くは突っ込むまい。

「お前の自業自得だろうよ。」

「いや、不慮の事故だって。俺に非はないよ?」

「どうだか?」

そんな話をしていたら、チャイムが鳴ってしまった。俺は無言で席に戻る。鬼屋敷もまだ話したそうではあったがしぶしぶ席に帰っていく。しばらくしたら、担任の山王先生が来るだろう。


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