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魄の際  作者: 神前 健人
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多分というかやはりというか今日も相手はどうやら簡単には正体を見せそにもない。今日も犠牲者は出るのだろうか?長いこと今日も深夜巡回していたが今までどおり何もつかめない。藁を掴む思いだ。この感覚は魔法使いになりたての頃にもあった。今では簡単にできることも当時は簡単にはできなかった。三工程で済むところを十工程くらいしないとできなかった。本当にあの頃は未熟だったと思う。でも、私は成長した。麻友さんが一緒になってやってくれていたが今になってはこの街を一人で任せられるようになった。しかしここまで来るには相当の血をにじむような努力が必要だった。人を止めたくなるような思いに駆られたのは両の手の指の数では足りない。そして努力の結果私は人をやめた。もはや私は人ではない。人であると思ってはいけないのだ。もう後戻りすることはできない。全てこれはあいつのため。私が、幼き少女が願いのため。

 しかしそれにしてもいらいらが募る。今日も何の成果もあげれそうにもなかった。もう日が昇る。私は周りに張っていた術式の展開を弱める。敵が魔法に引っかからないのであまり意味はなしていなかったが。

「ふうう。」

確かあと三分ほどで日が昇るはずだ。私はふと緊張を弱めた。その瞬間だった。攻撃が来た。

「ぐふっ。」

思わず肺から空気がこぼれる。ヒット。こんなにきれいな形で攻撃を受けたのは久しぶりだ。しかも鳩尾。反応が明らかに遅れた。喉元まで胃液が昔はよく感じていた酸っぱさを感じる。そして二撃目が来る。今度は何とか反応する。しかし魔法を解いていた分動きが鈍い。なんとか逃げようとするも肩に一撃を受けてしまう。

「くっ・・」

痛みで頭が回らない。しかしそれでも私は頭をフルとはいかないまでも働かせる。そして状況を整理していく。相手の魔法の展開式は読めない。そして気配が近くにない。つまり敵は遠方から射撃に似た形で私を狙っているということか。そう考えて私は魔法式を展開。式はガード。それにすべてを集中。弱くなるかもしれないが二段階の構え。一つを半径二メートルに展開。もう一つは私の体を強化。この間わずかに0.5秒。

 そして三撃目が来る。私は間に合ったと安堵する。

 しかし安堵にはほど遠かった。一つ目の式を貫かれたのだ。

「なっ!」

強化に特化していたはずなのでこれは少し精神的にショック。式にあたった場所からどこに着弾するのか判断し、私は寸前のところでよける。少し焦げ臭いが私のあたりに広がる。よけきったと思ったがどうやら髪にあたったらしい。しかしこれはまずい。相手の魔弾の射撃の威力は初撃よりも上がっている。というか徐々に上がっている。

「私もなめれたものだわ。」

どうやら相手は手加減してくれていたようだ。なんの意図があるのかはわからない。でもわかるのは相手が強いということと、油断したら死ぬということ。しかし今の攻撃で相手の場所はだいたい判断できた。三発も喰らったのだ。それくらいのことがわからなければ今までのことが水の泡だしあいつを守れない。私は弾が来る方に向かう。もちろんスピード重視。加速術式はどちらかと言えば得意。このまま相手を特定してしまおうと意気込む。

そう思いさらに加速する。日が昇るまでの時間も限られている。早くしないと追いつけない。しかし私は立ち止まった。やはり無理だったか・・・・・。日が昇ってしまった。

 私は敵のことを考えつつ帰宅の途についた。

今日も成果は無し。増えたのは考え事、悩み事だけ。


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