夜へ
私が会いたかったあの人はいなかった。あの人はどうやら風邪をひいたらしい。顔見ることができないのは悲しいが、しょうがない。私は少し溜息をつき、前を向いた。授業が始まる。
夕方ごろになると私は早くあいつの家に行きたくてうずうずしていた。鬼屋敷から聞いたところによると風邪をひいたらしい。昨日も委員会の仕事が忙しくて会っていない。それにおばさんもこっちに帰っていないはずだからあいつは今家で一人だろう。あいつに何か食べさせないとな。風邪をひいてもろくに食べていないだろうし。私はおかゆでも作ってやろうと考えていた。少しにやけていることに彼女は気が付いていなかった。
今日は早めに仕事が終わり、私はまっすぐにあいつの家に向かうことにした。校門をくぐる前に嫌な奴がいた。私は一言声をかける。
「何してるの?あなたなみたいな物騒な人間早く帰りなさいよ。」
私はそう声をかけ。少し小走りであいつの家に向かう。
「失礼します。」
私は合いカギを使ってあいつの家に入る。あいつの部屋は階段を上って右に曲がって突き当りにある。私はいつものようにあいつの部屋の中にはいる。
「入るわよ。」
「うん?ああ、お前か。」
少し驚いたような顔をしている。まあ、わからなくもない。学校の噂では私は先輩と付き合っていることになっている。彼氏がいたら他の男とは何もないようにしないといけないとか考えてるような人だからなこいつは。それに前は少し意味深な態度をとったしな。
「なによ。その嫌そうな顔は。」
「いや、だって・・・・。いや、何でもない。」
「それより風邪は大丈夫なの?」
「寝たらだいぶ良くなった。少しお腹が空いたかも。」
「はあ、しょうがないわねえ。いいわ私が何か作ってあげる。お粥でいいかな?」
「食えるんだったら何でもいいや。」
「そう。」
相変わらず女の子にもてそうにもない返しだこと。私はお粥を作りに下のキッチンに向かった。
俺は少し驚いていた。来ないと思っていた奴が来たからだ。俺はそれだけで少し混乱する。あいつって彼氏いるんじゃないのか?ほぼ一人暮らしの男のところに来てもよいのだろうか?わからん。あいつの考えが全くわかからん。それとも俺の感覚がおかしいのだろうか?
凛が作ってくれたお粥を食べて、学校の様子や授業の進みなどを聞き少しだけ雑談した後に凛は帰っていた。俺は聞きたいこともあったが何も言えなった。「じゃあね。」そう言って凛は帰っていた。俺は凛が帰ったのを確認してまた寝た。もうすっかり夜だ。
もうすっかり辺りは真っ暗になっていた。ここでもう一人の私が始まる。
「行こう。夜だ。」
私は相棒に声をかける。田中凛は夜へと消えていく。