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魄の際  作者: 神前 健人
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二人目

学校を休むとことにしたわけだけど、やはり暇だった。親が看病してくれるような家でもない。俺の親はいろいろあって家に寄り付かないことが多い。父親は世界を飛び回っているような人で今どこで何をしているのかなんて知らない。父親の職業も知らない。でも不定期にお金が入ってくるあたり生きているのでは思っている。お金が入ることが生存確認を兼ねているわけだ。別に死んだとしても驚かない気もしている。その人の妻はというと、この人も変わっている。こっちはワールドワイドというわけにはいかないが日本全国を飛び回っている。こちらも職業は不明。でもこっちはたまに帰ってくる。二週間に一回ほどではあるが、ちゃんと帰ってくる。しかし、連絡も入れずふらっと帰ってくるので連絡の一つや二つしてから帰ってきてほしいものだ。なぜか俺よりも幼馴染の田中凛の方が母親の動向に詳しい。あっちにはちゃんと連絡をいれているようだ。なぜあっちには連絡を入れて俺には連絡をしないのか昔聞いたことがあった。それを聞くと母はこう言ったのを覚えている。「「一番大切な人にはほんとの想いなんて伝えられないの。私はどうしてもそれができないの。その次に大事な人やその次の次に大切な人に自分をさらけ出してまうの。そうなっちゃうのが私。だからごめんね。楓。私はあなたが一番大事なのだけど何も伝えることができない。大切だから伝えることができない。ごめんね。」」あの時の母は本当に申し訳なさそうだった。あの時の母が言っていた意味が俺には未だによくわからない。自分からしたら大切な人には包み隠さず何もかも言うもんではないのだろうか?俺は漠然とそう思うし、漫画や小説などでもそういう類の話は珍しくない。あなたは私にとって特別だから、とか。あなたには嘘をつきたくないとか、そういう話は溢れている。でもよくよく考えたら俺は本当に大切な人などいた例などないのだから母親には反論できない気もする。まあ、実際のところ俺には何もわからない。まだ大人になりきれていないだけなのかもしれない。

 というわけでだ。俺は看病してくれる人もおらず、悶々とした一日を過ごすことになりそうだ。看病をしてくれる人がいないというのはなかなかに寂しいものだ。しかし自分ではどうしようない体だ。自分であって自分ではどうしようもないのだから体というのは自分の一部であって自分のようではないような気がしてくる。俺は寝ることにした。起きるのもなかなかにしんどい。俺は目を閉じた。今度はましな夢を見たいものだ。


 黒羽根楓が寝ていたころ。山の奥で死体がまた見つかった。警察は前と同じく顔のない死体を前にして呆然としていた。何ができるというのか、こんなことができるのは人間なのか?刑事になったばかりの川中はただただそう思った。この事件は本当にわからない。

 誰も救われない事件が始まってしまっていた。


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