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魄の際  作者: 神前 健人
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 今日はやけに犬が遠吠えしている気がする。なにか不吉なことでもあるのだろうか?いやただ単純に犬が吠えたいだけなのかもしれないが俺はあまりいい印象は受けなかった。なにかこれから起きるよくない事の前触れのように感じた。俺は湯船につかりながら考える。風呂に入るというのは心の洗濯とか言ったりするが、その通りだと思う。今日起きた出来事それに伴う悩み、不安を一時ではあるが全てかき消してくれる。風呂に入ることで自分がリセットされた気分になる。

 俺は風呂を上がり、ベッドに入る。今日は安らかに眠れそうだ。俺はそう思った。そんなことを思ったらいつの間にか俺は寝てしまっていた。


 夢を見た。

俺は池の近くまで逃げていた。ここがどこなのか俺は知らない。だが俺は追われていた。月の色は朱。綺麗な綺麗な月。まん丸の月。欠けることを知らないかのような完璧な月。でも俺にはそれが綺麗だと思えなくて、それが禍々しいものにしか思えなくて・・・・・・。

そして後ろからは追いかける者がいて、その者の手にはナイフ。俺は必死に逃げたのに一瞬で追いつかれる。狩人の魔手が伸びて・・・・。その後に何が起きたのかはわからなかった。わかったのは俺が月を見上げていること。そして、動くはずの体がなくて、すぐ近くには地面。土のにおいがする。体と別れても少しの間は意識があるのか。俺は漠然とそう思った。見えるのは綺麗な月とワンワン泣く狩人。それから俺の意識が途絶えた。


 夢の途中で場面が変わる。ここは真っ暗な世界。ここには何もない。だけど、声がする。「死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。死にたくなかった。」

その叫び声は本当に悲痛でこっちが聞いてるだけで心が痛む。でも俺には何もできない。しようとしても、したくても何もできない。死んだ者を、消えたものを助けることなどできない。

「消えたくなかった。消えたくなかった。消えたくなかった。消えたくなかった。消えたくなかった消えたくなかった。消えたくなかった。消えたくなかった。」

声は俺に訴えてくる。そしてその怨嗟の声はだんだんと大きくなって。そして、俺を責めるのだ。

「お前は何もしなかった。お前は何もしなかった。お前は何もしなかった。お前は何もしなかった。お前は何もしなかった。お前は何もしなかった。」

止めてくれ。俺の頭が壊れてしまう。やめてくれ。俺だって何かしたかった。でも俺には何もできないよ。だから俺を責めるのはやめてくれ。お願いだから。俺は自分の存在がもう罪であるというのを悟った。頭が痛い。われそうだ。やめてくれ、お願いだから。泣きそうだ。俺はふと見上げると見えるのは真っ赤な真っ赤な月。誰でも美しいと感じる禍々しい月だった。


「うぅん。」

俺は目が覚めた。頭が痛い。なにか怖い夢を見ていた気がする。体全体が重い。どうやら風邪を引いたようだ。今日は学校を休もう。


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