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最強を目指す者  作者: 鈴神楽
激闘編
9/45

彼方からの狙撃

殺気の無いスナイパー、けしてその存在を気取らせないその男は何処に居るのか?

 人が溢れるオフィス街

「流石の一言だよね」

 自分が避けた弾が地面にめり込むのを確認しながら較が言う。

「天下に名高い丸の内で、もう三十発以上撃ってるのに、一発も他人に当たっていないよ」

 較は別に人込みを避けてる訳では無い。

 逆に人込みの中に紛れている。

 なのに音より早く弾丸が襲う距離からの狙撃で、一発も他人に当てていない。

「そのうえ、諦めも良い。一発撃ったら直ぐに移動するから、相手の所に移動する前に逃げられる」

 大きくため息を吐く較。

「そして一番厄介なのは撃つ時すら殺気を発しない事。殺気さえ有れば、相手が動く前に動いて、対応する方法なんて幾らでもあるんだけどなー」



「次の対戦相手です」

 喫茶店で注文して直ぐに、カードを出す。

「ご苦労様、姫子ヒメコさん」

 較はそれを受け取る。

「これが仕事ですから」

 どこか垢抜けないOLの風の女性は、較を担当する、組織のエージェント、森本モリモト姫子である。

 カードを見て、較は苦虫を噛んだ顔になる。

「A級闘士の中でも一番厄介な奴が来たね」

「そーなんですか?」

「無臭のガンマンって呼ばれる奴でね。スナイパーなんだよ」

 姫子は首を傾げる。

「スナイパーがA級闘士なんですか?」

「そう、B級以上には通用しないって言われてるスナイパーでありながら、A級闘士をやってる化け物だよ」

 疑問符を浮かべる姫子。

「無臭のって言われているのは、狙った相手に気配を感じさせない所から来てるの。狙撃された時にも殺気を感じないって程だからね」

「そんな事可能なんですか?」

「解からないよ。少なくともあちきが今まであった人間の中には居ないね。闘士って言うのは伊達じゃない。戦う強い意志があって初めて闘士なんだから、殺気を発しないなんて普通はありえないもん」

 疑問符を増やす姫子に較が言う。

「闘士との戦いに常識は邪魔だよ。普通で無いことをやる事で相手を撹乱し自分のペースに持ち込む。勘違いされがちだけど、A級闘士は魔法じみた技を使えるからA級って訳じゃないだよ」

「でも、大半の人間は常識離れした技を……」

「自分で言ってるよ。大半の人間はって。こないだ戦った軍人の人が良い例だよ。あの人は闘士は自分がメインに戦う物って常識を端から無視して、自分は司令官とし、自分の手駒を効率よく使う事でA級闘士相手にも同等に対戦してきた。正直あの人がラフレシアに気付いていて対策とられたら負けてたのあちきだった」

「そんなに強かったんですか?」

「まーね。あの人の一番怖いのは、こっちの技に動揺しないその強い心だよ。バトルで一番大切なのは自分のペースで戦うそれに尽きるの。相手にペースに飲まれたらその時点で負けが決まったようなもん。その為、必死こいて相手の隙を見つけては自分のペースに嵌めていくんだよ」

「意外でした、私はてっきり闘士の人達って本能のまま戦ってると思ってました」

 本当に意外そうに言う姫子に苦笑する較。

「動揺してる所なんて対戦相手には見せないからね」

 そういいながら空中で何かを掴む。

「虫でも居ました?」

 首を横にふり、掌の弾丸を見せる較。

「多分ガンマンの攻撃だよ」

「冗談は止めてくださいよ最新の位置を示すカードにはニューヨークって書いて有るんですよ。それにカードがお互いの手に渡るまでバトルは開始されないんですよ!」

 較は自分の手に有るカードを見せて言う。

「もうカードはあるよ。ガンマンはカードを受け取って直ぐ移動して、あちきがカードを手にした直後の隙を突くつもりだったんだよ」

「しかし、それでも直ぐに東京にこれるなんて……」

「そーゆー常識が一番闘士が突け込む所だよ」

 平然と立ち上がり言う。

「ここの支払いお願い」



「高いビルから狙撃させれば、ビルの入り口に移動する前に、追いつけるかもって思ったんだけど」

 較は、狙撃してきた方向距離からビルを特定しそのビルの周り全体に監視した。

「二階から降りても見える筈だけど……隣のビルに飛び移っていったのかなー」

 他のビルを覗き込む較。

「何か違和感感じるんだよね。やっぱり殺気を感じないのは普通じゃ無いよなー」

 その時、目の前を通り過ぎようとした大人用のバイオリンを持った十歳にも成ってない少女がこける。

 較は慌てず、少女を支える。

「大丈夫?」

 その少女は頷いただけだった。

 その少女は感情を感じさせない表情のまま、その場を去っていく。

「次は、隣のビルも見える位置で待機しよう」

 較は、狙撃位置が解かり易い位置に移動する。



 自分の周囲の空気の密度を厚くし、弾丸の速度を減少させて、紙一重で三十一発目の弾丸をかわす。

 弾丸が地面に当たると同時に較は駆け出す。

 そして、問題のビルと両となりビルが監視出来る位置に移動を終え、監視をする。

「今度こそ逃がさないよ」

 しかし待っていてもカードにあるガンマンの姿は無い。

「変装でもしてるのかなー」

 次のチャンスを掴む為、移動しようとした時、較は謎の答えを見つけた。

「凄く単純なトリック。でも単純なら単純な程騙し易いって言葉もあるもんな」



 較はオフィス街を歩いていた。

 そして、目的の人物を見つけて声をかける。

「どうしたら、感情を持たない狙撃者なんて教育できるんですかガンマンさん」

 ガンマンと呼ばれた男のコーヒーを飲む手が止まる。

「因みに狙撃者って何人居るんですか?」

 何気ない表情のまま、較は窓の外に見えるマンハッタン島の自由の女神を見る。

「出来れば、自由の女神をモチーフにしたお菓子あったら紹介して欲しいんですけど」

「どうして気付いた?」

 ガンマンがカップをテーブルに置きたずねる。

「日本じゃバイオリンを持った女の子は目立つんですよ。それに急がせたでしょ。あんな小さい子がライフル銃が入った大人用のバイオリンケースなんて持って動き回ったら、疲れて動きが鈍ります。こけた所をたまたま助ける事になったのも偶然とは言えませんよ」

「今まで、五発以上外した事は無かった」

「最新の居場所が書かれたカードにニューヨークって書かれて居た男が、カード受け取った直後に東京にいるのって不自然だったんですよね」

「東京には、鬼の娘ヤヤや居合いの一文字剣一郎がいるから優秀な奴を配置していた」

「対戦の可能性がある闘士のおおよその住所を事前に調べて、配置していたんですね」

「全てのからくりが見抜かれていたという事か」

 振り返るガンマン。

「カードを受け取った直後に攻撃するのは、奇襲と同時に自分から移動してきたと思わせるトリックだったって事でしょう」

「A級闘士は下手に相手に常識が通用しないと言う認識があって、不自然に思わない奴が多かったがな」

「最初の質問に戻りますけど、どうやったら殺気を出さないスナイパーなんて教育出来るんですか?」

 ガンマンはカップのコーヒーを飲みながら答える。

「あの当時は、連敗を記録していた。殺気を捉えられたら最後、B級以上の人間は平然と弾をかわす。どうにかして殺気を無くす術を探していた。だが私には不可能だった」

「殺気無い人間は闘士にはなれませんよ」

「そうだ。しかし神は私に味方した。偶然だった、私が幾ら撃っても掠りもしなかった闘士が撃たれて死んだ。私が逃げる時に放置した銃を殺気など最初から持っていない子供が撃ったのだ」

 カップを再びテーブルに置く。

「天命だと思ったよ。それから私は才能がある子供それも銃弾が当ったら人が死ぬと理解する前の子供を引き取っては私の代わりのスナイーパーに育てた。我が子供達は優秀だったよ。プロの狙撃主が放つ銃弾すら避ける闘士達も彼女達の銃弾の前では無力だったよ」

 そしてカップを鳴らす。

 沈黙がその場に訪れる。

 沈黙を破るように較が言う。

「種がばれた手品は、もう手品じゃないんだよ」

 そういって、写真尽き携帯の画面を見せる。

 そこには、この場所を狙撃できる位置に隠れていた少女達の顔が映し出されて居た。

「そうそう、さっきの答え聞かせてくれる?」

「人数の話か?」

 首を横にふる較。

「自由の女神を模ったお菓子の話し」

 苦笑するガンマン。

「七番街に日本の浅草から来たという男が……」



「これがニューヨーク土産の自由の女神焼きだよ」

 較が差し出す、自由の女神を模った人形焼きを見て良美が言う。

「面白い冗談だね」

 較は土産をパッケージを見せて較が熱弁する。

「本当だもん、ほらちゃんとニューヨークって包み紙にも書いてあるよ」

 まるっきり信じてない様子で良美が言う。

「どー考えてもカタカナは偽者だよ」

「まーいーじゃないか。美味しいんだから」

 そういって、さっさと食べ始める良太。

「あー、何で一人で食べるの!」

 良太の手から包みを奪い取る良美。

「そうです。そんな似非物は、大山さまの口には合いません」

 割り込んでくる麗子。

「似非もんじゃないもん」

 本物だと主張する較。

 能天気な一同であった。

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