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最強を目指す者  作者: 鈴神楽
激闘編
7/45

女郎蜘蛛の罠、囚われのヨシ

対戦相手に囚われる良美、蜘蛛の巣の様な罠がヤヤを襲う

 今にも崩れそうな廃ビル

「こーゆービルは子供が入ったら危険だから廃棄した方が良い」

 いつもの様に軽い口調を装っているが、較の目から怒りが溢れている。

 壊れた入り口から中に入ると、そこには尋常で無い目をした男達が屯していた。

『そいつらは貴女を殺せば薬を上げるって言ってあるから』

 嬉しそうなその女性の声に較は、改めて男達を見ると、全員体は筋肉質だが、肘の裏が紫に変色し、骸骨の様な顔立ちをしているのに気付く。

「よくこれだけの重度で且つがたいの良いジャンキーを集められたね」

『丁度近くにレスリングの道場が有ったのよ』

 その一言が全てを語っている。

「本当に良い根性してるよ、あちきの体力を削る為だけに、こんだけの人間の人生を駄目にするんだから!」

『そうね間違っても負けたり、怪我負ったりしてくれそうもないもんね。もう神経なんてまともに動いて無いからちょっとやそっとの事じゃ戦闘能力奪えないわよ』

 本当に嬉しそうに言う。

 そして、較が自分達のテリトリーに入ると同時に一斉に男達が襲い掛かってくる。

「白風流戦闘撃術を舐めないで欲しいな」

 先頭の男の頭を飛び越し、すれ違い様相手の腰に指を当てる。

 着地と共に男達の間を抜け様に両手で、相手の腰を打つ。

 一斉に男達が振り返ったときにはもう較は床に居ない。天井に着地(?)していた。

 重力を無視している訳では無い、ジャンプした時の慣性を増加し、物理的には上昇するエネルギーが重力を勝った状態なだけである。

 強いけり足と共に、男達が集中した地点に飛び下がる。

 回転するように放たれた較の手刀は性格に男達の腰に命中していく。

 男達の中でもひときわ大きい男が熊の様に襲ってくる。

 即座にスライディングで男の股下を抜けると同時にオーバーヘットキックの要領で腰を蹴りつける。

 そして較が立ち上がった時、10人以上居た男達は皆、地面に倒れ、もがいて居た。

『一発ずつで黙らせるなんて何やったの?』

「人間って腰骨を砕かれたら動けなくなるんだよ」

『酷い事するわねー。一生障害が残るわよ』

 本気の口調で非難する。

「組織の治療力は高いから大丈夫だよ。それに、下手な怪我で麻薬が抜ける前に開放されるよりましだよ」

『確かに組織は、肉体的怪我ならともかく麻薬の中毒症状まで治してくれないもんね』

 気楽で且つ楽しそうな口調、他人を自分の玩具としか思っていないその発言に較は腹立ちを覚えた。

『もしかして正義の怒りに燃えてる?』

「まさか、バトルに参加している時点で人様並みの正義を語る良心は捨てました」

『良いわねー。そのプリティーな顔に似合わない割り切った所が好きよ』

「だから正義だ何だ言うつもりはないけど、あちきはあんたのやり方が気に入らないだけ」

『可愛い。理性的な思考を越す感情的な怒りを込めたその瞳。外見に似合わない大人っぽい思考に隠れてる子供の純粋な感情。本当無理やりねじ込んでこのカードを組んでもらった甲斐があったわ』

 そんな女性の言葉を無視して、較は近くの階段を上り始める。

『あたしって結構外見に自信があるの。バトルを見た金持が愛人にしてくれるんですもの』

 較は、辺りにトラップが無い事を確認して2階から3階へ移動する。

『バトルは、基本的にカードが送られた後、専門のスタッフが両者の行動を24時間体制で監視する。その中で罠を仕掛けたり情報集めしたりする。そして強敵とカードに恐怖する姿を見たり出来る。金持達は勝負前から必死に足掻き苦しむ闘士の姿を見て楽しんでいるわ』

 較は3階から4階に移動する、その際外の様子を確認する。

『その日は、パトロンに付き合ってバトルを見学させて貰ったの。もちろん自分が戦った時に有利になる為の情報収集としてね』

 無造作に飛んでくる、毒付きの矢を平然と避ける較。

『そこで見たの、勝負が決まったって言うのに普段と同じ生活を送るヤヤちゃんを。正直驚いたのよ。多少は相手の事を調べたりするけど、罠を張ったりしないどころか、普通に学校に行き、普通にご飯を食べている。正直信じられなかった。それは単なる見せ掛けだろうと思った。殺し合いをやるって言うのに普段と全く同じ生活を出来る訳無いって』

 いきなり階段が崩れるが、崩れた破片を足場に跳び平然と5階にあがる。

『でも解かったの、ヤヤちゃんはいつも殺し合いをする前提で生きてるんだって。例え試合が決まって無くてもいつ何時、殺し合いが始まっても良い様な心構えをしてるんだって』

 マシンガンの連射をあっさりかわして、マシンガンを壊さないまま先に進む較。

『今まであったどんな人間とも違う存在に興奮したわ、それからパトロンに頼み込み、ヤヤちゃんのカードは何時も見ていた。あのクレイジーアーミーやふられ剣士と戦った時見せた追い詰められたヤヤちゃんの顔を見たとき思ったの』

 マシンガンが壊される。

『死ぬ寸前まで追い込んで、そして命乞いをさせたらどんなに快感か! 想像しただけで濡れてくるわ』

 そして、較の前に意識無い状態で壁に縛りつけられた良美と良美の首にナイフを押し当てる女性が居た。

「まず裸になってくれる? クレイジーアーミーの時みたいに遅効性の薬使われても嫌だからね」

 較は、あっさり服を脱ぎ、膨らみが皆無な胸と茂りがまったく無い股を晒す。

「流石に素手で人を殺せる人間は、思いっきりが良いわね。あたしなんかは、パトロンの前でも裸になんてなれないわ。まー服を着たままって言うのが好きな人だからいいけど」

「一言言って良い?」

「なーに?」

「この国には青少年保護条例って奴があって、子供にそー言ったいやらしい知識を与えたらいけない事になってるんだけど守る気ないの?」

 爆笑する女。

「ごめんなさい。あたし、バイなのよ。そしてヤヤちゃんに惚れちゃったの。だからこの後そーゆーいやらしい事いっぱいする事になるから守れないわ」

 そして手を振り上げると較の左腕に浅い傷跡が出来る。

「両手両足を切り落とし抵抗出来なくなった後でね。安心してちゃんと治療してずっと可愛がってあげるから」

 手を振り下ろし、部屋に張り巡らせた無数の鋼線が一斉に較に襲い掛かる。

『アテナ』

 較の体に無数の鋼線が絡みつくが、どれ一本も較の皮膚を傷つけては居ない。

「あちきは両手両足無くてもあんたを殺す事出来るから」

 オーバーなアクションをとりながら余裕の笑みを残したまま女が言う。

「怖い怖い。でも親友の命は要らないの? 大人しくあたしの慰め者にならないと……」

 次の瞬間床と女のナイフが斬りおとされる。

「なんでマシンガンを壊したの?」

 下の階で、落下して来る壁から良美を救い出した剣一郎が答える。

「拙者はふられ剣士では無い」

「まーね。ふられる以前の問題だよ。出会いサイトで利用されてお金毟り取られるなんて」

 鋼線に縛られたままの較の言葉に落ち込む剣一郎。

 驚愕の表情を浮かべる女。

「なんで一文字剣一郎がここに?」

「ヤヤには食事を貰った事があってな、その借りを返しにだ」

 そう言って較の方を見る剣一郎。

「お弁当の件はこれでチャラにしてあげるけど、負けてお金入らないから飢え死にするかもって言うから貸した二十万と今使っている予備刀の貸しは別だからね」

 何か言いたげだったが剣一郎は大人しく頷き言う。

「解かった。又なんかあったら言ってくれ」

 そして階段を下りていく。

「……鋼線を斬って貰わなくて良いの?」

 突然の展開に戸惑う女。

「必要ないよ」

 鋼線が当然鳴動し、不可思議な動きをとる。

「白風流戦闘撃術の基本思想はいつでも、お風呂入っている時でも戦えるって事にあるの」

 鋼線の鳴動は確実に女のコントロールを奪っていく。

「ラフレシアだって、髪に染込ませた香料を術で化学変化させるんだから」

 鋼線が女の手から離れる。

「詰り、髪の毛を使った技も有るんだよ」

 髪の毛を鋼線に置き換えその技が放たれる。

『ベルゼブブ』

 鋼線はまるで蠅の様な音を出しながら、女に突き刺さり振動で骨を砕いていく。



「しかし、馬鹿な女だ。B級にあがったばかりの姑息な手段を使うだけの自分がA級に通用するなんて思っていたのだから」

「あちき、強さや姑息さ云々言う前に、あんな変質的な思考が嫌。おもいだしただけでも鳥肌がたつよ」

 良美を家に連れ帰る事で、二十万の貸しを帳消しにすると言う話しを受けて付き合う剣一郎と鋼線で服が破れた為、上着を借りている較が話す。

「所でこの子には何て説明するんだ?」

 その時、良美が目を覚ます。

「あれあたし何をしてたんだろう?」

 較が笑顔で一言。

「路上で突然空手の型の練習していて足を滑らせて頭打ったんだよ」

「えーとそうだっけ?」

「だから頭痛いでしょ?」

「確かに」

 良美の頭の痛みはあの女に嗅がされた薬の性である。

「たまたま通りかかったこの人が、お弁当のお礼だって家まで運んでくれてる最中だよ」

「すいません」

「いいんだが……」

 言いよどむ剣一郎。

「とにかく頭打ってるんだからもう少し寝てた方が良いよ」

「そうね、何か眠いし……」

 そのまま再び眠りにつく良美。

 戸惑いながら剣一郎が聞く。

「どうしたら今の説明で納得出来るのだ?」

「あちきが信用されてるから。世の中信用が第一なの。断っておくけど出会い系サイトであった女性の言葉を直ぐ信じるのは信用で無くて警戒心が無いだけだからね」

 再び涙を流す剣一郎であった。

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