明かされた企み
ヤヤ達が内部を進む豪華客船ドラゴンエッグが到着した人口物それは、……
ドラゴンエッグの最奥の部屋
ミラーはそこで長き時を生きた自分の父親に言う。
「もう直ぐです。お父様の願いが適うのは」
そして、父親の命を繋いでいた装置を外し、車椅子に乗せる。
「さーお父様が設計した最高傑作、八刃の人間を全滅させる為の装置の所に行きましょう」
ミラーは車椅子を押して、部屋を出て、謎の海上人工物の中に入っていく。
そして謎の人工物の上では、
「ここが、貴方達を作った施設ですか?」
較の父、十三闘神最強と言われた鬼神、焔が一人の男を引きずりながら言う。
「……はい」
完全に焔を恐怖し、その男が答えた。
「異邪の臭いがそこら中からします。ここは、単なる研究施設なんて物じゃないですね」
そう言って周りを見回す焔。
その間に男は、焔との戦闘を思い出す。
「貴様が最強の鬼神か、だかその名も今日までだ! 俺達が殺して、その名を継承してやるよ!」
そういって男は、トラックですら破壊する拳を放った。
しかし、焔はそれを片手で受け止める。
「もう一人居るぞ!」
男の相棒だった男は、ダイヤモンドも切断する暫撃を放った。
「異邪の臭いがしますね」
そう言って、男の相棒の刀を素手で受け止めて、そのまま握りつぶす。
「冗談だろ」
次の瞬間、男達は地上数百メートルの所に居た。
「大人しく話して下さい、君達は何をされました?」
「誰が喋るか!」
男が精一杯の威勢を張るが、焔が手を離す。
凄まじいスピードで落下を始める男達。
「助けてくれ!」
男が絶叫すると、落下が止まり、ゆっくりと焔が隣に降下してきた。
「答えを聞きたいのですが?」
焔の質問に男は大人しく答えた。
自分達が、遺伝子操作で新たに力を得た事を、そしてその力で八刃の人間を殺せば莫大な報酬を貰えると言う事を。
「その場所に案内してくれるよね」
焔の言葉に男は素直に頷こうとしたが、男の相棒は最後の意地を張った。
「こんな事して脅しておいて何を言うんだ! まともにやればお前なんかに負けはしない」
「そうですか普通に闘いたいのですか」
焔はあっさり地面に降りると、男の相棒を解放する。
「いつでも良いですよ」
そして男の相棒は、無数の刃を全身から生やして、斬りかかる。
『アレス』
焔がそう一言喋っただけだった。
それだけで刃が焔に当たると同時に粉砕された。
「お前本当に人間か!」
男の相棒が一歩後退する。
「解りませんよ」
そして右手を振り上げる。
『フェニックス』
焔の一撃はまるで不死鳥の様に炎の鳥を作り出し、一撃でそこに何も存在しなくした。
「君もやるかい?」
焔の言葉に男は首を横に振った。
男はその時初めて知った。
この世の中には決して逆らってはいけない存在がある事を。
「偶然に発生した穴から異邪が抜け出したと言うレベルじゃないですね」
焔がそう呟いた時、焔の視界に十歳位の少女が入ってきた。
「何でこんな所にあんなガキが?」
男がそう呟いた。
「お兄さんこっちに逃げて来なさい。私が貴方を助けてあげる」
その言葉に男は、何故か従ってしまった。
しかし焔はそれを止めなかった。
そして少女の所まで来た所で男は気付いてしまった。
自分がその娘と初対面で無い事を。
「さー貴方の力を解放してあげる」
その少女が男の頭に指を突き刺す。
男の体が膨れ上がり、数十倍に膨れ上がった男に元の知性は無かった。
「凄くパワーアップしたでしょ? さー平和に浸りきった八刃の人間を殺してやりなさい」
少女の言葉に答えるように、化け物になった男が焔に向かって行く。
焔の顔が鋭くなる。
『オーディーン』
立った一撃で数メートルの化け物は真二つになった。
「お前は何者だ?」
焔の言葉に微笑む少女。
「私は、オーフェンの六頭首の一人魔磨よ。白風の長、貴方にはここで私の配下の者の手で死んでもらうわね」
そして、人の姿をしているが異質な雰囲気を持つ連中が、焔を囲う。
「この者達は、オーフェンの中でも指折りの実力者、貴方達が中位と呼んでいる異邪クラスの実力を持ってるわ。さー貴方に勝てるかしら?」
魔磨が邪悪な笑みを浮かべて言った。
較達は、十三闘神が集まっていた円卓のホールに着いた時、一人の男が立っていた。
「お前達は強いか?」
その問いに良美が胸を張って言う。
「ヤヤは、十三闘神相手に連勝してるよ」
その言葉にその男は、立ち上がる。
「ならば闘おう、組織のボスは俺の後ろの通路から、俺達を改造した施設に向かった」
「何で教えてくれるの?」
較の問いに男は答える。
「そうすれば本気で俺と戦うだろう。俺の名は、岩神、タイトス来い」
それに答える様に、剣一郎の無間合いの居合いが放たれる。
鉄すら切り裂く剣一郎の間合いをタイトスは腕で防いだ。
「鋭い居合いだ。防がなければ斬られていたな」
「ヨシ、下がってて、こいつ今まで様な力に溺れてる馬鹿じゃない」
較はそう言うと、飛び上がると天井を蹴って上から攻撃を行う。
タイトスは、即座に前進して攻撃の間合いから離れる。
そこに剣一郎の居合いが走る。
防御体勢で、剣一郎の居合いを防ぐタイトス。
『バハムートブレス』
較の接近からの衝撃波を放つ掌打を打ち込む。
タイトスはその体つきから考えられないスピードで横にかわす。
較が頬をかいて言う。
「一つだけ聞いて良い? あんた程の実力者が何で無名だったの?」
それに対してタイトスが言う。
「俺は、力に恵まれていなかった。どんなに修行してもお前達の様な特殊な力にも、強靭な肉体も得られ無かった。だから強くなりたい思いだけは捨てられなかった。だから俺は遺伝子操作を受けた」
その瞳に較は強い信念を感じた。
「剣一郎、こいつ本当の闘士だよ?」
剣一郎は頷き宣言する。
「ここは拙者一人にやらせてもらおう」
頷く較。
「同意しよう。小娘先に行くが良い。正直小娘相手にするのは俺の趣味では無いのでな」
タイトスまで納得する。
「ヨシ、行くよ」
「解った一騎打ちの邪魔しちゃ駄目だからね」
ノリで納得する良美であった。
焔は、体中に無数の傷を負っていた。
「この平和ボケしている八刃の中にお前見たいのがいるとは」
そう言ったのは、冷気を発する剣を持ったマントの男だった。
そしてその男の周りには、仲間だった者達の死体が転がっている。
「何を感心してるの、ファザード早くそいつを殺すのよ!」
魔磨が叫ぶが、ファザードは動けなかった。
ファザードにとっては、自分の手に余る相手、まさに格が違うという感じであった。
「まさか私の代で八刃本来の仕事をする事になるとは思わなかった」
焔が前進した時、魔磨が叫ぶ。
「もー、私が相手するわ!」
そう言って、手首を切り、そこから噴出した血を、地面に転がる死体にかける。
すると死体が結合して、一体の巨大な化け物と化す。
「さー、私の作ったこの子に勝てるかしら?」
焔は、呼吸をコントロールしながら間合いを開ける。
「無駄よ! 少しくらい間合いを開けたところでこの子の攻撃は避けれ無いわ!」
魔磨の言葉通り、化け物の腕は伸びて焔に襲い掛かる。
しかし、その腕は焔に届く事は無かった。
その目前で、爆炎を纏った、一匹の獅子がその腕を噛み砕く。
「折角、萌野の長に初手を譲ってもらったって言うのに、ずるいですよ」
その突然の声に驚き、声のした方を向く魔磨。
「あなたは、百母の長! 何でここに?」
そこには百母西瓜が居た。
「八刃に刺客放っておいて、逆に襲撃されるとは思わなかったんですか?」
そして微笑み言う。
「舐めないで下さい。戦闘集団八刃はそんな甘いものでは無いんですよ」
舌打ちをする魔磨。
「ローデアの馬鹿が、余計な事をするから、八刃の長が二人も……」
「もうこの場所は報告してあります。萌野の長もやるきたっぷりですよ」
西瓜の言葉に焔が言う。
「百母の長、何か嫌な予感はしませんか?」
その言葉に西瓜が首を横に振る。
「いーえ私は、物凄く危険な臭いしかしませんよ。八刃の人間たるもの、危険な場所こそ本来の居場所ですから」
ぞっとする魔磨。
「お前等本当に、大戦未体験者か?」
笑顔で答える西瓜。
「ええ、ですけどお嬢さん誤解してもらったら困ります。八刃の人間は闘う為の存在。たった数十年大きな戦いが無かったからと言って、腑抜けにはなりませんよ」
「異空門閉鎖大戦を生き残った私にガキがうるさい!」
魔磨の怒鳴り声に応えるように、化け物の腕が再生し、焔と西瓜に襲い掛かる。
「これは大物だ。楽しめそうだ!」
攻撃を避けながら、不敵な笑みを浮かべる西瓜であった。
剣一郎とタイトスの戦いは熾烈を極めていた。
剣一郎の居合いは受け損なえば確実に必殺であり、タイトスの鋼鉄の拳は掠っただけで鋼鉄のテーブルを弾き飛ばす威力があった。
中央にあった円卓は、既に形を無くし、タイトスの片腕は中ほどから切り落とされていた。
しかし、剣一郎も足に破砕したテーブルを喰らい、引きずっている。
「次の居合いで決める」
剣一郎が居合いの構えをとる。じりじりと近づきながらタイトスが宣言する。
「それを防げば俺の勝ちだ」
最高まで緊張が高まった時、剣一郎の居合いが放たれる。
タイトスは今までと同じ様に腕でそれを防いだ。
そして剣一郎に止めに攻撃しようと足を前に出した時、剣一郎の気の刀身は、逆刃ながらもタイトスに向かっていた。
咄嗟に逆の腕で防ごうとしたタイトスであったが、そちらの腕は、中程から先が無かった。
「馬鹿げた話だ、痛みすら無視できる体ゆえに、腕を切り落とされていた事を忘れるなんてな」
胴体を切られたタイトスの体が、みるみるうちに痩せ衰えていく。
「拒絶反応か?」
剣一郎の言葉にタイトスが頷く。
「遺伝子適合が低くても、俺はこれに縋るしかなかった。薬で無理やり適応させるしかなくてもな」
剣一郎が見守る中、タイトスは普通の人間の体に戻った。
「しかし俺は後悔しない。力の限り闘ったんだから」
そのまま、心臓が止まっていく。
剣一郎は、その死を見届けた後、片足を引きずりながらも、先に進む。
較が扉を開くそこには、ミラーと男だった物が居た。
「よくここまで来たわね。でももうおしまい、この施設、万年竜の死骸をベースに作り上げた、八刃殲滅用の兵器、バハムートが在る限り、貴方達に未来は無いわ。ねーお父様」
ミラーはそう言って、その男だった物に接吻する。
「ヤヤ、あの人死んでるよね?」
良美の言葉を聞いてミラーが怒鳴る。
「お父様が死んでる訳無いわ! 私を何時も導いてくれて、私を強く抱いてくれてたのだから!」
崇拝に近い思いを向けるミラー。
しかし、車椅子に乗る男の体は、死臭を放っていた。
「お前の役目はもう終わったんだよ」
その声は、男の死体から放たれた。
「どういうことお父様?」
困惑するミラー。
そして、男の死体が割れて、そこから一人の真っ白な顔の男が現れた。
「この男は、死ぬ直前まで、八刃を越す力を求めていた。だから私がその夢を叶える手助けをしてやったのだよ」
割れた男の死骸を抱き上げるミラー。
「お父様、お父様、お父様」
必死に死骸をくっつけようとするが、ミラーが触る端から崩れていく男の死体。
「お父様!」
泣き叫ぶミラーを放置して、真っ白な男が較達に言う。
「始めまして、白風のお嬢さん。我が名はローデア。オーフェンの六頭首の一人です」
圧倒的な力に、気合を込めて較が言う。
「オーフェンって何!」
その言葉にローデアが言う。
「八刃の手でこの世界と異世界を繋ぐ門は閉じた。その為、多くの異邪が滅んだ。しかし、異邪が戯れに人との間に作った者達は、門が閉じた後も生き残った。我々はお前等八刃の手によって親を失った孤児、オーフェン!」
較は震える足に力を入れて、前に進む。
「詰り貴方の目的は、あちき達八刃を滅ぼす事だね?」
「そして、再び異世界との門を開き、親と会うことだ! その為に、利用できるものは利用する。そこの男は、白風に強い憧れを持っていた。その心を捻じ曲げ利用した。まー途中で体が持たなかったから、その娘の頭を弄り、あの人形を生きていると誤認させて利用してやったがな。愉快だったぞ、私に侵食された死体と抱き合う女の顔はな」
本当に愉快そうに言うローデア。
較の足の震えが止まる。
「そして、このバハムートこそお前等八刃を殲滅させる最終兵器。この中に眠る無限のエネルギーを使えば、八刃を滅ぼす事等容易い事よ」
『ヘルコンドル』
較が放ったカマイタチは、ローデアに当たる前に消滅する。
「ふんその程度の攻撃でどうにかなると思ったか!」
ローデアが余裕たっぷりの態度で答えるが、較は真っ直ぐローデアを睨む。
「あちきはあんたを許さない。人の心を弄び、悲しみを増やし、そしてあちきの大切な者を壊そうとするあんただけは絶対滅ぼす!」




