平穏の終結
平穏だった時は、終わり組織との決着をつける時が来た
横浜港に浮かぶ豪華客船の一室に一つの円卓があった。
そこには十三の席が用意されていた。
そして、そこにには五つの空きがあった。
「寂しいわね、鬼神が来ないのは何時ものことだと言っても、たった三人しか居ない、女性十三闘神の一人、剣神が辞めちゃうなんてね」
本気に寂しそうに言うレズな、両手に包帯をする十三闘神の一人、糸神、ユリーアであった。
「それよりなんで樹神がこないんだ! 俺はあいつとの再戦の予定してるんだがな」
不満気に言う、ガンマンルックの銃神、ホープ。
「あのものは、自分の森からは出ぬ。あやつにはあやつのポリシーがあるのだ」
淡々と答える、両手をギブスで固定している拳神、地龍。
「呪神は、まだ傷が癒えていないらしいな」
クールに事実だけを述べる、もうマスクを被っていない美女の騎神、キッド。
そして、トップエージェント、ミラー=ガーランドが入ってくる。
「お待たせしました」
そしてミラーは空いている席の一つに座る。
その態度に、キッドが机に叩き抗議する。
「この席は十三闘神しか座れぬ席だった筈だ。たかがエージェントのお前が何故座る!」
その言葉にミラーが笑顔で答える。
「それは貴方達も一緒ですよ、中学生の小娘に負けてよく、十三闘神だなんて名乗っていられますね」
キッドが睨みつけるが、何かを言う前に地龍が答える。
「確かに、実力が全てのバトルで敗北した我々に今の地位は相応しく無いと言うなら良いだろう、私はいつでも十三闘神を辞めよう」
その言葉にキッドも頷く。
「私もよ。でも覚えておきなさい、もう一度ここに戻ってくるから」
それに対してミラーが言う。
「残念ですけど、もう新しい十三闘神は決まっています。それも貴方達より何倍も強い」
その一言にはガンマンの表情が険しくなる。
「聞き捨て出来ないな! 俺達より強い奴なんて十三闘神以外は、あのお嬢ちゃん位だと思ったが?」
それに対してミラーが微笑む。
「簡単よ、居なければ作れば良いのよ、八刃の力を持った十三闘神を」
「何言ってやがるんだ?」
ホープが疑問符を浮かべるが、ユリーアが鋭い視線を向ける。
「なるほどその為の、小較ちゃんって訳ね。あの子は遺伝子改造した人間でも白風の技が使えるか確認する為に故意的にヤヤちゃんに預けた。違う?」
ミラーが頷く。
「さすが、十三闘神一の智将。でももう十三闘神に知恵なんて要らないの。私達ガーランドの人間が考えるとおりに動く駒なんだから」
そして残り四人の十三闘神が立ち上がり、ユリーア達の方を向く。
「お前等何のつもりだ。奴が言っていた事が本当だったらお前等もお払い箱になるんだぞ」
ホープの言葉に対して、髪を逆立てた男、斬神、バルザが笑みを浮かべて言う。
「安心しろ俺達はその遺伝子操作を受けて、真十三闘神に成ったんだからよ」
ホープの顔に怒りが浮かぶ。
「お前等本気か?」
頷くのは、ロン毛の男、美神、ヴィース。
「負けるのは美しくないんですよ」
「己の体を弄くって手に入れた力での勝利に何の意味がある」
地龍も立ち上がり言うと小柄の男、瞬神、マタタキが答える。
「そんな下らないプライドに拘るから負けるのだ」
キッドが立ち上がり、睨みつけて言う。
「プライドを持てない者が十三闘神を名乗るな!」
「弱者の戯言だな」
三メートルの長身の男、巨神、ボルゾが笑う。
十三闘神同士が睨み会う後ろでミラーが言う。
「私たちは、真の十三闘神で、我々が最強という事を証明するわ。八刃なんて下らない奴等を滅ぼす事でね」
高笑いをあげるミラー。
「さー貴方達はその前夜祭よ!」
次の瞬間、ユリーアの腕が動くと天井が崩れて道が出来る。
「残念だけどあたしは、こんな不利な戦いを受けるつもりは無いわ」
そのままその穴から脱出する。
ホープが拳銃を構えてキッドに言う。
「お前もあの穴から逃げろ。ここは俺と拳神で食い止めるからよ」
その言葉に驚き反論するキッド。
「私に逃げろって言うの!」
ホープは笑みを浮かべて振り返り言う。
「ガンマンって奴は女を守る者なんだよ」
更に何か言おうとしたキッドに地龍が言う。
「バイクが無いお前に何が出来る。お前は自分の誇りに合った戦いをしろ」
拳を握り締めるキッド。
「そうだついでに頼まれてくれ、鬼の娘にこの事を伝えてくれ」
そう言いながら牽制するホープ。
「たった六発で俺達の相手するつもりかよ」
銃弾をナイフで切り裂く、バルザが嘲る。
「美しく散りなさい!」
ヴィースの鋼鉄の鞭が、伸びるが、地龍の蹴りがそれを弾く。
「行け!」
「絶対にバイクに乗って戻ってくる」
そう言って、キッドが穴に消えていく。
「逃がすか!」
マタタキが追尾しようとしたが、その顔面の前で、ホープの弾丸が爆裂する。
「お前等の相手は俺達だぜ」
「四対二で勝てるつもりか?」
ボルゾの言葉に、バルザが爆笑をしながら言う。
「まー今だったら俺一人で二人相手出来るがな」
「舐めるなよ!」
そして六人の戦いが始まった。
学校帰りの学生達が騒ぐ横浜の町をキッドは走っていた。
その体には無数の傷があった。
「まさかもうあんな化け物達を量産してたなんて」
それでもキッドは進んでいた。
周りの人間は遠巻きに見るだけだった。
「鬼の娘にこの事実を伝えて、バイクに乗ってあそこに戻らなければ」
そう言いながらもその場で倒れかける。
「大丈夫ですか?」
それを支えたのは組織の事務所からの帰りだった姫子だった。
「はい気をつけます」
較が電話を切る。
「ヤヤお姉ちゃん、何処から電話だったの?」
白風家の居間で小学校の宿題をやっていた小較が聞いてくる。
「間結の長からで、この頃分家を襲う変な奴が居るから気をつけろって。貴女も気をつけなさい」
「はーい」
較の言葉に手を上げて元気良く返事する小較であった。
「ヤヤただいま!」
良美の声を聞いて、較が玄関に向かう。
「部活疲れたよ」
トントンと肩を叩く良美。
較が、苦笑していたが、すぐさま真剣な顔になり、玄関から出る。
「貴方達何者?」
較の言葉に、敷地の外に居た数人の男達が較を見て笑う。
「へへへ、こんな小娘殺せば一億円だって」
そして突っ込んでくる男だったが、較はあっさり、避けて腕を粉砕する。
「あんまし近所で暴れたくないんだけど、どうしてもやるっていうんだったら相手するよ」
その時、較に腕を粉砕された男が残った腕で殴り懸かって来た。
「うそ!」
良美がそう言うが、較は冷静に避けて、相手の腹に手を当てる。
『コカトリス』
内臓の近くの骨を粉砕されて流石に倒れる男。
即座に残りの男達も常人とは思えない動きで接近してくる。
較は一瞬迎え撃つ体勢を取るが、何かに気付いた様子になって大きく飛びのく。
「逃げられると思うな!」
その次の瞬間、男達の足が全て切り離された。
目を見張る良美。
「どうしたの?」
異常に気付いた小較も出て来た。
「どうしてここに居るの? 再戦の申し込み?」
それに対して、一本の刀を持った男、一文字剣一郎が言う。
「何、拙者のスィートハニーが、真十三闘神って名乗る馬鹿に襲われたもので、お前の所にも来るかもと思って借りを返しに来たのだ」
「千夜さんの所に来たって事は、まじめに狙いは八刃って事だね」
較が納得した顔になる。
「それで千夜さんは大丈夫なんですか?」
小較の言葉に剣一郎が爆笑する。
「二匹程来ていたが、正直拙者がやりたかったが、スィートハニーが一瞬で終わらせてしまった」
剣一郎の言葉に較も頷く。
「まー当然だね。でもなんで十三闘神なんだろう」
較が首を捻っていると、男達が居た方から声が聞こえてくる。
「それは、我々真十三闘神が、八刃を倒して真の最強を証明する為です」
その金髪の青年の言葉に、較が振り返って言う。
「何のつもりか知らないけど、お父さんやあちきを相手だけならともかく、八刃全部敵に回すなんて無意味だよ。あそこは異邪を倒す事しか考えない組織だもん」
それに対してその金髪の青年が言う。
「我々が最強という事を証明する為にです。この真十三闘神の一人、飛神、フライヤーがここで貴方を倒して、その一歩として見せます!」
そして、そいつは空中を飛び、較に襲い掛かる。
較は紙一重の所で交わすが、即座に方向転換して連撃をかましてくる。
それを防ぎながら較は剣一郎の前まで移動する。
「お前等白風の能力を使った飛行能力の前では、お前など無力な小娘よ!」
それに対して較は溜息を吐く。
「本気で馬鹿だね。例え本当に十三闘神としての能力を持ってたとしてもあちきと剣一郎を同時に相手出来ると思ってるんだから」
そして地面を蹴り付ける。
『タイタンキック』
地面が砕け、フライヤーに向かって飛ぶ。
「そんな物が通用するかー」
その時、フライヤーの右腕と右足が切れる。
「馬鹿な?」
フライヤーの愕然として放った言葉に対する答えは、その頭上をから聞こえた。
「剣一郎の無間合いの居合いを避けるのは、見えていても難しいのに、視界を塞がれてたら不可能だよ」
フライヤーの気がそれた瞬間、破片の影から上空に上がった較の両手がフライヤーの両肩に着く。
『バジリスクテール』
回転しながら放たれる超振動は、フライヤーの全身の骨を粉々にした。
着地をして較が言う。
「さて、この似非十三闘神は何者かな?」
「そいつらはきっと、組織が決めた新しい十三闘神よ」
女性の声に吊られてそっちを向くとそこにはタクシーから降りてきたキッドが居た。
そしてその後ろから姫子も出てくる。
「状況は大体理解出来たよ。でもいいの姫子?」
白風家の居間で事情を聞いた較に姫子が言う。
「良いんです。もう組織にはついていけません。あたしは組織を抜けます」
「剣一郎、すまないけど千夜さんに頼んで、キッドと姫子、そして小較を守って貰えないかな?」
その言葉に剣一郎が頷く。
「問題ないな」
その時、小較が較の腕にしがみつき言う。
「これから戦いに行くんでしょ。あたしも行く!」
それに対して較は笑顔で答える。
「それは駄目、貴女には大切な役目があるんだから」
「大切な役目?」
小較が首を傾げると較が言う。
「千夜さんが来るまでこの家を護る事。出来るわね?」
大きく頷く小較。
そして良美が言う。
「あたしはついて行くよ」
較は大きく溜息を吐く。
「まーそう言うと思った。ただしあちきから離れないでね」
「慣れてるから安心して」
胸を張る良美に小較が言う。
「ヤヤお姉ちゃんの足手まといにならないでね」
「何だと」
何時もの良美と小較の喧嘩の後、較と剣一郎・良美は真十三闘神が待つ、横浜港に浮かぶ豪華客船、ドラゴンエッグに向かって移動を開始した。




