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最強を目指す者  作者: 鈴神楽
死闘編
36/45

最強を目指す者

最強を目指す少女ヤヤ、彼女が闘士として最後に戦う相手は、

『イカロス』

 慣性操作を行い、廃棄ビルの間を飛び移りながら間合いを広げる較。

『我は神をも殺す意思の持つ者なり、ここに我が意を示す剣を与えよ』

 千夜の手に、一本の剣が生まれ、その一振りは、容易に廃棄ビルを切り裂き、較が立つビルが崩れる。

 地面に飛び降りて較が言う。

「別に砕く必要ないと思いますけど」

 それに対して、千夜が普通の事のように言う。

「貴女がまだ若いといって、八刃の盟主とも言われる白風を舐めるつもりは無いの。貴女が選んだ戦場で戦うつもりはないわ」

 一気に間合いを詰める千夜。

 地面を蹴りつける較。

『タイタンキック』

 無数のアスファルトの破片が千夜を襲う。

 しかし、千夜から放たれる気迫のみでその全てが粉塵と化す。

 視界がゼロと化したその瞬間、一気に駆け出し、千夜の直ぐ横を通り抜ける較。

 千夜も直ぐに気付いて振り返るが、突進力が付いていた為、反転するまでにタイムロスが生じる。

 その間に較の気配を見失う千夜。

「逃げの一手ね。次はどんな手を打って来るかしら」

 千夜は、油断無く構えて居た時、両側のビルが倒れてくる。

「ビルの強度を計算して、最小限の破壊で倒壊させる。流石は白風と言った所ね。でもあたしには通用しない」

 倒壊するビルの下敷きになる千夜。

 較が気配を探りながら倒壊したビルの上に立ったその時、そのビルが切断される。

 慌てて飛びのく較だったが、その左足のフトモモが大きく斬られた。

 千夜が倒壊したビルの下から普通に出てきて言う。

「甘いわね」

 較は簡単な止血処理だけをして千夜を見る。

「本当に化け物だよね。普通油断を誘う為だけにビルの下敷きにならないよ」

 その言葉に千夜が苦笑する。

「お互い言われなれた言葉よ。行くわよ!」

 動きの鈍った較に間合いを詰める千夜。

 両手を振る較。

『ヘルコンドルツイン』

 両手から放たれたカマイタチは倒壊していないビルに当たり倒壊させる。

「止まると思わないでね!」

 降り注ぐ破片を全て自分の気迫のみで弾き飛ばしながら突進してくる千夜。

 地面を両足で蹴る較。

『タイタン』

 地面に大きな穴が開く。

「これで止め!」

 その穴を飛び越した千夜の剣が較に当たる直前、較は側面にある廃棄ビルに体当たりしてそのまま壁を粉砕して逃れる。

 返す剣で廃棄ビルごと較を斬る千夜。

「浅いわね」

 そう言いながら廃棄ビルを切り裂き続け、粉々にした状態で待ち入った。



「ヤヤ大丈夫?」

 良美は、右腕を半ばまで斬られている較に駆け寄って言う。

「まだ戦えるよ。それよりここから離れて」

 その言葉に驚く良美。

「どうしてよあたしは最後まで見続ける」

 較は苦笑しながら答える。

「だからこそだよ。今は逃げて、もう直ぐ来るからそっからが本番、決着は零時過ぎた時だよ」

 その言葉に良美は頷き、その場を離れていく。

 較は時計を見る。

「まだ二十三時五十分か。残り十分どう稼ごうかな」

 怪我の治療をする為座りながら呟いたその上を強烈な力の塊が通りぬけていく。

「無差別攻撃じゃないよね?」

 較の言葉に答えるように、較の所に突きが迫る。

 較は正面からそれに対して両手を重ねた掌打で対抗する。

『ガイアプレス』

 較は、相手の突きの威力をそのまま受けて後方に飛びのく。



「時間稼ぎされてるわね」

 千夜は較が何がしたいのかを半ば気付いた。

「普通にやって勝てない相手に勝つため、通常と異なる状況を作ろうってつもりね。そしてそれが、川の流れの変化」

 千夜の感覚は、上流で河川の方向が変わりいま自分がいる位置にも流れ込もうと、進んでいることを気付いていた。

「位置的に、ヤヤの方が先に川に飲まれるわね。どうするつもりかしらね?」



「少し早いけどどうにかなるね」

 呟きながら、較が千夜の前に姿を現す。

「川の流れが変わり、ここも川底になりますけど、戦場をかえますか?」

 千夜は揺るがぬ瞳で答える。

「下手に戦いの場所を変えるのは、主義から外れるわ。貴女が何を考えているか解らない。でも正面から戦う以上負けるつもりは無い」

 そして較の背後から激流が迫ってくる。

 較は手を後ろに伸ばし、流れ触れたところで振り上げる。

『リヴァイアサン』

 流れの一部が収束し、まるで蛇の様になって千夜に迫る。

「この程度では私は倒せないわよ!」

 千夜は神威でその水流で発生した蛇を弾き続ける。

『フェニックスウイング』

 較は接近して下方から炎を放つ両手を撃つ。

「その程度の技は通用しないわ!」

 気迫のみで、較の放つ技が押し返される。

 だが、較は諦めず炎を放ち続ける。

 炎はまるで千夜を覆う様になるが、千夜自身には指先程も触れられない。

 しかし、強力な炎は、弾かれ続けるリヴァイアサンの水とぶつかり、水を水蒸気に変化させる。

 較は強烈に地面を蹴り付ける。

『タイタン』

 二人の足元が崩れる。

『イカロス』

 慣性制御で落下力を打ち消すが、千夜は周囲の熱せられた水蒸気が一気に地下の空気で冷まさた事で発生した下降気流に飲み込まれて落下する。

 即座に、気迫の放射で体勢を整える。

「来なさい!」

 千夜にはこの一連のやり取りの目的に予測がついて居た。

「今なら回避は出来ないわよ。貴女の最大の攻撃をあたしに放ちなさい!」

 較はそれに答えるように、普段はしない、長い呪文を唱え続けていた。

『ああ、我等が守護者、全てを切り裂く存在、偉大なりし八百刃の第一の使徒、我が魂の訴えに答え、その力を一時、我に貸し与え給え。白風流終奥義 白牙ビャクガ

 較の右手が白い力に包まれる。

 それを見て千夜が微笑む。

「その年で終奥義を使うなんて、並みの才能じゃないわね。良いでしょうこちらもそれに答えましょう」

 神威に両手を添える千夜。

『おお、我等が守護者、闘気を統べる存在、偉大なりし八百刃の使徒、我が闘気を全て食らいて、その力を示したまえ。神谷終奥義、闘威狼トウイロウ

 千夜の全ての闘気が神威に集束される。

 そして空中で、較の右手に籠められた白い力と、千夜の全ての闘気が篭った神威がぶつかり合った。



 大きく弾き飛ばされたのは較であった。

 全身に大きな傷を作り、上空に打ち上げられる較。

「よくやったわね。でもこれが実力差と言うものよ」

 ほぼ無傷な状態で落下を続ける千夜。

 このままなら問題なく着地してお終いだろう。

 その時、較の口から呪文が紡がれる。

『ああ、我等が守護者、』

 目を見開く千夜。

「そんなまさか……」

『全てを切り裂く存在、』

 較の落下速度が加速する。

「終奥義は一発でも命に関る大技よ、それを」

『偉大なりし八百刃の第一の使徒、』

 較の左手に白い力が集約し始める。

「連発するなんて、死ぬ気!」

『我が魂の訴えに答え、』

 必死に闘気を練り込む千夜。

『その力を一時、我に貸し与え給え』

 較と千夜の視線が交わる。

『白牙!』

 較の左手に籠められた白い力が、千夜の神威とぶつかる。

 落下速度が加速し、地下室の床に叩きつけられる千夜。

 次の瞬間、千夜の神威が砕けた。



 川の水が物凄い勢いで較と千夜が落ちた地下室に流れ込んでいく。

 その中、較と千夜が相対して居た。

「凄まじい執念ね。まさか終奥義の連発なんて。最初の技はこちらの全力を引っ張り出す為の囮だった訳ね」

 較は答えず、ゆっくりと千夜に近づく。

「魂を、命を削る終奥義の連発し、なおを立ちあがるその強い意志こそが白風の証って所ね」

 そう言いながら千夜は中和剤を取り出す。

「貴女の勝ちよ」

 較がその中和剤を受け取ると、千夜が倒れる。

 続くように較も倒れた。



 川の水は二人を直ぐにも飲み込もうとしていた。

「ヤヤ今助けに行くからね!」

 駆け出そうとした良美にミラーが言う。

「無駄よ、貴女が行った所で何もならないわ。まー無駄な足掻きも観客が喜んでくれそうだけどね」

 殴ろうと振り返るが今はそんな時では無い事を思い出して、振り返ったとき、それが起こった。

『ナーガ』

 地面がせり上がり、川の流れを変えたのだ。

 そして千夜を背中に、較を胸に抱きしめて焔が現れる。

「エンおじさん?」

 驚く良美。

「そんな馬鹿な貴方は今頃、地球の裏側でバトルしている筈では……」

 ミラーが驚いた顔になる。

「新しい娘に会う為に、八子さんに頼んで近道をしたんだよ」

 その言葉に千夜が焔の背中から降りて言う。

「異界人、八子の力を借りて、ワープしたって所ね」

 頷く焔。

「まー良いわ、全て勝負の後の余興でしかないのだから」

 そう言ってその場から離れようとするミラーに焔が言う。

「ヤヤが闘士を止めると言った時には素直に応じるのだな。さもなければ私を敵に回すことに成る」

 ミラーが憎憎し気な目で焔を見た後、今度こそ、去って行った。

「きっとこれでヤヤの呪縛も解けただろう」

 焔は自分の愛娘を見つめんがら呟いた。



 クラスで行ったクリスマスパーティーが終わり、較は、連れて来たが、眠ってしまった小較を背負いながら帰り道を歩いていた。

 そんな較に良美が言う。

「ヤヤは闘士止めて良かったの?」

 較があっさり頷く。

「これ以上闘士やっていても得るものは無いからね。ただ強い奴と戦いたいだけなら普通に戦えばいい。今回みたいな事があれば邪魔にも成るから丁度良かったんだよ」

 納得した顔になる良美。

「でも意外だったわね。千夜さんと剣一郎が付き合うなんて」

 強く頷く較。

「本当だよ、剣姫の見舞いに来た千夜さんが、剣一郎に一目ぼれして、剣一郎も千夜さんの事を好きになるのは意外すぎだよ」

「剣姫も、相手が千夜さんだと納得したみたいだし、残るは実家の父親の説得だけだって話だよな」

 良美も続けた。

 そして較が言う。

「あちきの拳は敵を作るだけだと思っていたよ。でも違うんだよね?」

 良美が胸を張って言う。

「当然、小較を救ったのも、剣一郎達を結びつけたのも、そしてあたしを助けてくれたのもその拳なんだから」

「ヤヤお姉ちゃんが最強だよ」

 そんな寝言を言う小較。

「最強を目指すのは止めないでも、組織に頼るのは止める。自分の足で確実に一歩一歩進んでいくよ」

 較が拳を天に突きつけて誓いをたてた。

 そして夜空に流れ星が流れていった。



 横浜港に泊る豪華客船その最深部。

「遂に必要な情報が全て集まったわ、お父様」

 そう言って、中央に座る老人にしなだれかかるミラー。

「ヤヤの戦闘データを元に作成した真の十三闘神の前には誰も、例え鬼神も勝てはしないわ」

 老人は強く頷く。

「あの時、目に焼け付けた最強の力。それを越すものを我が手に収める事が出来る。その為の我が人生」

 ミラーは笑みを浮かべて言う。

「お父様の十三闘神こそが世界最強である事を示す時が来たのです」

 そして数十枚の写真が地面にばら撒かれる。

「好きな対戦相手を選びなさい。誰でも倒せば特別ボーナスを支払うわよ」

 十三の人影はその写真を掴み、四人を残して消えていく。

「貴方達には、用済みになったゴミの始末をお願いするわ」

 その言葉に、笑みを浮かべる男達だった。

「さーこれからが真のバトルの始まりよ!」

 高笑いをするミラーであった。

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