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最強を目指す者  作者: 鈴神楽
死闘編
35/45

復讐を誓う者そして

復讐を誓う剣姫、そして最強の敵が

 神谷家道場。

「普通の人間なんてこんなもんだな」

 十二歳の少年が剣姫の前に悠然と立っていた。

「まだです」

 必死に刀を構える剣姫。

「いい加減解れよ、お前等、普通の人間が八刃の人間に勝つのは無理だって真理をな」

 少年の言葉に剣姫は強い殺気で答える。

「私は、お兄様の仇、ヤヤを許さない!」

 居合い抜きをし、その剣先から放たれた気の暫撃が少年の剣を砕き、少年に迫った。

 少年は咄嗟にバックステップでかわす。

「やったなー、止めを……」

 気合を込めて攻撃しようとした所で、一人の鋭い眼差しを持つ女性に止められる。

「そこまでよ、百剣オケン

千夜チヤさん、しかしこのままでは俺の気が……」

 百剣と呼ばれた少年の言葉は中断された。

 千夜の睨み一つで何も言えなくなったのだ。

 千夜は、剣姫に近づき言う。

「剣姫さん、貴女があのヤヤに勝とうと思ったら今の一撃を急所に打ち込むしかないわ」

 壁際にある較の写真を見て言う。

「白風較。一対一の対決だったら彼女に勝てる人間は十も居ないはずよ。百剣だったら三分以内に戦闘不能にされる。正直、百剣に勝てない貴女の勝率は一%未満ね」

 剣姫は頷くしかない。

「解っています。でも私は勝たないといけないんです」

 その言葉に千夜は頷く。

「だったとしたら貴女に出来る事は、その技を出来るだけ強くするだけ。技が通じないときの事なんて考えないで最初の一撃全てをかけるしかないわね」

 姫子は千夜を見つめて言う。

「でもどうして私の手伝いをしてくれるのですか?」

 その言葉に千夜は普通に言う。

「貴女が一文字家の人間だからよ。あたし達にとっては、血縁関係がある人間よ。第一、剣一ケンイチおじいさんは、八刃の血が流れてないけど、剣術の実力だけだったら最高だった。私も、剣一おじいさんには剣術の基礎を習ったの。恩返しだと思って」

「でも一文字家では貴方達は宿敵だと言われていました」

 剣姫の言葉に千夜が苦笑する。

「そうみたいね、でもあたし達がそれに対抗する必要は全く無いわ」

 大きな溜息を吐く剣姫。

「詰まり、私達の一人相撲だったわけですね」

「無駄じゃなかったでしょ? 貴女の技はその対抗意識による積み重ねから生まれ、それでお兄さんの仇をとれるのだから」

 それには剣姫も強く頷く。

「私は絶対にヤヤを殺します」



「それでは、次の対戦相手だけど、この子よ?」

 ミラーが差し出したのは剣姫の写真だった。

「どんな細工があるの?」

 較の言葉にミラーが尋ね返す。

「どうしてそんな事を聞くの?」

「剣姫の実力じゃあちきには勝てない。そんな試合を組むのは不自然だからだよ」

 ミラーは微笑する。

「簡単よ、このお嬢さんは兄の復習の為、多分死んでも貴女との戦いを止めない。それこそ本気で死なない限り戦い続けるわ、殺さずを基本方針にする貴女が人を殺すシーンってそれだけでも客が喜ぶのよ」

 隣で聞いていた良美や小較までミラーを睨みつける。

「それじゃあ楽しいバトルを期待してるわ」

 そして去っていくミラー。

 較はミラーが指示した場所のチェックを始める。

「気に入らないなー」

 その言葉に良美が言う。

「本当に嫌なやり方だね!」

 頷く良美に較が首を横に振る。

「そっちもそうだけど問題は場所だよ」

 地図で問題の場所を指差す。

「どういうこと?」

 良美が質問すると小較が言う。

「随分人が住んでいる所から離れるた所でやるんですね?」

 その言葉に較が頷く。

「問題はそこ、特殊な条件が必要な闘士で無い場合、何処でもいい。逆言えば、通信設備等が設置しやすい所が好まれる。なのに、電気もろくすっぽ通っていない場所の地下が選ばれるなんて異常だよ。地下じゃ、映像をリアルタイムで送るにも、地上に中継装置を設置する必要がある。必要性があるのならともかくそうでない今回なんで地下でやるかが問題だね」

 良美が言う。

「詰まり、ミラーの言葉は額面通りじゃないって事?」

 頷く較。

「地下でなければいけない理由があるんだよ。すると一番可能性があるのは……」



 較と良美はバトルを行う、河川付近の工場地帯があった場所の地下施設に入っていく。

 そしてその最深部に剣姫が居た。

「待っていたわ」

 居合いの構えのまま動かない剣姫。

「大人しく中和剤を渡す気は無い?」

 較の言葉に剣姫は首を横に振る。

「欲しかったら私を殺すことです」

 一気に高まる緊張。

 較は、手で良美に下がるように指示する。

 不用意に近づく愚公はしないそして、緊張が高まり続け、水滴が床に落ちたその瞬間、剣姫の刀が抜かれる。

 届かない間合いの居合い。

 しかしそこから放たれた気の塊は鋭い刀身と変化して較に迫る。

 較は両手を手首にところでクロスして気の刀身に向かって振り下ろす。

『オーディーンソードブレイカー』

 気の刀身と較の手刀が当たると同時にもう一方の手刀が横に振られる事で気の刀身が完全に粉砕された。

 すぐさまもう一度居合いの構いを取る剣姫。

「いまの一撃は剣一郎に迫る威力があったよ。それでもそれだけじゃあちきには勝てない。総合力の差は詰められて居ない」

「それでも諦めない!」

 そう叫び再び居合いを行う剣姫。

 そしてその気の刀身は較に命中した。

「やられたよ」

 わき腹から出血する較。

「卑怯だよ!」

 良美が叫ぶ。

 言葉を無くす剣姫。

 そして較は、一本の刀を白刃取りしていた。

 その刀は剣一郎が握っていた。

「お兄様!」

 剣姫の声が地下を振るわせる。



 較の鋭い蹴りが剣一郎に放たれるが、剣一郎は平然と刀を捨てて飛びのく。

 そして壁に隠してあった新しい刀を抜く。

「どういうことだよ、剣一郎は死んだっていったじゃん!」

 良美が剣姫に言う。

 剣姫は青い顔で答える。

「確かにお兄様は拳銃で撃たれて死にました。確かです」

 そういって、無言の剣一郎をみる剣姫。

 そして較が言う。

「それが一番腑に落ちなかったんだけどね。はっきりいって組織がA級闘士を拳銃で撃たれただけで殺させるまねしない。それもあちきとの戦いの直後だよ、次の試合の為に最善の治療をした筈なのに死ぬなんて、おかしかったんだよ」

 その時、ミラーの声が地下に響く。

『その通りよ。たかが小娘の復讐なんかでA級闘士を失うわけには行かないわ。だから治療をしたの。そしたら幸運な事に記憶障害を起こしてくれたの。抵抗意思が戻る前に薬と催眠術で組織に忠実な闘士になってもらったわ』

 剣姫が怒鳴る。

「どうして黙っていた!」

『万が一にも記憶障害が回復されても困るから。この計画に丁度良かったのよ、貴女相手と油断したヤヤを倒すチャンスを作るのに』

 この場に居た誰もが怒りを覚えた。

 そして、操り人形になった剣一郎が居合いの構えを取る。

「お兄様」

 近寄ろうとする剣姫を較が押し止める。

「良美の所に行ってて」

「お兄様をほっておけません」

 その言葉に較が言う。

「あちきが剣一郎を倒して、正気に戻させるから安心して」

「でもそんな傷でお兄様に勝てるわけは無いわ」

 剣姫の言葉に較が言う。

「貴女のお兄さんの実力があんな物だと思う?」

 その言葉に剣姫が戸惑う。

「本当の剣一郎に不意打ちされてたらあちきは死んでた。でもあちきが生きている。どんなに体が剣一郎だろーが、あそこには闘士一文字剣一郎は居ない。だから勝って、元に戻すなんて朝飯前!」

 その言葉に剣姫は頷く。

 そして剣一郎の居合いが放たれるが、較はあっさりかわす。

 次々に放たれる居合い。

 較はその全てを避ける。

『そんな、剣姫の居合いの何倍のスピードの無間合いの居合いを避け続けるなんて』

 ミラーが驚いた声を出す。

 そして較が宣言する。

「冗談は止めてよ、こんな物が剣一郎の無間合いの居合いな訳ないじゃん。どんなに形が近くっても強い闘志がない一撃は怖くも何とも無いよ!」

 本物の刀身を避けて較は剣一郎の胸に掌を当てる。

「正気に戻れ剣一郎。バハムートブレス」

 大きく弾き跳ぶ剣一郎。

「お兄様!」

 剣姫が叫ぶ。

 すると剣一郎が目を開けて言う。

「今剣姫の声が聞けた気がしたぞ」

 慌てて駆け寄る剣姫。

「お兄様。元に戻ったんですね」

 そして良美が言う。

「折角の準備だけど必要ないみたいだね」

 較が首を横に振る。

「これからだよ」

 そしてミラーの声がする。

『さーこの試合の最終試練よ、今からその上部を爆発する、完全爆発まで三分地上にもどれるかしら』

 その言葉に較が舌打ちをする。

「それでお客様が納得すると?」

『ええ、最初からその予定だもの。簡単に勝利し、油断したヤヤが地上まで逃げられるかどうかそれがこのゲームの真の賭けだから。ほら最初の爆発はもう始まっているわよ』

 爆発の音がし始める。

「立てる剣一郎!」

 較の言葉に剣一郎は首を横に振る。

「無理だな。拙者を残して行くんだな。すまぬが剣姫を頼む」

 その言葉に剣姫が言う。

「私も残ります!」

 首を横に振る。

「行くんだ!」

「嫌です!」

 そんな押し問答が続くと思ったとき、較が良美が背負ったリュックからなにか不思議な器具を取り出して言う。

「これは対衝撃機能があるテント。最悪ここが潰される事を考えて、剣姫を含めて三人で入れるのを持ってきていたんだけどあなたが入るスペースは無い。だから選択肢は二つ、時間までに地上に行くか? ここで助けを待つか? どっちにする」

 それに対して剣姫が言う。

「お兄様と残ります!」

「剣姫」

 剣一郎の言葉に較が言う。

「そっちの方が安全かもよ、行くよ良美」

「OK、較」

 較と良美は、対衝撃テントを置いて、走り出した。

「剣姫これから指示をだす、少しでもテントの負担を減らさないと生き残るのは難しい」

「はいお兄様」

 そして二人も行動を開始した。



 走り出した較たちだが、残念ながら道のりは簡単ではなかった。

「もう道が塞がってるじゃない!」

 階段が瓦礫で塞がってるの見て叫ぶ良美だったが、較は両手をつける。

『ツインテール』

 一撃で瓦礫を吹っ飛ばすと階段を駆け上る。



 較と良美が地上に出たとき、更なる爆発が起こった。

「お見事! 制限時間内に脱出出来たわね。でも中和剤はまだ剣姫さんが持っている。そして剣姫さんはこの地下に埋まってるのよね」

 ミラーが近づいてきて言う。

「掘り返せばいいだけだよ。あのテントは特別性だから上手く行けば二人とも無事に助けだせる」

 較の言葉にミラーが言う。

「いい忘れたんだけど、ここはあと一時間で、川の底になるわ」

 その言葉に驚く較と良美。

「どういうこと?」

 ミラーが笑顔で答える。

「簡単よ、直ぐ側に川があるのだけどそこが台風の度に氾濫を起こすので、川幅を広げる計画があって、ここもその計画範囲なの。さっきの爆発も近くの高い建物を壊す為の物なのよ」

 較の拳が近場の建物の瓦礫を粉砕する。

「そんな大工事が直ぐに行われるわけない。第一、瓦礫も始末してないでそんな事する訳ないでしょうが!」

 その言葉にミラーが笑顔で答える。

「ここでバトルするので無理やり止めてたの。今日中に川幅が変わらないと契約違反になるからしかたなくなのよ」

 そして時計を見ると二十三時を示していた。

「あちきに対する嫌がらせだけでこんな事するの?」

 その言葉にミラーが笑顔のまま何も答えない。

「ヤヤどうするの?」

 良美の問いに較がその場を見る。

「あちきの力じゃ一時間で堀おこすなんて出来ない。だれか助っ人に……」

 その時、物凄い気迫が辺りを覆い、次の瞬間それが収束して地面を抉る。

 それはたった一発で剣一郎達が居る階まで道を作った。

 振り返るとそこには千夜が居た。

「ここで殺させたくないからね」

「感謝します千夜さん」

 裂け目を降りて、剣一郎と剣姫を救い出す較であった。



 テントのお蔭で致命傷は避けられたものの、かなりの負傷を負った剣姫は意識を失っていた。

 剣一郎が中和剤を渡す。

「これは今回の借りを返す為に素直に渡す。だが次回は拙者が勝つ」

 そう言って、剣姫をつれて去っていく剣一郎。

 戻ってきた較に良美が近づきたずねる。

「あの人誰?」

 較は千夜を見ながら言う。

「現在神谷最強の力を持つ人。意志力で全てのものを打ち砕く最強の神威カムイの使い手。そして十三闘神の一人、剣神、エターナルナイト」

 ミラーが不満気に言う。

「予定より早くないですか?」

 その言葉に対して千夜が答える。

「剣姫さんはあたしの教えを受けた弟子みたいなものですから結果が気になったのよ。いけない?」

 微笑む千夜にミラーが諦めた表情になって言う。

「いいでしょう単なる余興でしたから。本題に入りましょう、さー最後の戦いを始めて下さい」

 その言葉に良美が怒鳴る。

「連戦ってどういうつもり、まだ三日も期限まで残ってるのよ!」

 そうなのである、較はその為にいままで無理にも試合を組んできたのだ。

「ごめんなさいね、約三十日なの、体質によっては二日三日早まる事があるのよ。それでも試合を延長する?」

「本気で最低な性格だね」

 そう言いながら千夜の方を向く較。

「ヤヤ、せめて明日にするよ!」

 良美の言葉に較が頭を横に振る。

「無駄だよ、やろう千夜さん」

 その言葉に千夜も頷く。

「そうね、戦うって決まった以上、やるしかないわよね」

 最後の戦いが始まる。

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