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最強を目指す者  作者: 鈴神楽
死闘編
32/45

騙しと作戦と戦略

三度目の登場の女郎蜘蛛、そしてその主人糸神。十三闘士、最強の策士の頭にヤヤの頭は勝るか?

 ゴージャスな洋館のリビング

「今までやられた借りを全てその体で教えてあげる!」

 女郎蜘蛛のユーリの言葉に較が溜息を吐く。

「まだ懲りていないの?」

 その言葉にユーリは隣に立つ女性に寄りかかり言う。

「今度はこの前みたいに行かないわ、ご主人様が居るんだから」

 ユーリにご主人様と呼ばれた女性は微笑み言う。

「ペットの遊びに付き合ってあげるのもご主人様の義務よね。大人しくしてれば、直ぐ気持ちよくしてあげるわ」

 そう言って、指を動かした時、較の頬に切り傷が出来た。

 較はその傷を止血しながら言う。

「残念ながらあちきはアブノーマルな趣味を持つつもりは無いから暴れさせてもらうよ」



「次の対戦相手は、糸神、ユリーアよ。招待状を預かってきてるわ」

 ミラーはそう言って、一枚の封筒を較に渡す。

 較はその場で封筒を開ける。

『可愛い可愛いヤヤちゃん、今度こそ貴女をあたしのおもちゃにしてあげる。だって今回はご主人様が手伝って下さるのだから絶対よ』

 較は指を擦り摩擦熱を増幅させて炎を生み出して手紙を燃やす。

「まさかあのユーリが糸神の関係者だったんなんて思わなかったよ」

 較の言葉にミラーが苦笑する。

「そうでなければ、あんなお粗末な闘士が貴女と対戦する十二人の一人に選ばれる訳ないわよ」

「なるほどね、十三闘士の中でも一番の策士って有名な糸神を引っ張り出す為の布石だった訳だ」

 較はそう言いながら、今後の展開を考える。

「今回ばかり勝てないわね。実力が勝る上、相手は頭で敵を倒すタイプだもの。今まで見たいな事にはならないわよ」

 そう言って、余裕の笑みを浮かべるミラーだった。



「どうして、ついて行ったら駄目なの!」

 例如くごねる良美に較が言う。

「相手は他の十三闘神と違って平気で良美を利用してくるの。十三闘神との戦いじゃ良美を庇えないから駄目だよ」

 口を膨らませる良美。

「解ったよ」

 家に戻って行く良美。

「今日は何時もと違って聞き訳が良いね」

 そう言って、ユリーアの洋館に向かって移動する。

 そして裏口から出た良美が、密かに(良美の中では)追跡を開始した。



 そして較は、ユリーアとの会話の後、即座に飛び掛る。

「せっかちね。でも我慢しないと気持ちよくならないわよ!」

 ユリーアの指の動きに合わせて気が籠められた無数の糸が較に襲い掛かる。

 較はそれを予測していた。

『イカロス』

 空中で方向転換して、天井に着地すると、ユリーアでなくユーリの方に飛び掛る。

「嘘!」

 慌てるユーリ。

 較はあっさりユーリの後ろに回りこみ、腕を取る。

 ユリーアが微笑を浮かべる。

「まさか人質に成ると思ってる?」

 その言葉に較も笑顔で答える。

「まさか」

 そして一人、ビクビクするユーリ。

「何をするつもり!」

 較はユーリを軽く前に突き出す。

『イカロスシューズ』

 較はユーリを蹴り飛ばす。

 ユーリは、床に水平にユリーアに向かって飛んでいき、較はその後ろに隠れて進む。

「流石ね。そうすれば、少なくとも接近できるって筋書きね、でもまだ甘いわね」

 較は直感だけでユーリを横に蹴飛ばしその反動を使い、自分も反対に飛びのく。

「痛い」

 そう叫ぶ片足が無くなったユーリ。

「視界が塞がれるから、盾を貫通する攻撃は避け辛いのよ」

 笑顔のままそう言うユリーア。

 その間も糸での攻撃は続く。

 較は最低限の回避行動をとるが、確実に後退させられていた。

「さて何時まで持つかしら」

 較は床を蹴りつける。

『タイタン』

 床が崩れ、その場所に巡らせた糸が一斉に緩む。

 崩れ落ちていく床を足場に、飛ぶように駆ける較。

「だから甘いわ」

 直進する糸が較を射抜く。

 致命傷には程遠いが、動きを止めている間に床は完全に崩れ、地下に戦闘フィールドは移っていた。

「床を崩せば確かに糸が緩み、隙が出来るかもしれないわね。でもそれは貴女の行動範囲を狭める事にもなるのよ。行動範囲が絞れれば回避不能の様に糸を撃てば良いそれだけよ」

「簡単に言うけど、あちきの回避不能範囲全てに気を籠めた糸を撃つなんて離れ業は十三闘神でも無いと出来ないよ」

 較の言葉にユリーアが頷く。

「そうね。でも今貴女が戦ってるのはその十三闘神なのよ」

 二人は視線を合わせる。

 そして較は呼吸を整えて言う。

「次で勝負が決まる」

「勝つとは言わないのね?」

 ユリーアの言葉に較が頷く。

「賭けだから、失敗したらあちきが負けるだけ」

 そして床を蹴りつける較。

『タイタンキック』

 床が大きく砕けその破片が空中に飛ぶ。

『ガルーダウイング』

 較は両手の動きで風を作り、破片同士ぶつかり、砕け無数の塵となり視界を塞ぐ。

「なるほど、視界が利かなければ、糸を防げると思ったのね。残念だけど私の結界はそんな甘いものではありませんよ!」

 笑顔でそう言うユリーア。

『フェニックスウイング』

 較の両手から放たれた炎は、視界を塞ぐ程散らばった埃に達し、粉塵爆発を起こす。

 爆発が収まった時壁にめり込む糸で出来た繭があった。

 繭が解け、中からユリーアが現れる。

「まさか、あそこで粉塵爆発に繋げるとは少し予想外でした」

 少し意外そうな顔をするが、直ぐに笑顔に戻り言う。

「しかし、目的は達成できませんでしたねヤヤ」

 拳の射程距離まで接近した較を見下すユリーアが指を動かした時、今さっきまでユリーアを覆っていた糸が較を締め付ける。

「糸の結界が無くてもこの位は出来るわ」

 まっすぐユリーアを見て較が言う。

「賭けには勝ったよ」

 較は両手に握ったユリーアのコントロールを外れた糸に力を込めた。

『メデューサ!』

 ユリーアの腕に較が操る糸が絡みつき、骨を砕いた。

「ぎゃー!」

 ユリーアが叫び、較を締め付けていた糸も外れ、較は開放される。

 しかし、較もまた爆発の中を進んで来たダメージから床に膝を着く。

 そして先に立ち上がったのは較だった。

「大人しく中和剤出す気ある?」

 その言葉にユリーアが笑みを浮かべる。

「奥の手は最後までとっとくものよ。ユーリ!」

「はい、ご主人様」

 片足を失った、ユーリが縛られていた良美を連れてくる。

「馬鹿な子よね、折角貴女が安全な様に家で待ってるように言ったのに付いて来るんだから」

 微笑むユリーアに較は平然と答える。

「でも、家に居ても拉致していたでしょ?」

 その声にユリーアの表情が硬くなる。

「まさか……」

 較はユリーアに近づくとユーリが叫ぶ。

「貴女の恋人がどうなってもいいの!」

 較はそれに対して半眼になって抗議する。

「一緒にしないでよ。良美とは親友なだけだよ」

 顔を引きつらせるユリーア。

「いつ入れ替わったの?」

 その言葉に較が溜息を吐く。

「こんな作戦を良美が納得しないから、家で気絶させて縛って出てきたよ」

「やられたわ」

 ユリーアは諦めた表情になる。

「胸のポケットに入ってるわ」

 そして較は中和剤を取る。

 一人事態が理解できていないユーリがパニックになって叫ぶ。

「本当に殺すわよ!」

 それに対して、較が平然と言う。

「栗菜さんもう良いですよ」

 その言葉に答えるように、良美の変装をしていた栗菜が片足を失って戦闘力をなくしたユーリを叩きのめす。

「これで示談金の借りはなしでいいんですよね?」

 栗菜の言葉に頷く較であった。



 そしてその頃白風家の押入れでは、

「ヤヤ許さないんだからね!」

 良美が暴れまくっていた。



 こうして較は八つ目の中和剤候補を手に入れる事に成功した。

 残る中和剤候補は四個。

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