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最強を目指す者  作者: 鈴神楽
死闘編
30/45

サーキットを駆る、音速の闘士

十三闘神との連戦。音速を超える者との戦いが始まる

 サーキットの中央。

「ねーねーヤヤ、ここってF1のレースやるところだよね」

「そうだよ」

 ギャラリー席から嬉しそうに言う良美に、較は、目を閉じたまま答える。

 そして、較は、大きく飛びのく。

 較が居た所を音速に近いスピードで抜けていく、大型ナイフ。

 較の右腕に大きな傷跡が出来る。

「十三闘士最速は、伊達じゃないね」

 較は、呼吸を整える。

「次は反撃するよ!」



「ヤヤ、大丈夫?」

 珍しく起きて来ない較を良美が部屋まで起こしに来て、言った。

「連戦で疲れてるだけ」

 そう言いながら立ち上がる較であったが、左腕を全然動かしていない。

「左腕どうかしたの?」

 良美の言葉に苦笑するし較が言う。

「この前、左腕をホープに撃たれたからね。流石に直り辛い所までダメージ負ったから、ラクシャミを使っても直ぐには直らないよ」

 何とも言えない表情で良美が尋ねる。

「痛い、ヤヤ?」

 笑顔で較が答える。

「痛いけど、昔ほどじゃない」

 その言葉に良美が首を傾げる。

「昔って何時のこと?」

 較は腹を指差して言う。

「前にホープに内臓まで達する攻撃を食らった時は、物凄く痛かった。今でも覚えてる。三日三晩うなされてたからね」

「でもそれって負けたからじゃない?」

 良美も空手をやっているので身に覚えがあるのか、そう答えたが、較が首を横に振る。

「違うよ。あの傷は何も残さない痛みだけど、この傷はヨシとの約束を守る為に出来た傷だから平気だよ。逆に嬉しいかな?」

 その言葉に良美は少し引く。

「ヤヤってSM趣味?」

 少し沈黙の後、較は、一言。

「左手が痛いから、ご飯は自分で作ってね」

「えー何で!」

 少し拗ねる較と文句を言う良美であった。



「それで、なんで姫子がご飯作ってるの?」

 お腹が空いたので降りてきた較の視界には、何故か料理を作る姫子が居た。

「だってヤヤが作ってくれないんだもん。丁度来たから作らせたの」

 較が、耳を澄ますと、姫子の呟きが聞こえてくる。

「何であたしが、十四の小娘に命令されてご飯を作らないといけないのよ。大体、トップエージェントだっていって好き勝手やってくれるミラーがいけないのよ……」

 ずっと愚痴を言っていた。

 較はその背後に気配も無く近づき一言。

「人の家のキッチンに主に無断で入ってただで済むと思う?」

 その言葉に飛び上がる姫子。

「ごめんなさいごめんなさい。良美さんに頼まれて仕方なくなんです!」

 必死に頭を下げる姫子。

「あんまり汚さないでね。それとあちきの分もお願い」

 較の言葉に安堵の息を吐く姫子だったが、

「言っとくけど不味い物だしたら、寿命がそれだけ縮むと思ってね」

 較の言葉に固まる姫子。



「それで今度の対戦は今夜な訳ね?」

 較が、姫子が神経をすり減らせて作った、家庭料理ぽい食事を食べながら言う。

「はい。対戦相手は、騎神、キッドです」

 エプロンを着た姫子が答える。

「ヤヤ大丈夫なの?」

 良美が心配する。

「後になって期間が無いって言いたくないから、頑張るよ」

 そう言ってから、お味噌汁をすする較。

「そう。それでその騎神、キッドってどんな奴?」

 聞いた後、アジの開きを骨ごとかぶりつく良美。

「バイク乗りで、音速に近いスピードで動きながら、自慢のナイフで敵を切り裂く。高速で動く上、バイクに力を込めて鉄壁にする難敵だよ。まー十三闘神で難敵じゃない人なんて居ないけどね。焦げ目多すぎだよ。癌に成りたくなかったらもう少し丁寧に焼きなよ」

 目玉焼きのひっくり返し確認しながら較が答える。

「すいません。以後気を付けます!」

 必死に頭を下げる姫子。

「うーん。やっぱヤヤの方が料理上手」

 呑気に言う良美に、殺意すら覚える姫子であった。



「傷大丈夫?」

 サーキットのギャラリーの良美が聞くと、較は大きく頷く。

「反応出来たから大丈夫。でも少し静かにしてて」

 その言葉に良美が黙る。

 再び目を瞑る較。

 広いサーキットの中を十三闘神の一人、騎神、キッドの駆るバイクが目にも止まらないスピードで疾走している。

「音速より遅いのが救いだよね」

 そう呟きながらも、なんの予兆も無く、直角にカーブしたキッドを向かい打つ様に肘を出す較。

『ポセイドンランス!』

 電撃を放つ肘の一撃がキッドのナイフとぶつかった。

 しかし、ナイフは較の肘を斬らず、較を大きく弾き飛ばした。

 吹っ飛ばされた較が慌てて体制を整えようとした時、その背中をキッドのナイフが斬る。

 地面に倒れ込む較。

「ヤヤ!」

 良美が叫ぶと、較は立ち上がる。

『お前の戦闘シーンは見せてもらった。お前は自分へのダメージを覚悟でこっちに攻撃を封じる作戦を使っている。十三闘神相手ではダメージ無く勝つのは無理と判断したからだろう。今も自分の肘が斬られても電撃に因るダメージを与えるつもりだったんだろう』

 キッドの渋い中年男性の様な声が、サーキットのスピーカーから聞こえてくる。

『だが、十三闘神を舐めるな、そんな手が通じ続ける訳は無かろう。お前等鬼は、人を馬鹿にしている。そんな鬼を私が今日退治してやる』

 高速に迫ってくるキッドの攻撃を紙一重でかわす較だったが、何かに巻き込まれた様に吹っ飛ぶ。

「今の何?」

 良美が驚く。

 その良美に対して、較が立ち上がり答える。

「ソニックブーム。音速を超えると発生する衝撃波だよ。まさかあちき相手に、そんな限界を超す技を使うなんて思わなかったよ」

 しっかりとした口調だが、明らかにダメージは大きい様だ。

『鬼を殺す為に躊躇はしていられないからな!』

 そして再び迫ってくるキッド。

 較は地面を蹴りつける。

『タイタン!』

 地面に衝撃波が走る。

『そんな子供騙しが通じると思うか!』

 キッドの直進は止まらない。

 較は大きく避けるが、ソニックブームで弾き飛ばされる。

 較は今度は足から着地するがよろける。

 キッドは、サーキットのコースを走りどんどん加速し、再度音速に達し、攻撃を仕掛けてくる。

『タイタン』

 較は再度、衝撃波を放つ。

『無駄だ!』

 さっきと同じ展開になり、弾き飛ばされる較。



「ヤヤ、どうしたの?」

 さっきから同じ展開で、弾き飛ばされ続ける較に良美が眉を顰める。

『幾らやっても無駄だ!』

 キッドが十数回目の攻撃に入る。

 しかし、今度は較はタイタンを、地面を走る衝撃波を放たない。

『諦めたか!』

 キッドのナイフが較の首を狙う。

白地鎖ハクチサ

 キッドがバイクごと地面に縛り付けられる。

 較は大きく膝を着く。

「上手くいったみたいだね」

『何が起こったんだ!』

 キッドの困惑の声がサーキットに響く。

 較は拳を握り締めて残りの力を全て集める。

「今のは、古流にある、相手の動きを封じる技だよ。本格的に修行していないあちきじゃ、タイタンで下準備をしないと出来ないけどね」

『無駄な足掻きをしていた訳じゃないと言うのか!』

 キッドの言葉に頷く較。

「はっきりいって一か八かの賭けだった。古流の技を、それも十三闘神の貴方にかけるんだから。でも賭けに勝ったね。貴方がスピードと引き換えに防御力を落としてくれたから」

 その一言にキッドは言葉を詰まらせた。

 そして搾り出すように言う。

『詰まり私はあせり過ぎたという事か?』

 較は強く頷き、拳を振り下ろし、バイクを粉砕し、そこで力尽きて倒れる。

「ヤヤ!」

 慌てて駆け寄る良美。

「大丈夫。目を覚まして!」

 必死に問いかけるが、較は目を開けない。

 その時、キッドが立ち上がる。

 良美は較の前に立ちキッドを睨みつける。

「ヤヤにはこれ以上、近づけさせないよ!」

 キッドはフルフェイスのヘルメットを脱ぐ。

 その下から、上に超が付く金髪の美女の顔が出てきた。

「バイクを壊された時点で私の負けよ」

 そう言って中和剤を投げ渡すと、そのまま出口に向かっていく。

「男に負けない為、色々頑張った。男の十三闘神を負かしたヤヤを倒せば、男より強いって証明になるかと思ったんだけどね」

 そこで苦笑する。

「でもまだまだ甘いわね勝てた勝負を焦りから落とすんだから。修行のし直しよ」

 去っていくキッド。

 そんな後ろ姿を見ながら良美が言う。

「……カッコイイ」

 何とか目を開けた較がそんな良美に言う。

「出来たら肩貸して欲しいんだけど」

「ごめん!」

 慌てて駆け寄る良美であった。



 こうして較は六つ目の中和剤候補を手に入れる事に成功した。

 残る中和剤候補は六個。

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