日常と戦闘の狭間
渋谷センター街で静かに行われるバトル
渋谷のセンター街にあるゲームセンター
パンチゲーム東斗の拳をやる少女がいた。
「終わりだ馬王!」
フィニッシュの一撃を華麗に決める良美。
「ニューレコードだね」
較の言葉に周りの観衆もざわめく。
「そっちはどう?」
較の両手には、山の様にUFOキャッチャーでとったぬいぐるみがあった。
「取敢えず、目的の物は全部ゲットしたよ。後は素敵な出会いを求めて流離うだけだよ」
大きく溜息を吐く良美。
「何時か寝る所無くなるぞ」
「ぬいぐるみに埋もれて寝るから良いもん」
道路に出た途端較がこける。
「何やってるんだ?」
「ぬいぐるみで下が見えなかったの」
再び大きな溜息を吐く良美。
「ねーねー近くにチョコクロワッサンが美味しい店あるんだ食べに行かない?」
起き上がり様に較が言うと良美は少し悩んでから
「まー夕飯までは時間があるから良いか」
「そこアイスフロートも美味しんだよ」
そして二人がその場を離れるが、
「おい、これって銃弾じゃないか?」
「まさか」
「いや本物だぜ」
較が立っていた直ぐ後の壁にめり込んだ銃弾に人が集まっていく。
男は笑っていた。
「楽しいねー、あんな何にも知らない様な幼女を殺せるんだから」
ライフルを構え直しコーヒーショップに入って行った較を見る。
「しかしこれは、本当に俺みたいなスナイパー向きのショーだな」
そう言って一枚のカードを見る。
そこには較の写真があり、そこには、住所と公開名YAYAと書かれてあり、大きくAと描かれている。
「対戦相手の住所と顔が入ったカードを受け取り、その相手を殺すか戦闘不能にした方が勝ち。暗殺だろーが毒殺だろうが構わない。
当然狙撃もOK。馬鹿正直に正面から戦えって言う方がおかしいぜ」
「後、人数制限も無いし武器の使用も自由、後始末は組織がやってくれる。滅多な事しない限り罪にも問われないよね」
その声に男の心臓の鼓動が跳ね上がる。
「これって通常ただ単にバトルって呼ばれるけど、スナイパー向きじゃないんだよね」
男は振り返るとそこには較が居た。
「C級クラスまでだったらともかく、B級以上の人間は殺気を込めて撃たれたライフル弾なんて食らわないからね」
そう言いながら近づく較。
「第一観客の受けが悪い、だから今のあんたみたいに、高揚した所から一気に引き落とせる強者に当てられる」
「殺さないでくれ」
男は銃から手を離す。
「所詮はショーだもの、観客は必死に足掻く様を見たいんだよ」
「俺には妻も子供も居るんだ!」
その言葉に頬を掻く較。
「あっそ。ギブアップするなら許してあげる」
「するするギブアップだ!」
男が慌ててそう叫ぶ。
較はつまらなそうに振り返り出口に近づく。
男は直ぐにライフルを掴み較に狙いを定める。
(馬鹿なガキだ、このショーにギブアップなんてあるか。お前が言ったように足掻く様を見たいのさ)
男が引き金を引く。
「長いトイレだったね。もしかして大?」
良美の言葉に較は首を横に振る。
「小用だよ、あんなの」
「あんなの?」
較の言い方に首を傾げる良美。
「それより、食べ終わったらもう一回さっきのゲーセン行こう」
話を逸らすように較が言うと、良美が疑問符を浮かべて言う。
「どうして、もう欲しいものとったんでしょ」
「さっき転んだ時に一体無くしちゃったの」
照れ笑いをする較に苦笑する良美。
「ドジねー」
「だから良いでしょう」
拝み込む較。
「まー良いでしょう」
そして二人は、チョコクロワッサンを食べた後、ゲーセンに戻っていく。
「なーどうしたら、単なるぬいぐるみがライフル銃に食い込むんだ?」
「解かるかよ、バトルの闘士、それもA級以上の奴らは魔法を使うって話しだぜ」
そういいながら、ぬいぐるみが銃身を粉砕して絡みついた性で暴発したライフル銃の残骸を片付ける作業服の男達が居た。