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最強を目指す者  作者: 鈴神楽
死闘編
29/45

拳銃を持つ闘士

拳銃を使う十三闘神。西部のガンマンの実力は?

 ウエスタンな町の酒場の前。

「西部の決闘って感じだねー」

 気楽に言う良美に較が言う。

「断っておくけど軽口に答えられる程、余裕は無いよ」

「しっかり答えてるじゃないか」

 較と背中に合わせていた男がそう言って、苦笑する。

「これってお約束で十歩進んだ所で振り返って撃ち合うって展開?」

 良美の言葉に、男は笑顔で答える。

「嬢ちゃんは判ってるねー」

 その言葉に較は溜息を吐く。

「正直、くだらないと思うことでも、実力が相手が上だから付合ってるあちきって何?」

 そして二人は一歩ずつ歩き始める。



「前回は良い見世物だったわ」

 満身の笑みでミラーが言うと、自宅の居間で夕食の準備をしていた較の手の中の胡桃が粉々になる。

「どうして胡桃なんて持っているんですか?」

 姫子が恐々と聞くと較は粉々になった胡桃の代わりに新しい胡桃を手に取り、割りながら答える。

「あなたたちの話を聞くだけなんて時間の無駄だから、夕食の準備してるの」

「てっきり、直接私に手を出せない苛立ちを胡桃にぶつけているのかと思ったわ」

 ミラーがハッキリ言うと、再び較の手の中の胡桃が粉々になる。

「止めてください。今日は次の対戦相手の説明に来たんですよね?」

 姫子の言葉にミラーは苦笑をしながら言う。

「そんなに怖がらなくても、ヤヤちゃんは、今はまだあたし達を殺す性格じゃないわ」

 その言葉に較も笑顔で頷く。

「そうだね今・わ・ね」

 手の中の胡桃が燃え始める。

 顔を青くする姫子を無視して、ミラーが言う。

「次の相手は銃神・ホープ。今はアメリカの西海岸にいるわ」

 その言葉に較の表情が硬くなる。

 それを嬉しそうに見るミラー。

「勝ち目が無いって顔ね」

「まーね、もともと十三闘神は、誰相手でも勝ち目は薄いけど、その中でも一番相性が悪い相手だよ」

 平然と認める較。

「そうね貴方は以前、傷一つ負わせる事も出来なかった相手ですもんね」

 勝ち誇るように言うミラー。

 しかしそれには較は普通に胡桃を割り続ける。

「あら悔しく無いの?」

 拍子抜けした顔をするミラー。

「らしくないのわね。どうして反論しないの?」

「単なる事実だから。あちきが完璧に負けたのはね」

 ミラーは無言になる。

「とにかく明日の朝一の便でアメリカに行くよ」



「へー、次は鬼の娘か」

 平然と言う、西部劇のガンマンの様なスタイルをした青年が言う。

 その前には、戦車が並んでいる。

「少しは成長しているかな」

 嬉しそうに呟くその青年、十三闘神の一人、銃神、ホープに戦車の中から声が掛けられる。

『次など気にしている余裕が貴様にあるか。所詮生身の人間が戦車に勝てるわけは無い!』

 そう言って主砲をホープに向ける。

『降参するなら今のうちだぞ』

 ホープは苦笑する。

「お前等は本当に詰まらないな。バトルに兵器を持ってくるなんてな」

 その言葉に、笑い声を上げる戦車の男。

『ハハハハハ、所詮十三闘神も人の子、軍事兵器には勝てないようだな』

 それに大して、ホープは腰に下げたリボルバー型の拳銃を引き抜くと、早撃ちで三発撃つ。

『そんな豆鉄砲が戦車に通用すると思ったか!』

 しかし、ホープの撃った弾丸は容易に戦車の装甲を打ち抜き、戦車を大爆発させる。

『馬鹿な、単なる銃弾がなんで戦車を破壊できる!』

 ホープは余裕の笑みを浮かべて言う。

「俺達は戦いの神だぜ、そんな人間のおもちゃが通用するかよ」

 そしてトリガーがひかれる。

 対戦相手の乗る戦車が炎上するのを背景に馬に跨るホープ。

「ホープカンバック!」

 何故か、西部劇に出てくるような女性が叫ぶ中、夕日に向かって進んでいくホープであった。



「ここは何処?」

 良美そういって、西部劇に出てくるような町並みを見回す。

「ここは、銃神、ホープが個人所有する町で、ホープの趣味でこんな風になっているんだよ」

 町の入り口で貸し出されたガンマンの格好をしている良美が楽しそうに言う。

「楽しそうな人だね」

 大きく頷く、くの一の格好をした較。

「対戦の時にいつも馬と、カンバックと言う女性を連れてくる酔狂な人間だよ」

「馬はともかくその女性って何?」

 良美の問いに較が困った顔をする。

「あちきも気になったから調べたんだけど。昔の西部劇のエンディングではいつもガンマンは悪党を倒した後、馬に跨り夕日に向かって去って行くんだって。その時、その町の女性がカンバックってひきとめようとするらしいよ」

「形式美って奴かな?」

 流石の良美も首を捻る。

「あちきに聞かれても解らないよ」

 その時、馬に跨った、西部劇のガンマンモドキ、ホープが現れる。

「視線を逸らしたい衝動にかられるんだけど」

 そう呟きながらも、較はホープの方を向く。

「ヤヤ、お前の友を思う心、感心した。だからここは伝統的な決闘スタイルで勝負を決しよう」

 ホープの言葉に較が悩んで居る間に良美が拳を握り締めて言う。

「望む所よ」

 較は頭を抑えながら言う。

「負けた場合、一番困るヨシがいうなら良いけど……何か違う気がする」



 較とホープが十歩目を踏むと同時に振り返る。

「一発で終わらせる」

 ホープの早撃ち。

『カーバンクルミラー』

 較は、両手で作った円の中心に張った、特殊な力場でホープの弾丸を正逆に弾き返す。

「甘い!」

 ホープは次弾で、弾き返された弾丸を真正面からぶつける。

 神業とも言える、その行為で、ぶつかった弾丸同士がホープの籠められた力を爆発して、周囲にクレーターを作る。

 そのクレーターを駆ける較が居た。

 体の全身に爆発の衝撃で出来た傷がありながらも、まっすぐホープに接近していく。

「流石は鬼の娘、楽しませてくれる。だがこれを回避できるか?」

 ホープは、三連射する。

 弾丸は較の左右と上に通過する軌道を進む、較は直感だけで両足で地面を蹴る。

『タイタンクラック』

 砂煙が起こると同時に、ホープの放った弾丸が爆発する。

「ヤヤ!」

 良美が叫ぶんだ次の瞬間、砂煙の中から較が現れる。

「やっぱりな、だが最後の弾は防げないぜ!」

 六発目の弾丸が、ホープの拳銃から放たれる。

 そして較は、その弾丸に向かって左腕を突き出す。

「嘘だろ!」

 ホープの撃った最後の弾丸は較の左腕にめり込み、左腕半ばまで入り込んだ。

『バハムートブレス』

 較の右手の衝撃波を伴う一撃は、一発でホープの意識を奪った。



「信じられない事しやがるな」

 倒れたまま突っ込むホープ。

「弾丸に触れなくても爆発させられるのは何と無く予感していたからね」

 較は倒れたままのホープのズボンから中和剤を抜き出す。

「リボルバーを使ってるのは酔狂だからじゃないよね?」

 その言葉にホープが言う。

「解ってたか。あれが俺の限界だ。六発の弾に自分の力を全てつぎ込んでいる」

「そして六発の弾丸にはそれぞれ違う役割があった。一発目は様子見。二発目は、今回みたいなケースを考えて、一発目を相殺する威力。三発目から五発目は、相手を確実にしとめる為に、自由に爆発させられる弾。そして最後の一発は、確実に止めをさせる最強の力を込めた、任意爆発させられる弾違う?」

「その通り。所で、どうやって左右上から来る爆発の威力を避けた?」

 ホープの言葉に、較は地面を指差す。

 そこには地割れがあった。

「こっちの手の内を読んで、地面に避けたか。お前みたいな小柄な奴でないと使えない手段だな」

 大きく溜息を吐くホープ。

「そして最後の一発を爆発させる前に、自分の左手で受けて、俺の爆発指示が届かない、自分の腕の中に隠した。普通考えても実行できないぞ」

 その言葉に、較が笑みを浮かべて言う。

「普通にやってたら勝てないからね。第一、こんな馬鹿げた勝負を申し込まず、普通に戦っていたら、弾の効果を予想して戦うなんてまね出来なかった」

 そして良美の所に歩み寄る較。

 その後ろでは、カンバックと言っていた女性が駆け寄り、ホープを抱きしめる。

「死なないでホープ。私を残して行かないで!」

「すまないハニー俺の命もここまでみたいだ」

 掠れた声でホープが言う。

「そんな、そんな」

 涙を流す女性。

「幸せになるんだぜ」

 そのままホープが崩れる。

「ホープ!」

 号泣する女性。

 良美がそっちを見て言う。

「殺したの?」

 較は右手で顔を押えて言う。

「そんな訳無いよ。第一さっきまで普通に話してたでしょ」

 無意味に号泣する女性の腕の中で、何故か嬉しそうな顔で目を瞑っているホープであった。



 こうして較は五つ目の中和剤候補を手に入れる事に成功した。

 残る中和剤候補は七個。

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