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最強を目指す者  作者: 鈴神楽
死闘編
28/45

科学と化学

生物兵器と対決するヤヤ、人道を外れた物の末路は?

 クリーンな研究所の広い実験室。

「アニメみたいだけど本当にあるんだこんな研究所」

 良美が驚く中、較が言う。

「まーね。実際問題、ミクロの世界の研究する以上、塵一つ無い部屋って言うのが必要に成るんだけどねー」

 そう較が答えた時、奥のスライド式の扉が開く。

『見るが良い最新技術によって生み出された、最強の生物兵器達を』

 超硬質ガラス越しに自慢する、この研究所の所長の言葉に答えるように奥の扉から、フルメタルな虎と明らかに異なる生物と融合したライオンが出て来た。

「なんかありきたりな展開ね」

 良美の言葉に頷く較。

「本当にありきたりだね。さてどんな隠し種があるのかな」



「三連勝おめでとう」

 ミラーの言葉に手の中のボーリングの玉に指で穴を開けながら較が言う。

「白々しいお祝いの言葉ありがとう」

「いえいえ、なりふり構わず勝とうとしてくれるおかげで、盛り上がってるわー」

 ミラーが微笑んだまま言うと、ボーリングの玉が割れる。

「あのー次の対戦相手の説明に来たのでは?」

 恐る恐る言う姫子。

「そーねー、あまり期間も無いことだし説明しますか、次の中和剤はこの研究所の所長が持ってるわ。相手が用意した生物兵器を倒して来てね」

 平然と言うミラーに、相手の居場所が書かれたカードを受け取り較が言う。

「あなたの寿命のカウントダウンがこれで一つ減ると思ってね」

「あらあら中々面白いこと言うわね」

 余裕の笑みを浮かべて立ち去るミラーであった。



「それで、この研究所が目的の場所」

 やっぱりついてきた良美の言葉に頷く較。

「一言で言うと、軍事関係のやばい研究し続けてる奴。生物兵器って言って細菌兵器出してきたら笑うぞ」

「細菌兵器って何?」

 良美の質問に較は鋼鉄の扉に手を当てながら答える。

「貧乏人の核って言われる奴で、基本的には人工的に作られたウイルス見たいな物。まー正確に言えば違うんだけど、感染率が高い物だと町一つ滅ぼす事が可能だよ」

 鋼鉄の扉が吹っ飛ぶ。

「ふーん。それって戦えるの?」

 危機感が全く無い良美。

「そん時は、この研究所を完全燃焼させる」

 あっさり答える較に、

「成る程、高温殺菌だね」

 解った風な事を言う良美であった。



 そして二人は、研究所の奥で二体の生物兵器と対峙していた。

『お前がどんな力を持とうが、この二体の生物兵器に勝てるすべは無い!』

 高笑いをする研究所所長。

 キメラライオンが強化された脚力で較に襲い掛かってくる。

 較は平然と片手を噛ませる。

 そのままキメラライオンの頭を地面に叩きつける。

 それだけでキメラライオンは動かなくなる。

「これが何?」

 噛ませた腕にも大した傷が無い較の言葉に、研究所所長は高笑いを続ける。

『愚かな小娘だ。そのキメラライオンの牙には象すら麻痺させる麻痺毒が含まれている。お前みたいな小娘だったら死ぬかもな!』

 膝を着く較。

『お前の連勝神話もここまでだ! やれフルメタルタイガー!』

 フルメタルタイガーが接近してその爪を較にふりおろす。

「ヤヤ!」

 良美が叫ぶが、フルメタルタイガーの爪は較は捕らえられない。

『ベルゼブブ』

 後ろに回った較の放った髪が、装甲の隙間から入り込み、その先端から放たれる振動が、フルメタルタイガーを無力化する。

 較は超硬質ガラス越しに研究所所長を見下し言う。

「あちきに毒が通用すると思ったの?」

 冷や汗を垂らし、研究所所長は後退する。

『まだだ、この超硬質ガラスは、バズーカーの直撃すら耐える。これからだ、まだまだ我が傑作はあるぞ』

 較は答えず、左手を超硬質ガラスに当てる。

 左手の掌打の直後に右の拳が決まる。

『ツインテール』

 超硬質ガラスが砕け散る。

 一気に顔を青くする研究所所長。

「人間の力で、砕ける訳は無い筈」

 目の前で起こってる事が信じられない、そんな顔をする。

「理屈的には簡単。硬質な物質程、単純な衝撃には強いかもしれないけど、連続的に違う角度から受ける衝撃には意外と脆いものだよ」

 悠然と較が近づいた、その時、研究所所長の側に居た、助手達が腕にしがみ付く。

 そして研究所所長がスイッチを取り出すと較が初めて焦りの表情を浮かべる。

「そのスイッチを押すのは止めなよ!」

 較は、研究所所長が握るスイッチの正体を悟っていた。

「遅いわ! 死ね!」

 研究所所長はそのスイッチを押すと、助手達は爆発した。

「愚かなり鬼の娘、ヤヤ! 我が超硬質ガラスを破られた時の用心を考えてないと思ったか! これこそ最高傑作、人間を我が意思のみに答える、人形にする技術だ。幾らなんでもこの至近距離で回避する手段は無い筈」

 その時、研究所所長の腕がもげる。

「ぎゃー」

 助手達が爆発して発生した爆煙が治まったそこに、較の信じられない程冷たい瞳をして立っていた。

「自分が何やったのか理解してる?」

 その言葉に、必死に抜けた腰で逃げようとする研究所所長に声を震わせて言う。

「貴様どうやって生き残った?」

 大きな溜息と共に較が言う。

「至極簡単だよ、全ての物理現象は物理法則に従ってる。爆発の力の逃げ道を作ってやればいいんだよ。カーバンクルフラッシュって言う技が白風にはあるんだよ」

 瞬間攻撃力では遥かに勝る剣一郎の居合いすら逸らすその技で、あの爆発の勢いを全て逃がしたのだ。

「……人外」

 その時、初めて較が人間の範囲外にいる事に気づいた様だ。

「もう一度だけ聞いてあげるけど、自分が何をしたか理解してる?」

 研究所所長は、混乱していた、較が、自分を瞬殺出来る存在が、怒っているからだ。

「中和剤は渡します。だから命だけは!」

 差し出された中和剤を受け取り較が良美に投げ渡す。

「それもって先に出てて」

 良美はその言葉に反して近づいて来て言う。

「見届けるよ。これから何をしようとしてるか位解るからね」

 その言葉に少しだけ較が躊躇すると良美が更に足を進めて言う。

「そうだね、これはあたしの為の戦いだもん。あたしがやるべきだね」

 拳を握り締める良美を見て較が言う。

「戦ったのはあちきだよ。それにあちきはこいつを殺さない」

 その言葉に良美はしぶしぶ下がる。

 さっきの言葉にほっとした様子の研究所所長に較が言う。

「今も言ったけど、あんたは殺さないよ。絶対にね」

 次の瞬間、研究所所長の残っていた腕がもげる。

「ぎゃー」

 再び叫び声をあげた。

 地面をのた打ち回る研究所所長。

 更に近づいてくる較に、涙を浮かべ、痛みを我慢して研究所所長が言う。

「見逃してくれるんじゃないのか?」

 冷たい表情をして較が言う。

「誰がそんな事言った? あちきは殺さないって言っただけだよ」

 必死に逃げようとする研究所所長に較が告げる。

「あんたは一番やっちゃいけないことをした。人の意思を操って人間爆弾にするなんて外道な真似をね。戦う意思が無い人間を道具の様に使ってまともに死ねるなんて思わないでね。自殺すら出来なくしてあげる」

 阿鼻叫喚のその現場を良美はじっと見ていた。



「おい、これ生きてるのか?」

「ああ、絶対殺すなって厳命だ」

「殺してやった方が幸せだぜ?」

「A級闘士を敵に回す覚悟あったら殺せよ」

「冗談じゃない。なんでこんな事出来る化け物を敵に回せるか」

「だったら黙って作業しろよ」

 後始末に来た組織の人間がそんな事を言う前には、両手両足がもがれ、傷口は炭化させられ、顎が砕かれて、舌を噛み切る事すら出来ない男があった。

 その元研究所所長は言葉ならぬ言葉で言う。

『殺してくれ』

 視線でそれを察知しても、誰もそれに答えることは出来なかった。



 こうして較は四つ目の中和剤候補を手に入れる事に成功した。

 残る中和剤候補は八個。

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