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最強を目指す者  作者: 鈴神楽
死闘編
27/45

最強の拳VS最強の血筋

最強の拳を持つ男との対決。野獣の軍団すら倒すその男に較は勝てるのか?

 静かなお寺の仏像の前

「最初に言っておく私はお前等を人間扱いしない」

 その男の言葉に良美が怒鳴る。

「ヤヤにいちゃもんつけるの止めてよ! ヤヤは人間だよ!」

 その言葉に男は、首を振る。

「S級闘士は闘神と呼ばれている。しかしお前の父ともう一人以外は人間だ」

 そう言いながら男は拳を握り締める。

「だが、お前等は違う。人の姿をしていても人の領域から外れた者だ。だから私はお前等を倒すために拳を握る」

 反論しようとする良美を押しとどめて、較が言う。

「あちきを殺す理由があるって事だね。でもあちきは負けるつもりは無いよ」

 構えをとらず無造作に近づく較。



「あのー良いですか?」

 姫子がおずおずと手をあげると較が鋭い視線を向ける。

「何?」

「そろそろ次の対戦相手の説明したいんですが?」

 その言葉に較はあまり気にした様子も見せずに促す。

「えーと次の相手は拳神、地龍チーロンまた十三闘神ですね」

 較は敵意を山盛りにして返す。

「当然な事言うの止めてくれる。あんた等はあちきに負けさせたいんでしょ?」

 今にも泣きそうな顔になる姫子。

「拳神って拳法でも使うの?」

 良美の言葉に較が頷く。

「使える特殊能力も、拳で相手の特殊能力を無効化する事だけ。ただそれだけなのに十三闘神に名を連ねられているよ。それが何を意味してるか解る?」

 良美は少し考えてから答える。

「物凄い、拳法の使い手って事」

 較は難しい顔をする。

「半分正解」

「じゃあ残り半分は何?」

 良美の言葉に較が言う。

「絶対的な精神力」



 地龍は、たった一人だった。

 そして相手は、無数とも思える、野獣の群れであった。

「へへへ、S級闘士の中でも、大した特殊能力を持っていない、雑魚が! 俺の獣を操る能力の前に死にやがれ!」

 野獣達は、一斉に地龍に襲い掛かる。

 しかし、地龍は動じない。

「所詮どれだけ数が居ても、獣では我が攻撃領域に入ってくる。障害にもならない」

 ライオンの一撃を後方の豹に流し、牛の突進を掌打一発で絶命させて止める。

 アナコンダは巻きつくより先にその皮を手刀で切り裂く。

 象すらも体全体を使った足払いでひっくり返す。

 上空から襲ってくる鷹は、その攻撃に合わせた蹴りで頭を粉砕される。

 数分後には、動物の死体の山が出来上がっていた。

 全ては素手での攻撃の結果。

 それも純粋な力で言えば、人の範疇に入るその程度の力しか使われていない。

 腰を抜かしながらも必死に逃げに入る野獣使い。

「化け物だ!」

 野獣使いに近づき地龍が言う。

「お前は真の化け物を知らない」

 そして振り落とされた拳は野獣使いの命を絶った。



「ヤヤなんであたしがここで勉強してるの?」

 飛行機の中で教科書とにらめっこしてる良美の言葉に較が答える。

「休学している間に学力落ちて、留年したら大変でしょ」

「でもでも、生きるか死ぬかの瀬戸際じゃない」

 ごねる良美に較が断言する。

「人間生きてるだけじゃ駄目だよ。普通の生活を犠牲にしてまで生きるなんて意味無いよ」

 反論できず、勉強を続ける良美。

 そして苦笑して較は思った。

『ヨシが居なければ、こんなに普通の生活に拘る事なかっただろうな』



 そして、地龍が住む、お寺に二人が到着する。

「待っていたぞ」

 地龍はそう言って、仏像が置かれている前まで移動する。

「最初に言っておく、私はお前等を人間扱いしない」

 地龍の言葉に良美が怒鳴る。

「ヤヤにいちゃもんつけるの止めてよ! ヤヤは人間だよ!」

 その言葉に地龍は、首を振る。

「S級闘士は闘神と呼ばれている。しかしお前の父ともう一人以外は人間だ」

 そう言いながら男は拳を握り締める。

「だが、お前等は違う。人の姿をしていても人の領域から外れた者だ。だから私はお前等を倒すために拳を握る」

 反論しようとする良美を押しとどめて、較が言う。

「あちきを殺す理由があるって事だね。でもあちきは負けるつもりは無いよ」

 構えをとらず無造作に近づく較。

 地龍は語る。

「私は、拳法が最強の力だという事を証明するためにこのバトルに参加していた。その中で知った。本物の化け物が居ることを」

 そう言って、地龍は何かを思い出すように言う。

「鬼神、エンとの戦いで、人間の領域の外の存在と初めて遭遇した」

「A級闘士だって、魔法みたいな技使うんでしょ? そういう人達と戦わなかったの?」

 良美の問いに地龍が苦笑する。

「確かにA級やS級には通常では考えられない技を使う人間が居た。しかし、お前等とは違う」

 そう言って地龍は較を睨む。

「お前等は、戦うための存在だ。ただそれだけの為にこの世にある。人の範疇から大きく外れた人外の化け物だ」

 一気に間合いを詰める地龍。

「お前等はもはや不要の存在だ、消えて無くなれ!」

『アテナ』

 較は体を硬質化して、初撃を防ごうとしたが、硬質化した腕に地龍の腕が絡みつくと、地龍は自分の体重を使って投げを行う。

『イカロス!』

 とっさに慣性をキャンセルしようとするが、地龍の手が輝き、慣性が戻り、そのまま頭から床にたたきつけられる較。

 較は、空いている手で大きく飛びのくが、地龍は目の前に居た。

 両掌が較の腹にあたる。

『アテナ!』

 最大限の硬質化で攻撃を防ぎに入るが、地龍の掌の輝きが撃術を無効化して、較の内臓に絶望的なまでのダメージを負わせる。

 だが、地龍の攻撃は止まらない。

 回し蹴りが較の側頭部に当り、まるで人形の様に較ははじけ飛ぶ。

「ヤヤ!」

 良美が叫ぶが、地龍の猛攻は続く。

 壁に当たって止まった較の顔面に手を当てると、体全体の力が集まる発剄が放たれる。

 顔面から物凄い血が流れる。

「嘘、ヤヤがこんな一方的にやられるなんて……」

 良美が言葉を無くす。

 地龍は止めの為に手刀を作る。

「これでまず一匹」

 地龍の手刀は較の胸を貫通した、瞬間、地龍の顔に恐怖が走る。

「まだ戦えるというのか!」

 地龍の右腕が切り落とされる。

『……オーディーン』

 腕を切り落とされて、大量に出血する地龍、動きが刹那止まった。

 較の手が地龍の残った左腕を掴むと握りつぶす。

 地龍は苦痛を堪えながらも勝つために蹴りを放つ。

『……アテナ』

 硬質化した較の体は、地龍の蹴り無効化する。

 相手の両肩に手を当てる。

『コカトリス』

 瞬時に発動した振動波が地龍の戦闘能力を根こそぎ奪った。



「ヤヤ生きてる?」

 良美がそう言うのも当然であった。

 較は顔面中が血だらけで、胸に穴が開いているのだから。

『ラクシャミ』

 回復の撃術。

 較は顔の血を拭うと、そこには元の顔があった。

 胸の傷も少しずつだが直っていく。

 較はそのまま立ち上がろうとするが直ぐよろけて倒れる。

「大丈夫!」

 良美が慌てて支える。

「内臓がぐちゃぐちゃだから大丈夫じゃない」

 良美が冷や汗をかく。

「内臓以外は大丈夫なの?」

 較が頷く。

「最初の投げは頭だけにアテナを使って、ダメージを押さえ込んだし、側頭部の蹴りは自分から飛んで威力を殺した。顔面への発剄は自分から前に出ることでポイントを外して威力の大半は殺したからね」

 そう言いながらも腹を押さえる較。

「内臓へのあれだけは全然防げなかった。多分内臓の八割に障害が出てるよ」

「化け物が、最初から手刀を食らうつもりだったな」

 倒れてたまま、立てない地龍が憎憎しげに言う。

 較が頷く。

「あちきが貴方に勝つには両手の無効化能力をどうにかしないと駄目だったからね。あれは、多分お父さんでも対応に困るほどの効果があるから。だから力を込められる手の元である腕を急所を外して貫かせた筋肉で固定して斬ったんだよ。正直、出血で隙が出来なかったら、左手は殺せなかったから負けてたよ」

「それがどれだけ異常な考えかお前にはわかるまい。傷を負っても回復でき、どんな状況でも戦えるそんな体がどれほど人間から逸脱しているか」

 地龍の言葉に較が言う。

「あちき達、八刃はそうならなければ戦えなかったんだよ」

「化け物を駆逐する為に自ら化け物に成るなど意味は無い! 駆逐した化け物の代わりに八刃という化け物がこの世界に残ったのだからな!」

 今度の言葉には較は反論しなかった。

「うるさい。あんたにヤヤの何が解るって言うの! ヤヤはヤヤでヤヤなの。そしてあたしの親友なの。あたしはあんたがいくら強くてもあたしの親友の存在を否定させない!」

 強い意志をこめた良美の言葉に地龍が苦笑する。

「もしかしたらここに居る中で一番強いのはそのお嬢さんかもしれん」

「あちきは絶対勝てないもん」

 較も嬉しそうに頷いた。



 こうして較は三つ目の中和剤候補を手に入れる事に成功した。

 残る中和剤候補は九個。

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