文化祭に浮かれる者達
文化祭を楽しむ較達。文化祭の終わりと共に来る者は、
校庭のキャンプファイアーの周り
「やっぱあちきって中学生なんだよね」
較の言葉に呆れた様子で良美が言う。
「なに当然の事言ってるのよヤヤ。踊るよ」
そう較の手を引っ張り踊りの輪に入れる良美。
「あちき良美の親友で本当によかった」
「当然の事いわない」
そんな二人は幸せだったこの時は、
「いつも何時も思うんだけど、どうしてこーゆー無茶な企画が通るの」
バニーガール姿の較が言うと、バニーガール姿の優子も頷く。
「本当に、クラス会の決定なんて、生徒会の方で蹴ってくれると思ったのに」
熱血度二百%の良美が言う。
「全ては勝負に勝つためよ」
自分もバニーガール姿良美の言葉に溜息を吐く較と優子。
全ての原因は体育祭の大破壊からである。
「とにかくあれでは、負けは認められない」
「なんですって」
体育祭、最後の二人三脚障害物レースが無効と言ってA組が負けを認めなかった。
「それじゃあやり直す?」
良美の言葉にクラスメイト全員が首を横に振った。
「それで、もう直ぐ文化祭だからって文化祭の人気投票で順位が高い方が勝ちなんて言っちゃったんだよね」
溜息を吐く較。
「それにしもて、どうしてバニー喫茶なんですか?」
優子の言葉に智代が答える。
「もちろん男性客を引くため」
ずばり答えられて二の句が続かない一同。
その時、お店に一人の男性が入ってくる。
「いらっしゃいませ」
なんだかんだ言っても真面目に接客する優等生の優子だったが、その客と目を合わせた途端、逃げ帰ってきた。
そしてケーキを切り分ける果物ナイフを掴むと手首に押し当てる。
「止めなさい!」
周りの人間が一斉に止めに入る。
「止めないで、先生にこんな姿見られるなんて生きていけない!」
その言葉に女子の動きが止まる。
その隙にナイフを引こうとするが、優子の手の中にはもう果物ナイフが無かった。
「つまり、あの客が、委員長の家庭教師の先生(もうキス済み)な訳だね」
果物ナイフを拭いて、新しいケーキを切りながら較が言うと、女子生徒達が一斉に客席に方を覗き込む。
そこには本当に人がよさそうな大学生の眼鏡をかけた男性が居た。
「あれが委員長の年上の彼?」
「意外と普通ね。てっきりジゴロで何も知らない委員長にあんな事やこんな事教えているのかと思ってた」
クラスメイトの変な想像に怒鳴る優子。
「変な想像しないで!」
そんな優子に較がケーキを載せたトレイを渡す。
「ほらこれ持っていく」
優子は首と手を大きく横に振る。
「こんな姿を先生に見せられないよ!」
それを聞いて較が言う。
「もう一度見られてるでしょうが、そんな事より、折角来てくれたのに顔見た途端逃げるなんてまねしたままじゃ相手が自分が嫌われてると思うよ」
その言葉に優子が大人しくトレイを持って家庭教師の所に行く。
遠めからも、二人が仲が言い事が解った。
そして、恥ずかしがりながらも嬉しそうな優子の姿を見て女子生徒達は大きな溜息を吐いた。
「小学生で初体験する子が居るのになんであたし達って男が居ないの」
「そーゆー特殊例と比較しても意味無いとおもうけど」
そんな較(小学生の頃レイプされた経験あり)の呟きは誰の耳にも入らなかった。
「よーよーお姉ちゃん、そんな格好して、男誘ってるんだろう。俺達が楽しませてやるよ」
そう良美に言った不幸な男は良美の引き締まった太ももを見た後、完璧な踵落しを食らって保健室送りになる。
「撃沈数三十二、間違っても三桁行かないようにしろよ」
バニーボーイの良太(男子は見苦しいとの意見が多い為、うさ耳をつけただけ)が言うと良美が拳を握り締めて言う。
「解ってるわよ、流石に三桁も蹴倒して、投票してもらえないと負けが確実だからね」
それ以前に二桁行っている時点で大問題な気がする。
「大門さん、そんな事して大山くんを誘惑しないで下さいな」
バニーガール姿だと、貧乳がもろわかりの麗子であった。
「なんだよ、自分が胸無いからって変な絡み方しないでよ」
「何ですって」
二人が口喧嘩を始める。
「これで何回目だ?」
良太の言葉にテーブルをかたずける、マニア受け一番の較が答える。
「まだ四十五回目。多分今日中に三桁行くよ」
そんなこんな文化祭一日目が終っていく。
二日目も順調な動き出しだった。
色々な問題があっても、やはりバニーは強かったらしい。
そんな中、妖しい男が入ってきた。
明らかな挙動不審な男。
「あの男って思いっきり妖しいよね?」
智代の言葉に良美も頷く。
「確かに鞄に何か隠してる。もしかしたら禁止している写真撮影をするつもりかも」
記録に残るのは絶対嫌と言う強い主張からこのバニー喫茶では写真撮影は一切禁止になっている。
「それは絶対阻止しないとねー」
そして有志のメンバーでその客を囲む。
「お客様その鞄に入っているのは何ですか?」
出来るだけ物腰が柔かい優子が声をかけた。
それに対してその客は明らかに動揺する。
「何でもありません。これは絶対怪しい物は入っていません」
その言葉に良美が拳をならし言う。
「つまり、怪しい物入れてるのね」
近づいていく良美に男の一人が鞄の中から怪しい物を取り出した。
「止まれ!」
その怪しい物は拳銃であった。
一部(較と良美)を除く全員が驚き動きを止める。
「どうせモデルガンでしょが?」
麗子が高飛車に言うと、その拳銃が火を噴く。
そのまま気絶する麗子を咄嗟に受け止める較。
「お前等大人しくしろ。俺達は、植物愛護連合の物だ。今からこの教室は俺達に植物愛護連合の支配下に置く」
震える手で拳銃を構えてそんな戯言を言う自称植物愛護連合を見て較が良美を呼び耳打ちする。
良美はにやりとする。
「なかなか面白いし、いい宣伝になるかもね」
そして、較が歩き出す。
「動くな!」
声と膝を震わせて言う植物愛護連合。
そんな事を気にもせず良美が言う。
「これからバニー喫茶、二ーB特別イベント、特撮生体験ショーを開始します!」
その言葉に誰もが驚く。
特に植物愛護連合のメンバーが。
「何言ってやがるこの拳銃が目に入らないか!」
それに対して較が拳銃の銃口の前に立って言う。
「撃てば」
その言葉に植物愛護連合は反発して引き金を引く。
引いた瞬間、目を閉じて言い訳をする様に植物愛護連合は言う。
「お前が悪いんだ挑発なんてするから」
しかし、予想された悲鳴は無かった。
「はいこれが第一弾、弾丸を食らっても平気な様子を再現しています。トリックは皆さんでお考え下さい」
良美の言葉を聞いてから前を見ると、無傷な較が居た。
「冗談じゃない!」
連射される。それが全て較の顔面にあたるが、全て弾かれる。
弾切れして、男は腰を抜かす。
「続きましては、脅威鉄砲を握りつぶすシーン」
良美の言葉に答えて較が拳銃を拾い上げるて、握り潰す。
周囲から拍手が起る。
全員これはショーだと思いこんでるようだ。
たった一人、それが本物だと知っている植物愛護連合の人間は涙目になる。
「最後は、人間が投げられて壁に突き刺さるシーン」
良美の言葉に、較はクレームを込めた視線を送るが、良美は無視を決め込み言う。
「よく映画である、投げられて人が壁を突き抜けるシーンをその目で確認して下さい」
溜息を吐いてから較は、植物愛護連合の男を担ぎ上げると壁に向って投げつける。
本来なら投げられた力関係無く、その男の体が壁に砕くだけの強度が無ければ突き刺さる訳無いわけだが、そこは較の撃術でどうとにでもなる。
壁から突き抜ける男を見て盛大な拍手を受ける較と良美。
「すげーどんなトリックがあったんだ」
良太の言葉に良美は自信満々に答える。
「企業秘密よ」
因みにこの男は捕まり、良美達は壁を壊した事でこっぴどく怒られて、バニー喫茶も閉店する事になった。
「折角人気出てきたのに」
文句を言う良美。
そしてキャンプファイアーを囲みながら、なんだかんだで楽しかった文化祭を思い出しながら較が呟く。
「やっぱあちきって中学生なんだよね」
較の言葉に呆れた様子で良美が言う。
「なに当然の事言ってるのよヤヤ。踊るよ」
そう較の手を引っ張り踊りの輪に入れる良美。
「あちき良美の親友で本当によかった」
「当然の事いわない」
そんな二人は幸せだったこの時は、
それは二人で白風家に帰る途中の事だった。
「ヤヤ遅いよ!」
先に行く良美。
「急いで帰っても何も無いよ!」
呑気に言う、較。
較はこの時、油断をしていた。
自分一人だったらどんな事があっても大丈夫な自信と今はバトルの最中で無いと言う二つがこの先の悲劇を事前に防ぐ妨げになった。
先に行く良美に一人の女性が近づく、仮定を言っても仕方ないが、もし彼女が闘士であったならば較は彼女が良美に近づく前に気付いていたであろう。
その女性は、良美に首筋に圧縮ガス式注射機を当てる。
「へ」
良美が振り返ろうとする前に、較は間合いを詰めるが、間合いを詰めきる前に女性は引き金を引き、その薬を良美に打ち込む。
その途端しゃがみこむ良美。
較は一気に戦闘モードに移るとその女性を壁にめり込ませる。
「正直に言わないと殺すよ」
較は一片の冗談も含まず言う。
「あれは、即死の効力は無いわ」
その言葉が意味する物を較は知っている。
「何か交換条件があるって事?」
女性は頷くと言う。
「話しが早くて助かるわ、A級闘士、鬼の娘のヤヤさん」
激しい殺気を女性にぶつける。
並の人間だったらショックで死にそうになるそれを受けても女性は平然と言う。
「貴女がいけないのよ、勝ちすぎるから。組織から言われてるでしょ、偶に負けないと賭けが成立しないのよ」
女性の隣の壁が較の拳を受けて崩れる。
「組織の人間って事だね」
その女性が頷く。
「そーよ、トップエージェントの一人、ミラー=ガーランドよ」
較が舌打ちをする。
曲者揃いの闘士の中でも十三闘神とも呼ばれる、S級闘士を相手にする組織のエージェントの中でも選りすぐり、トップエージェントが関わるとろくな事は無いのは経験上知っている。
「貴女のお友達には一ヶ月以内に中和剤を打ち込まないと死ぬわ。そしてその中和剤は十一個のダミーを入れシャッフルされ、組織が選んだ十二名の対戦相手に配られたわ。その中にはS級闘士も居るわ。貴女が取れる道は二つ、その十二人に勝って行き、中和剤を手に入れるか、あたし達の言う通りに負けたりしてくれるかの二つに一つ」
較はその言葉にほんの一瞬だけ躊躇した後答える。
「そんなのじゃ究極の選択って言えないよ。次のバトルで負ければ信じてくれるの」
微笑むミラー。
「好きよ、分別が有る子供って」
「駄目!」
その声は後からした。
較が振り返ると、良美が走って来た。
「そんな八百長は、あたしが許さない」
その言葉に較が溜息を吐いて言う。
「ヨシの命が懸かっているんだよ。解ってる?」
それに対して良美が胸を張っていう。
「別にヤヤが、その十二人と戦って勝てばいい話でしょ」
疲れた様に肩を落として較が言う。
「多分組織はかなり本気であちきを負けさせたい。相当の強敵が来る。それに十三闘神相手にはあちきはまだ勝った事は無い。そんな勝率が低い勝負にヨシの命を賭けられる訳ないでしょうが」
それに対して良美が断言する。
「あたしは八百長してもらった中和剤なんて、絶対飲まないよ」
その言葉に困りきった顔をする較の顔を真っ直ぐ見て、良美が言う。
「あたしはヤヤを信じる。ヤヤがあたしを助けたいって思いはどんな力差にも負けないって。だから戦って」
その一言に較は諦めた顔になる。
「了解あちきは勝ってヨシの中和剤手に入れるよ」
それに対して、ミラーが言う。
「まーこちらはそちらでも構わないわそれでは、招待状は早いうちに届けさせて貰うわね」
そして去っていった。
その日から較の負けられない死闘が始まった。




