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最強を目指す者  作者: 鈴神楽
学校編
20/45

最強の鬼神

最強とよばれる男、その性格と実力は

 私立羽鳥中学校の校庭

「ヤヤのお父さん本気で人間やめてるね」

 沸騰する大地を眺める良美。

「一応文明人としての分別有るよ」

 ヤヤがそう言って、無事な花壇を指差す。

「お父さんは、結構草花大切にしてるから」

「そーいえば、著書にベジタリアンは植物が生き物で有る事を否定する考え方だって言ってたよね」

 目の前の地獄絵図を無視する呑気な会話であった。



 較は一時期お世話になっていた、黒林家の夕食に招かれていた。

「一美さんって本当に料理が上手ですねー」

 何故か当然の如く一緒に食事をする良美が、黒林の長女で、較にとっては母親とも姉とも言える存在の女性に言った。

「当然だ。ヤヤとは年季が違うわ」

 こちらも何故か解らないが、一緒に食事をする、較と同じバトルのA級闘士、一文字剣一郎が答える。

 その二人に挟まれる形の較が眉間の血管を浮き出させながら言う。

「ヨシはともかくとして、何で剣一郎がここに居る!」

 それに対して一美が平然と答える。

「健一さんが剣道大会とかで道場を開けてる時に代わりにと来てくださっているのよ」

 その言葉に冷たい視線を向ける較に剣一郎は平然としている。

「門下生から聞いたんですけど、今度父兄参観があるのよね?」

 その言葉に較が頷く。

「そうみたいですよ」

 まるっきり他人事の様な雰囲気である。

「もー他人事みたいに振舞わない。エンさんが来れない様だったら私が代わりに行くわよ」

 困った表情をする較。

「一応連絡してみる」



 家に戻った較が、駄目もとで父親、ホムラの携帯に電話をすると、偶然にも繋がった。

『ヤヤかい?』

 その優しげな言葉に何時もの強い違和感を感じながら較が言う。

「うん。お父さん、今度の日曜日に父兄参観なんだけど来れないよね」

 来れると聞かないのは、何時も忙しい父親に対する捻くれた思いからだ。

『今度の日曜は、前日に出版物の打ち合わせをするんで東京に居るからいけるよ』

 意外な答えに驚く較。

『ヤヤが授業を受ける姿か、うん新しいデジタルビデオでも買って記念に撮っておくか』

 そんな親馬鹿にしか受け取れない会話をした後、較は電話を置く。

「来てくれないの?」

 相変わらず較の家に居候している良美が聞くと、首を横に振る較。

「来てくれるって言ってる」

 良美が首を傾げる。

「じゃあどうして暗い顔をしてるの?」

 較は溜息を吐いて言う。

「簡単だよ、良いお父さんぽい事してくれるのが、凄く嫌なの」

 その言葉に眉を顰める良美。

「どうして良いお父さんぽいのが嫌なの?」

「解ってるから、最終的にあちきか戦いかといったら間違いなく戦いをとるお父さんの性格が。だから偶にあって優しくされてもいざって時に大切にしてもらえない代わりにしか思えないからね」

 難しい顔をした後、良美が較を抱きしめて言う。

「あたしはヤヤをとるよ、ヤヤを助ける為に空手をやめる事になったとしてもヤヤを助ける」

 その言葉に驚く較。

「だから、明日の夕飯はステーキにして」

 良美のその一言が全てを台無しにするが、何故か翌日の夕飯にはステーキが出てきた。



「ヤヤ、こっち向いて!」

 教室の後からデジタルビデをを構えて親馬鹿な事をやる、童顔で、中肉中背、何処にでも居るサラリーマン風のお父さん、白風焔の言葉に較は悟りを開いたように無関心である。

「ヤヤのお父さんって始めて見るけど、随分、子煩悩な人なんだね」

 智代の言葉に、優子も頷く。

「本当、優しそうな父親ですね」

「しかし、うちの親父と違って、弱そうだぞ!」

 丁度その時、筋肉質の良太の父親が焔に近づくき肩を叩く。

「親馬鹿もいい加減しないと子供に嫌われるぞ!」

 困った顔をして、焔が答える。

「そうですか? 普段家に居られない分こんな時こそ記録に残してやりたいんですがー」

「子供ってそんなもんですよ!」

 大笑いをしながら何度も方を叩く良太の父親であった。



 父兄参観はつつがなく終わり、較は焔と二人、屋上に居た。

「お父さんは、最強の名前が自分に相応しいと思う?」

 その言葉に焔は、屋上の手摺を指だけで穴を開けて言う。

「指で鉄を穿つ事が出来ても、戦闘機の集団に勝つのは至難だよ」

 天を仰ぎ言う。

「八刃の人間は、皆異界の者と戦う為に強くなった。だからこそ私は人と戦う。戦い自分が強い事を確認する為に。多分それが、多くの物を犠牲にした上で戦ってきた八刃の者の力の証明になる筈だ」

 溜息を吐く較。

「人のままで異界の者と戦っても勝てない証明の為、その為にお母さんは死んだんだね?」

 その言葉に焔は頷く。

「そうだよ。強い奴を求める旅なんかについてきた性で、ヤヤにも一生消えない傷を作らせてしまった」

 沈黙する二人。

「でー、暗い!」

 良美が乱入してくる。

「偶に親子が一緒に居るんだから、外食に連れて行くのが常識でしょ!」

 その言葉に突っ込もうとする較だったが、それより先に、焔が頷く。

「そうだな、よーし今夜は奮発して、フランス料理の名店に行くぞ!」

 突っ伏す較。

「あたしはフランス料理初めてだ」

 その良美の言葉に首を傾げる焔。

「君も一緒に来るのかい?」

「ヤヤと約束しているんです、バトルを見続けると。だから親子水入らずの所でも、一緒に行きます」

「ただ、フランス料理食べたいだけじゃん」

 倒れたまま較が小声で突っ込む。

 次の瞬間、較が、良美を脇に抱えて屋上から飛び降りる。

「いきなりなに!」

 良美が抗議を挙げたとき、ついさっきまで較達が居た屋上が爆発する。

 三階建ての校舎の屋上から平然と着地して較が言う。

「いきなりバズーカー砲とは見境の無い奴らだな」

 良美も自分の足で地面につき、言う。

「もしかしてバトル?」

 較が頷く。

「でもあちき相手じゃない。お父さんとのバトルだよ」

 次の瞬間、較達の周りを忍者が囲む。

 しかし忍者が何かをする前に、較の腕が動く。

『サンダーバード』

 電撃が込めた手刀での連撃は、忍者達を蹴散らす。

「まー、あちきもお父さんの助っ人になると思われて狙われるけどね」



 校庭に立つ焔の周りには重火器を持った男達と、魔法使いのローブを羽織った老人、さらには較達を襲った忍者よりレベルが高い上忍が居た。

 そして重火器を身に纏った男からスピーカーを通して声がする。

『お前の最強伝説もここでお終いだ! この世の中、金を持つものこそが最強なんだ! 個人の力で金を持つ俺に勝てる訳が無い!』

 次の瞬間重火器がうなり、魔法の雷撃が飛び、分身した忍者達が襲い掛ってくる。

 焔は地面に右手を着き、振り上げる。

『ナーガ』

 焔の手に引っ張られるように地面が延び、重火器や雷撃を防ぎ、分身した忍者達を食らっていく。

 次の瞬間、焔は魔法使いの老人の前に立っていた。

 慌てて呪文を唱える老人の額に、焔は指を着ける。

『インドラ』

 魔法使いの老人は、感電したように崩れる。

 重火器を持った男達は一斉射撃を開始する。

 バズーカーやマシンガン、対戦車砲まであったが、焔は一言。

『アレス』

 立ってるだけでそれら全てから耐えた。

 男たちは一斉に逃げ出す。

 上忍が、背後に回るが、焔の背後に回った筈の上忍が見たのは無数の焔の姿だった。

『ゴースト』

 背後の焔の手刀で簡単に意識を失う上忍。

 そして焔が天を仰ぐ。

「残り一人」



 焔が戦う上空に一機のヘリコプターが在った。

 しかし、それは、常人の目には捉えられない高度にあり、万が一見つけられても迎撃など夢のまた夢の高さであった。

「くそ、これでも駄目か、しかし次は今回の倍の戦力を使って……」

 今回の焔の対戦相手の言葉が止まる。

 目の前に居るはずの無い存在、焔が空中に立っていた。

『ベルゼブブ』

 焔の手から放たれた髪の毛は、ヘリコプターのエンジンを確実に停止させた。



 超高度から平然と着地する焔。

 その後を追う様に、ヘリコプターがゆっくりと墜落する。

 そして、男が言う。

『無駄だ! 私の周囲にはミサイルの直撃すら受け止める特殊ガラスが張り巡らされている。幾らお前が化け物でもそれはどうしようもあるまい!』

 焔の両手が広げる。

 その両手に凄まじい熱量が発生し、両手がヘリコプターのボディーに突き刺さる状態で交わる。

『アポロン』

 そこに太陽が現れた。



 較と良美の呑気な会話に答える様に手を振る焔。

「ファイトマネーも入るから、一流フランス料理店の最高メニューを全て頼むぞ!」

 その言葉に心底嬉しそうな良美。

「やったねヤヤ」

 そして溜息を吐き、校庭を指差して言う。

「言っとくけど、沸騰した校庭は流石に直すのには一週間掛るよ」

 その言葉に良美が驚く。

「それじゃあその間は……」

「体育は体育館だね」

「えー」

 較の回答に太陽無では生きていけない野生児、良美が嘆くのであった。

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