平凡な女子中学生
普通の女子中学生の日常の一コマ
都内にある私立羽鳥中学校の教室
「ヤヤって手先器用だね」
空手部に所属し、部活に青春を費やすショートヘアーの大門良美が言うと、小学生にしか見えない外見で制服を着て、小さい手で器用にヌイグルミを作る、白風較は、頷く。
「まーね、ヨシみたいに運動ばっかじゃ男子にもてないもん」
「言ったなー」
そーいって二人で楽しく会話していると、ロングヘアーのいかにも金持のお嬢さん風の鳳凰院麗子がやって来た。
「大門さんお話しがあります」
話しの内容に検討をついた良美は溜息を吐く。
「良太の事だったら、単なる幼馴染だよ」
「そんな言葉は信じられません! 昨日も二人で下校していたでしょう!」
詰め寄る麗子。
「昨日ってあちきが用事があったから二人で帰ったんだよね?」
「そうそう、普段はヤヤや良太の友達を入れて皆で帰ってるけど昨日は、他の奴らは皆用事が有ったんだよ」
「だったら何で私の誘いを断ったんです」
その一言に較が大きく溜息を吐く。
「当たり前だと思うよ、誰だっていきなりリムジンで一緒に帰ろうと言われたら引くよ」
「何でです!」
本気で解かっていない麗子に良美と較は顔を合わせる。
「どう言えば理解して貰えるのかな」
「無理だよ、だって確かに誤解もあるけど、良太って女子の中では良美の事が一番好きだもん」
較のその発言に、間の抜けた顔をする良美。
「冗談だよね」
較は首を横に振った。
「本当」
沈黙が場を支配した。
「ただし、今は女子より、空手の方が好きってお子様だけど」
「ヤヤ!」
良美が拳を鳴らすが、較は気にしない。
「ほら見なさい、貴女が居るから大山くんは私の誘いを断ったのよ」
一気に脱力する良美。
「あんたも話しの流れを無視するなー」
この後、二人は長い間口論をするが、その隣で呑気にぬいぐるみを作る較であった。
「それで今日は、あちきと二人で帰るの?」
「まーな、変な誤解されているとつまんないからな」
帰り道をそんな他愛の無い会話で過ごしていると、数人の男子が二人を囲む。
「よーよー姉ちゃん少し付き合ってもらえるか?」
その言葉を聞き、二人は固まる。
「へへー、恐怖で固まってやがるぜ!」
「信じられない、今時こんなお約束な台詞を吐く不良が居るなんて・・・」
良美の言葉に、大きく頷く較。
「ふざけやがって!」
そして不良Aがなぐり掛ってくるが、良美は回し蹴り一発で黙らせる。
「次はどいつ!」
較はそそくさと包囲の穴が空いた所から包囲網を抜けて安全距離に移った所で手を振る。
「ヨシ頑張って、あちきは影から見守っているから」
「……まー手芸部の人間に期待はしないが」
次々と得意の蹴りで不良を黙らせていく良美。
「それで誰に頼まれたの?」
良美がまだ不良達と戦っている中、較は片手で自分の倍あろうかという男を壁に押し付けて訪ねていた。
「お前達と同じ制服を着たリムジンに乗った奴だよ」
呆れた顔をして較が手から力を抜く。
「あちきの名前はヤヤ、そー言えばあんた達が今後どうすれば良いか解かるよね」
不良の顔が蒼褪める。
「あんたが、暴走族を一人で壊滅させたあの・・・」
較は答えず、良美が居る方に戻っていく。
「ラスト!」
最後の一人を倒すと大きく深呼吸をする良美。
「ヨシ流石は女子中学都大会準優勝の実績は伊達じゃないね」
呑気に戻ってきた較。
「あんたねー普通直ぐ逃げる?」
「ヨシの事、信じてるもん」
その微笑に何も言えない良美であった。
「くやしー!」
一人地団駄を踏む麗子であった。
「次はこうは行かないんだから」
しかし、麗子が金を積もうと乗ってくる不良は、この後居なかった事だけは言っておこう。