幽霊と共に歩こう
夜の学校に現れる幽霊。そして久しぶりに登場するクラスメイト達と白風家の由縁
私立羽鳥中学校の夜中の校舎。
「魔を祓い清き白き風生み出す者、その名を白風と言うでしたっけ?」
そう言う少女に首を傾げる良美。
「何それ?」
較は仕込みをしながら言う。
「昔の白風家の事をさす言葉だよ。異界より流れ来る邪な流れ斬りし者、その名を霧流って言うのと同じ、昔の人が人外の血族に付けた呼び方だよ」
「へー、魔を祓う風か」
感心する良美。
そしてその少女が言う。
「そうですね、魔を祓う風なんですよね」
その言葉に、較は頷く。
「全ては昔の話しだけどね」
較と良美は何時もの様に教室に居た。
良美は部活までの時間つぶしで、較はその付き合い今日はデフォルメした河童のぬいぐるみを作る較の所に、恋人が出来たと評判の緑川智代がやって来た。
「二人とも夏休み何処行ってたの?」
「豪華客船にのって、北海道行って、香港行ったあとギリシャかな」
「はいはい、良美の妄想は聞き飽きたから」
本当の事を良美が言うが全く信じない智代。
「あんたねー」
旅のスポンサーでもあった較は、平然とぬいぐるみをつくり続ける。
「ところで幽霊の話し聞いた?」
智代の言葉に良美が首を傾げる。
「何それ?」
溜め息を吐いて較が言う。
「ヨシも本当に噂に疎いねー。この頃夜の学校に幽霊が出てくるって有名だよ」
その一言に拳を握り締める良美。
「つまり肝試しをするって事ね」
「そうそう」
智代も頷く。
較は少し、考えてから言う。
「どうしてそうなるかは知らないけどいいか」
何か凄く諦めた表情をする較。
その夜の校舎で、高笑いが響く。
「ホーホホホ、何て低レベルのイベントなんでしょう」
そういったのは、お嬢様キャラ鳳凰院麗子である。
「それに何であんたが参加してるの?」
お約束の突込みをするのは良美。
較はもはや諦めきった表情で、河童のぬいぐるみの甲羅の模様を作り込みに入る。
「それは大山くんが居るから」
顔を赤くする麗子に、男子のクラスメイトと幽霊出た時に対応を話す大山良太。
「だから、幽霊でたら死んだふりするのが、正しい対処だよな」
「それは熊だぞ」
「似たようなもんだろ?」
まだ残暑が厳しいのに、相変わらず頭の中身は、かなり涼しいみたいである。
「キャーあんな所に人影が!」
一人の少女が言うと、皆がそっちを向く。
校舎の中に人影があった。
そして皆が騒ぎ出す中、較はひたすら、河童に嘴をつけるかどうか悩んでいた。
数人ごとに分かれて探索する一堂。
「私は大山くんと一緒で嬉しい」
「幽霊か、会ったらまず足をあるか、確認だな」
本当に嬉しそうに呟く麗子と何処までも脳味噌の中身に問題を感じる良太が曲がり角をまがった時、そこにそれが居た。
「キャー!」
麗子の叫び声に、参加者が集まる。
腰を抜かしている麗子を置いて、良太は一人、頭が割れた幽霊らしき物を追っていた。
「へー、緑さんて言うの?」
あの時、人影を見かけた少女と一緒に行動する事になった、較と良美。
「はい、でも白風ってあの八刃の一つですよね?」
その言葉に較が始めて少女を見た。
「もしかして、知ってるの八刃を?」
頷く少女。
「魔を祓い清き白き風生み出す者、その名を白風と言うでしたっけ?」
そう言う少女に首を傾げる良美。
「何それ?」
較は仕込みをしながら言う。
「昔の白風家の事をさす言葉だよ。異界より流れ来る邪な流れ斬りし者、その名を霧流って言うのと同じ、昔の人が人外の血族に付けた呼び方だよ」
「へー、魔を祓う風か」
感心する良美。
そしてその少女が言う。
「そうですね、魔を祓う風なんですよね」
その言葉に、較は頷く。
「全ては昔の話しだけどね」
そして較は続ける。
「昔この世界は、異界からの蹂躙にあっていて、それを対抗し続けた八人の人間の前に一柱の神が降りて来たの。その名は、聖獣戦神八百刃。その神は自分の使徒を私達の守護者としたの」
一つの猫の飾りを見せて言う。
「これはうちの守護者、白牙。その力は全てを斬ると言われる一刃だよ」
「へー面白い話しだね」
良美が感心すると頷く較。
「まーね、八刃には今挙げた霧流や神殺しの異名を持つ神谷なんているけどね」
そう言いながら歩いていると、倒れている良太を発見する一同。
「大丈夫ですか?」
おどおどと近づく緑に、無造作に近づき、蹴りを入れる良美。
「起きろ!」
そして目を覚ます良太。
「俺なんでこんな所で寝ているんだ?」
首を傾げる良太。
その時、較が良美の腕を引っ張り指差す。
「多分あれが要因」
較の指差す先には、数人の男たちが何かがさこそしていた。
「あれ何?」
「きっと学校に幽霊が出るって噂を広げて、人気が無い学校に入り込んで窃盗を続ける集団だよ」
良美は拳を握り締めて断言する。
「そんな不埒な連中はあたしが!」
「俺もやるぞ!」
特攻する良美と良太。
「頑張ってねー」
呑気にそんな二人を見送る較。
そして緑があたふたした様子で言う。
「いんですかほっといて?」
「あの二人だったらあの位の窃盗団倒せるよ。それよりあなた何時からこんな下らない事やってるの」
較の言葉に驚いた顔をする緑。
「何を言っているんですか?」
次の瞬間緑の腕が切り落された。
沈黙、緑は悲鳴を上げなかった、そしてその腕からは血が流れることは無かった。
「どこで気付きました?」
その言葉に較が答える。
「白風の名を知ってるなんて言うべきじゃないよ。お父さんの代になって対人戦を主にした、白風の昔の姿を知ってる同じ年の人間なんて稀有なんだよ。そうおもって感じてみれば、案の定、悪霊だった。いままで何人の学生に今回みたいに窃盗団にあわせたりして、怪我させるなんて真似してきたの?」
緑は邪悪な笑みを浮かべて言う。
「もう忘れたわ、ずっとずっとこんな事をしてたから。でもばれた以上直接」
次の瞬間窓ガラスが割れて較に襲い掛かる。
「こんなもんじゃ聞かないよ」
平然と立っている緑が次々に教室から机を導き出し、一斉に較を襲わした。
『ラドン!』
両腕を大きく打ち付けと、その衝撃波が較諸共、周囲の空間に衝撃波を打ち込む。
机が粉砕される。
「あんた何者、今の自分だってダメージを受けるわよ!」
どなる緑に較は平然と言う。
「人を傷つける覚悟を決めた時、無傷で生きていこうなんて気持ちは無くなったよ」
緑はその視線に一歩下がる。
「古流の業は、一応使えるよ!」
較はそう言って空中に八方を描き、その中心を打ち抜くように拳を打ち込む。
「白風流撃魔術、白空拳!」
そして緑の体ならぬ体の胸が見えない拳に貫かれた。
「ようやく消えられる」
大事な部分を失いながらも微笑む緑。
較は近づき言う。
「最初っからこのつもりであちきと一緒に行動したんだね」
緑は頷く。
「何時からだろう、心残りがあった自分が自分以外の何かに変化していくのを感じたのは」
「この世に幽霊は居ない。魂なんてまやかしだよ」
較はそう言って緑を見て言う。
「あるのは記憶と意思で構成された貴女みたいな残留思念。そしてそれは、他の残留思念を取り込むことで維持される」
緑が苦笑する。
「解っていた、自分が夜の学校に忍び込んだ、その場に居た食うのにも困った浮浪者に襲われて死んで、強い恨みを持ち、自分一人がそんな目に遭うのが嫌で巻き込もう何て考えた時から、同じ様な意思を取り込み続けたって事を。もう本当の私は殆ど残っていない。だから消えるのは怖くない」
どんどん薄れいく緑。
「最後に一つ聞いて言い?」
較が頷くと緑が言う。
「貴女の心には私達と同じ傷があるのに、どうして生きていけるの?」
較は、窃盗団と死闘を演じている良美を見て言う。
「一人じゃないからだよ」
その言葉に納得した様に緑が完全に消える。
「良美凄い!」
「大山くん素敵です!」
「ふん。当然な結果よ!」
「うんうん、俺の新聞載りも良い」
窃盗団を捕まえた事で新聞に載った良美と良太にクラスの皆が騒ぐ中、較は一人一つのぬいぐるみを作っていた。
それは、辛い思いから歪んでしまったが、本当は人を気遣える心を持った少女のぬいぐるみであった。




