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《敗北の果てに》― 灰の王と蒼き女王 ―  作者: 熊猫


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8/8

最終章(第8章)―「誓いの陽の下で」―

1️⃣ 導入:穏やかな朝

季節は、灰色の焦土を忘れさせるような、穏やかな春を迎えていた。王都の石畳には、戦火の傷痕を覆うように新緑が芽吹き、その空気は希望に満ちていた。

この日、リュザードとリアナの結婚が正式に布告され、城下に久々の祝福の鐘が、清らかな響きを立てて鳴り響いていた。民たちは、戸惑いから確信へと変わった心で、街中で花を掲げ、この静かな愛の成就を祝っていた。

城内の廊下では、オルヴァンをはじめとする古参の臣下たちが、窓からその光景を眺め、静かに微笑んでいた。彼らは、長きにわたる戦の時代が、そして王の孤独が、ようやく終わったことを実感していた。

「この国に、ようやく春が来たのだな……」

誰かが呟いた。それは、単なる季節の言葉ではなく、平和と救済の象徴だった。


2️⃣ 儀式の朝

城の最上階、王宮の白い礼拝堂には、陽光が差し込み、純粋な光で満たされていた。

リアナは、かつての蒼国の色ではなく、純白に金糸を織り込んだドレスを纏っていた。王冠はつけず、代わりに、柔らかな白い花を編み込んだシンプルな冠が、彼女の髪を飾っていた。

リュザードは、灰色の戦装束ではなく、白と黒を基調とした、威厳がありながらも人としての温かみを感じさせる正装を纏っていた。彼は、征服者ではなく、一人の男として、この誓いに臨んでいた。

儀礼を司る、白髪の老司祭が、静かに誓いの言葉を読み上げる。その声は、重厚な誓いの響きを帯びていた。

「リュザード・ヴァルヘイン、あなたはこの方を生涯の伴侶とすることを誓いますか。王位の権威ではなく、己の心に従い、常に愛し敬うことを誓いますか。」

リュザードは、リアナの手を握りしめ、まっすぐ前を見た。

「誓う。王としてではなく、一人の男として。」

司祭は、次にリアナに問いかけた。

「リアナ・エルヴァーン、あなたはこの方を支え、共に歩むことを誓いますか。王の責務を共に背負い、その心の安寧を守ることを誓いますか。」

リアナの瞳には、愛と決意の光が宿っていた。

「誓います。臣としてではなく、あなたの妻として。」


3️⃣ クライマックス:王の口づけ

誓いの言葉が結ばれると、二人は、用意されていた花冠を交換した。それは、王冠ではない。支配や征服ではなく、共存と愛の、静かな象徴だった。

リュザードが、リアナの頬に、そっと手を添える。その手は、かつて彼女の瞼を閉じたときと同じ、優しさと、深い感情の揺らぎを含んでいた。

彼は、静かに、しかし、世界に響くような言葉を紡いだ。

「これから先、戦も、孤独も、すべて共に越えていこう。お前がいる限り、私は何度でも立ち上がれる。」

リアナは、彼の決意を受け止める。

「……あなたとなら、どんな未来も恐れません。」

そして、静かに唇を重ねる。

礼拝堂に差し込む光が、二人の頭上を祝福した。群衆の歓声ではなく、祈りのような静けさの中で、花弁が窓の外の風に舞い上がった。二人は、王と女王の仮面を脱ぎ捨て、夫婦となった。


4️⃣ 結末:祝福と余韻

儀式の後、二人は城のバルコニーに立ち、祝福する民衆の前に姿を現した。

リュザードは、集まった民衆の歓声を聞きながら、リアナの手をしっかりと取り、力強く宣言した。

「今日よりこの国は、ふたつの心によって支えられる。私の名はリュザード、この国の王であり、リアナの夫だ。」

民衆は一斉に歓声を上げ、手にした花を空に投げた。街中に、歓喜と祝福の花が舞う。

その光景を見ていたオルヴァンは、目元を拭いながら、老いた声で、深く感動したように呟いた。

「……ようやく、真の王と王妃が誕生された。」

エンドシーン。夜。

バルコニーで、二人は肩を寄せ合い、静かな星空を眺めている。

リアナが、リュザードの肩にそっと頭を乗せた。

「これが……私たちの国ですね。」

リュザードは、彼女の髪に顔を寄せた。

「ああ。お前と共に見届けたい、この景色を。」

手を取り合い、星明かりの下で静かに微笑む二人。征服と孤独の物語は、ここで終わりを告げた。


征服は終わり、愛が始まった。王と元女王は、人として、伴侶として、共に歩み出す。その姿は、国の新しい夜明けを告げていた。

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