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縁の理(えにしのことわり)上巻~ReTake.ZERO~MORSウイルスとAIアリシアの攻防  作者: 平瀬川神木
第12章 春雷

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第99話 第12章 春雷 第1節 340日目の密会と異物が提示する3回目の作戦

【アリシアの初報340日目】

 NSSの介入班室で、上村課長、冴子係長と真理雄が厚生労働大臣と外務大臣と内密の会議を行っていた。

 冴子はアリシアがサボタージュしてまで考えた、人工MORSウイルスに対する作戦を、実現可能なものに落とし込んで川滝大臣に伝えていた。

 このウイルスが人工ウイルスだと仮定すると、今までの厚生労働省が前面に立つ案件から、裏では外務省や国家安全保障局が前面に立つ案件になる。外務省との連携が、これまで以上に重要になってくる。


 内密の会議の内容は、アリシアと富岳がMORSウイルスが人工であるという確認と、今後の変異の予想、および対応のすり合わせである。アリシアと富岳は、MORSウイルスの次の変異株がR0と致死率ともに、最高値を出すと予測していた。今までの変異の内容調査で確認できた、共通の変化パターンを鑑み、次のデルタ株に対応できる『ウイルス無力化薬』の設計を完了させていた。そしてこの薬『プロテオブロック』を世界中に送るために、極秘裏に国内11か所の製薬会社に協力を求め、デルタ株に変異する前までに、全世界の人々の1週間分である180億回分の製薬を実行するという壮大なものだった。

 この内容は厚生労働大臣の一任で実行可能であったため、あえて厚生労働大臣と外務大臣は閣僚会議には乗せずに実行をすることを決めた。


「私から一つよろしいですか?」

 冴子の部下である真理雄が手を上げた。全員の視線が真理雄に向いた。


「その昔一緒に動いていた、共産主義国の諜報員からの情報です。僕から見返りで流しているのは、日本の情報ではなく米軍に関する、僕が知り得た情報ですのでご安心を。今後1カ月以内に変異株が発生します。デルタ株です。これはR0が9以上で、致死率に至っては70%を超えて、感染発症から死亡まで48時間程度という、もはや毒ガスと言えるものです。それと同時に、共産主義国はそのワクチンと引き換えに、従属国になることを要求するという発表をします。これを『世界一路構想』と呼んでいる。ウイルスで国民の数が7割以上減って、軍事で攻められることを選ぶか、何も失わずに決定権だけを委ねるかの選択を提示します」

 その場にいた真理雄以外の4人は言葉を失った。


 上村が真理雄を睨みつけた。

「なんだそりゃ?真理雄、お前が二重スパイで感染拡大を防いでいるこの国に揺さぶりをかけようとしている、そうではない証明は?」


「冴子係長と光也さんの下で、僕が二重スパイを実行出来たら、それはもう、僕がこの地球の支配者になれる能力を持っているというレベルだから諦めてください。今回のワクチンの配布を日本が行おうとした場合、共産主義国は日本に対してミサイル攻撃を実行します。場合によっては核ミサイルです。それを避けるために、今回のワクチン開発と配布をアメリカが行ったように仕組んで、日本へのミサイル攻撃を避けたとしても問題があります。世界一路構想の第2プロトコルが発動されて、世界一路構想の参加国による隣国への武力侵略が開始されます。これらの問題を回避させるための、僕が考える方法は、共産主義国が得意とする『バカもやり切れば木に登れる』作戦です。僕の作戦を聞いてもらえないでしょうか?」


 上村は一度だけうなずいた。

「お前は見てきたようなことを言うが、いま言ったことに絶対的な確信があるんだな?」

「もちろん」

 真理雄はうなずき返した。

 

【アリシアの初報360日目】

 MORSウイルスは現在ほぼ置き換わりを終えて、感染のメインはガンマ株となっている。ガンマ株対応のワクチンが、世界中の複数の製薬会社で量産体制に乗り、全世界に届けられるようになった。現在までで1000万人の死亡者が出ている。感染力R0はベータ株と同じ7以上であり、致死率はアルファ株と同じ35%以上である。

 アルファ株、ベータ株と比べて、感染力と致死率が強くなったガンマ株により、世界は再度混迷を極めた。MORS感染が始まってから、世界人口は20億人減った。

 世界人口80億人の、17%が死んだことになる。これはまさに、全世界の人に弾丸が一つだけ入ったコルトパイソンリボルバー拳銃を渡して、ロシアンルーレットをやった結果と同じだ。

 世界は今、とんでもない不穏で不安定な状態になっている。


【アリシアの初報362日目】

 日本時間、午後9時。ジュネーブにあるWHO本部の記者会見場には、世界中の報道機関が詰めかけていた。

 壇上には、WHOタリク事務局長。 濃いグレーのスーツに、ネイビーのネクタイを締めた彼の顔には、奇妙な自信と、どこか達観したような諦めの色が滲んでいた。


 背後の巨大スクリーンには、Universal ProteoBlock Initiative(プロテオブロック計画)というロゴが表示されている。。



 その横には、地球全体を覆う白い光のネットワークが描かれ、まるでプロテオブロックが世界を包み込むかのようなビジュアルが映し出されていた。


「世界の皆様、こんにちは」

 静寂に包まれた会場に、タリク事務局長の声が響く。


 彼は原稿を一瞥しただけで、あとは視線をカメラのレンズに固定し、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。

「本日、私は歴史的な宣言を行います。我々WHOは、数十年にわたる研究の集大成として、万能ウイルス無効化薬の開発に成功しました」


 会場は、一瞬沈黙した後、ざわめきに包まれた。記者たちは顔を見合わせ、まるで聞き間違えたかのように動揺している。

「このウイルス無効化薬は、次の未知のウイルス変異株に対しても、理論上は 完全に対応可能です。すでに量産体制は整っており、予防的措置として、これから数日以内に全世界へ供給します」


 会場の動揺は、もはや抑えようがなかった。タリク事務局長は、記者たちの戸惑いを無視して、淡々と話を続けた。


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