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縁の理(えにしのことわり)上巻~ReTake.ZERO~MORSウイルスとAIアリシアの攻防  作者: 平瀬川神木
第11章 再起

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第95話 第11章 再起 第7節 人間が理解しえない量子論の向こう側

「ちゃんと聞かせて。だから悠太君には聞かせたくない?」

「そうだね、そうかな?」

「じゃあなんで私の家に来るの?私を呼び出せばいいじゃない。悠太君すぐに戻って来るわよ?」

「来ないよ」

 美咲は怪訝な顔をして悠太を呼んだ。だがその時に美咲は声が出ないことに気が付いた。そして真っ白な空間に、自分と真理雄が向かい合って座っていることにも気が付いた。


 そこにはテーブルも、その上に置かれていた焼き小籠包も無かった。

「なにこれ?」

 美咲は肉体的に声が出ていない自覚があるにもかかわらず、思ったとおりに言葉が出ている。声が出ているわけではないのに、自分の言葉が聞こえている。

 真理雄は優しい笑顔で言った。

「簡単に言うと時間が止まっているだけだよ。まあ正確に言えば時間が止まっているのではなくって、一瞬が引き延ばされているというか、みんなが言う時間の密度が薄くなっているというか」


 美咲は過去を思い出していた。人生において幾度かは、自分の理解を超えるものに出会ったことがある。中等部の時に同級生の女子を男子トイレで裸にして、その様子を笑いながら動画で撮影していた、男女合わせて5人の思考。修学旅行の時に撮影した、花楓とのツーショット写真で、自分のお腹に人間の顔が映っている写真とか。でも今回のこれはあんまりだ。まさにあんまりだ。精神疾患とか、光学的なフレアやゴースト現象など、何一つアンチテーゼが思い浮かばない。せいぜい白昼夢くらいだ。


 真理雄はとても優しい笑顔で言った。

「あの5人を投げ飛ばして、関節を外していく美咲ちゃんは、まさにキレていたよね。事後処理のお父さんがさすが、美咲ちゃんのお父さんって感じだったね。5人とも病院送りにした美咲ちゃんに、一切の責任を負わせなかった。その5人は放校だったよね。あの写真については、パレイドリアというには、あまりにハッキリ写っていたからね。やっぱり光学現象なのかもしれないね。今のこの状況はね、美咲ちゃんには理解できないよ。赤外線や紫外線が見えないのと同じように。人間には認知できない」

「でも赤外線は私の身体を温めてくれるし、紫外線は日焼けしてこんがり小麦肌にしてくれる。見えなくったって認知はできるわ?そもそも、どうして真理雄君があの5人の事を知っているの?心霊写真の事だって。いや、私が考えたことを、なぜ把握しているの?だいたいが時間が止まっているって、いったい何よ」

 美咲は早口で詰め寄った。


「落ち着いてよ。美咲ちゃんに理解できないことだけれど、それでも伝えておこうと思ったから、僕はここに来たんだ」

「そもそも私、真理雄君の記憶だけおかしいのよ。覚えているんだけど覚えていないの。初めての萬珍樓個室食事会での写真を見ても……そこには私と悠太君、花楓と篤君と真理雄君も写っていた。でもそこに確かに映っている真理雄君には違和感しかないの。萬珍樓出た後で、悠太君と篤君と真理雄君で早速焼き小籠包を食べていたことだって覚えている。写真だってある。その後も何度も一緒に出掛けたのも覚えているし、話したことも覚えている。でも……覚えていないの。いや……違和感があるの。自分で捏造した後付けの記憶のような変な感じなのよ。この状況と何か関係があるの?」


「うん、たぶんある。時間ってね、人間が利便性向上のために便宜上取り決めているだけの存在であることは、美咲ちゃんなら理解していると思うけれど、そこは問題ない?」

「真理雄君が話している枠組みが分からないし、状況と会話の内容が壮大過ぎて、どう答えたらよいのか難しいけれど……。時間が経過すると人が死ぬわけではなくて、人間の細胞は細胞分裂の回数が増えると、分裂に失敗をすることが増えてくる。そして初めから決められた回数しか分裂できない。これらが老化。正常な細胞が生命を維持するのに不足する状態になった時、人は死ぬ。つまり時間制ではなくって回数チケット制といえる。平均寿命80年などという時間は、細胞分裂回数を数えるのは無理だから、便宜上取り決めているだけの存在。こんな答えでOK?」


「さすが美咲ちゃん。美咲ちゃんが生まれ育った、片瀬海岸の砂浜にたどり着いたプラスチックストローのゴミが、100年経つと消えて無くなるわけではなく、10の15乗×3.15×10の9乗=3.15×10の24乗回、紫外線のパンチをくらうと粉々になる。それをわかりやすい物差しで指し示すために、人間は100年という時間の概念を作った。時間っていうのは、ただのモデルであり概念なわけだよね」

「そうね。1日が24時間である理由だって、バビロニア人が割り切れる数の多さから好んで使っていた12を使った。その後でフランス人がダースと名付けた訳だけど。その概念を転用して、昼の1ダースと夜の1ダースという設定で24時間にしただけのものだと学んだ。60分や60秒だって、同じ古代メソポタミアで、約数の多さから便利とされていた60進法が採用されたって何かで読んだ。全部人間都合の根拠でしかなくて、24や60は人間が決めたモデルだという言い分は、そのとおりと納得する」

「時間と同じようにね、空間もまた人間が認知できる範囲で、人間が便宜上取り決めただけなんだ」

「センチとかフィートとかヤードのことを言っているの?それとも量子物理学の9次元とか11次元の話?」

 美咲は相変わらず怪訝そうに言った。


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