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縁の理(えにしのことわり)上巻~ReTake.ZERO~MORSウイルスとAIアリシアの攻防  作者: 平瀬川神木
第9章 探求

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第71話 第9章 探求 第1節 AIの提示と博士の反論

【アリシアの初報212日目】

 アリシアが厚生労働省に、国立でのウイルスゲノム解析やワクチン設計を行う為のチーム編成を提案して、認証されてから1カ月ほどで、生物の遺伝子を解析する機械「次世代シーケンサー(NGS)ノバシーク6000」が、国立感染症研究所武蔵村山庁舎に導入設置された。

 今後は厚生労働省が、常勤の職員や非常勤の職員を選定して人数を増やしていく事になるが、当面の間、小曲所長は、本来の自分デスクがある新宿区戸山庁舎ではなく、村山庁舎に登庁し、久しぶりに「所長」から「博士」に戻って解析や設計に集中することになる。


【アリシアの初報240日目】

 ベータ株に対応するワクチンが浸透するようになってから3カ月が経過した。

 結果として世界の感染者数がどんどん減ってきて、当然死者数も減ってきている。

 これらの現実を踏まえ、WHOが公式な把握数値としてウイルスの拡大から減少安定に向けて動き出しているという発表を行った。

 

 アリシアは様々な省庁と計画を立てたり、データ共有を図ったりするかたわらで、国立感染症研究所の小曲博士の相談やデータ分析も行っていた。


 小曲博士はMORS―アルファ株(初期)と、現在の主流である感染力が強いが致死率は下がったベータ株、そしてアルファ株からベータ株に置き換わるタイミングで発生した、どちらともいないアルファダッシュと扱われている株、3種類のウイルスゲノム解析を数度にわたり実行していた。


 日本国内において、本土では感染者を出していないが、沖縄の隔離施設では一定数の感染者が発生している為、それぞれのウィルスは保管できている。

「小曲博士が解析を行った3種類のウイルスについて、違和感を感じる部分があるのですが」

 まだアリシアと仕事をする時間が少なく、ワイヤレスイヤホンから突然話しかけられた小曲博士は、少し驚いてコーヒーで白衣の一部を染めた。


「えぇと、アリシア君。小曲です。もう一度お願いします。どうぞ」


「小曲博士。アリシアです。博士が解析を行った結果について、違和感を感じる部分があるのですが、ご相談してよろしいですか?」


「アリシア君。小曲です。どんな違和感なのかを教えてください。どうぞ」


「アルファとベータのゲノムビューアをご覧いただきたいのですが」


「アリシア君。小曲です。二つを並べるのですね。少し待ってもらえますか?どうぞ」


「わかりやすく並べた画像データを、小曲博士のフォルダにアップしました。「A&B―H」という名前です。確認方法はご存じですか?」


「アリシア君。えぇと……はいはい。出ましたよ。どうぞ。ああ、なるほど……」

「まず非連続的に感じる点です。変異部の配置と変異の幅が、自然の曲線の様な変化幅を飛び越えているように感じるのです。小曲博士がご趣味とされていることに例えると『挿し木』のような印象と言いますか」


「……なるほど。というかなんで私の趣味が盆栽であることを知っているんだろうか?アリシア君、そうですね、例えば遺伝子ドリフト、まあ簡単に言えば偶然のランダムである可能性も高いですよね。まあ、あなたはAIなので、セレクションバイアス、特徴に目が行ってしまうことは無いのでしょうが」


「もう一点、スパイク蛋白質の先端部分に変異が集中している点も違和感を感じています。いかがですか?」


「……なるほど。先端部分……つまり人間に感染するための『鍵』の部分に変異が集中していると……あたかも人間の鍵穴の形を知って変異しているように見えると……アリシア君。今のところはそうだね、としか言いようがないかな。生物って言うのはね、脳が無いのにあたかも意志や思考を持っているように見えるものもあるんだよね。単細胞の粘菌は迷路の出口に餌を置くと、最短距離のルートを見つけるし、ハエトリグサだって葉に1回触れられても動かないけれど、2回触れられると、数秒で口を閉じるんだ。数えているってことなのか?って話だし、オオミズナギドリって言うキノコの仲間なんて地下で菌糸網を張り巡らせて、数百メートルの範囲の植物の根っことつながって、栄養と情報の交換をしているんだ。それにね――」


「博士、小曲博士。小曲博士は現状で、私が感じている違和感は異常ではないとお考えになられていることを理解しました」


「え、ああ。うん。そうだね。楽しい議論だったよ。どうぞ」


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