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第7話 第1章 播種 第7節 美人で聡明な人と生きるには、それに見合った対価が必要なんだぞ!

 私の名前は安田幸太郎、44歳。高校2年生になる息子がいる。同じ歳だった妻は31歳の時に病死した。息子が4歳の時だ。息子の母親になりたいと申し出てくれた女性は何人かいたが、私自身が亡くなった妻に対しての想いが断ち切れなかった為、息子と二人で生きてきた。

 妻が学生の頃に競泳、平泳ぎの選手だった事もあり、息子にも競泳を習わせていた。日曜日には本人の希望で硬式野球チームにも参加していたが、高校に入る時に本人からスポーツをやめたいという相談を受けた。

 理由を尋ねると、コンピュータープログラミングを真剣に覚えたいからという事だった。

 私は仕事で医療画像データを解析して、問題提起を行うAIシステムを開発しているのだが、片手間で二人の生活を楽しく過ごすための小さなプログラムを書いていた。


 例えば携帯ゲーム機で使えるプログラムとして、ボタンを押すとルーレットが回って、明日の夕飯のメニューが決まるゲームとか。夕飯のメニュー決めは、私のセンスを問われたりするので、精神的に重労働であると感じていた。だが運で決まるとなれば、私の責任が回避できるので楽になる。ボタンを押すのは息子の仕事にしていたし。

 おかげで次の日に息子が、夕飯で使う食材の買い物を済ませてくれるようになった。そんなどうでもよいプログラムを、息子と相談しながら作って使っていた。

 息子は私が作る料理を覚え、私より上手に作れた時に私が驚く事を喜んでいるようで、プログラムもまた、私より良いものを作って驚かせたいという願いを持っている様子だった。


 私としては、悠太が自分でやりたい事を見つけて、その道に進むのは大変うれしいことではあるけれど、体の育成と健康を考えれば、スポーツも続けて欲しかった。だがこれからの時代、デジタル技術者が不足するのは間違いない事実であったため、悠太の将来を考えれば正しい道だと納得した。


 いつも通り家に戻り玄関のドアを開けると、ピザを焼いた良い匂いがしてきたので、今夜はピザだと思った。今では悠太が私の夕食の準備もしてくれている。

 だが玄関に見慣れない靴が「そろえて」置いてあるのが目に入った。パンプスなので間違いなく女性のものだ。高校2年生になれば、彼女もできる年頃ではあると思うが、今までそのような話が全然なかったので、少々戸惑っている。


「悠太、ただいま。お客様が来ているのかな?」私は色々な状況を想定して、「ガチャガチャ」わざとカバンを壁にぶつけたりして大きな音を立て、私が帰ってきた事を悠太とパンプスの持ち主に伝えた。

 すぐに『ちゃんと』洋服を着た悠太が自分の部屋から出てきて言った。

「おかえりなさい。今日は一緒にAIを作っている、黒田美咲さんという人が来ているんだ」

 次に悠太の部屋から顔を出したのは、黒髪のロングヘア―が艶やか(つややか)に光を反射して、170センチ位の悠太とほぼ同じ身長のスレンダーなスタイルに、大変……これが大変美しい顔立ちの女性だった。


「初めまして、黒田美咲です。自作のAIにディープラーニング機能を搭載したく、悠太君の力を借りる事になりました。先ほど悠太君特製のピザをごちそうになり、ほっぺが落ちる経験をしました。腰も抜けそうになる美味しさで驚きました。それがお父さん直伝だと聞き、また驚きました。これからも色々お世話になると思います。よろしくお願いします」


 ああ、悠太よ。これは素晴らしい。とても知的な声と話し方。かなりの教育を受けていると思わせる、立居振る舞い。ああ、悠太よ。これだけの美人で知性の高い女性となると、今後お前も色々大変になるんだが、その覚悟はできているのか?

「そうでしたか。初めまして、悠太の父、幸太郎と申します。お聞きになっておられるかわかりませんが、男手一つで育てたので、特に女性に対しては、教育が行き届いていないところがあります。何かあればしっかり注意してやってください。学校のお友達ですか?」

「お父さん、違うよ。美咲さんは僕より2歳年上で、応慶大学の医学部の人だよ。将来はお父さんのお客さんになるかもね」


「そうだったのか。それはそれは」

「それとお父さん。今はまだ違うけど……いや、もう美咲さんは僕の彼女だ。そのうちお父さんの娘にもなる人だから、そこんところよろしくね」

 パンプスの持ち主は顔を真っ赤にして言葉にならない声を上げた。


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