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縁の理(えにしのことわり)上巻~ReTake.ZERO~MORSウイルスとAIアリシアの攻防  作者: 平瀬川神木
第8章 原因

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第62話 第8章 原因 第2節 初めの一歩を踏み出す夜に

【アリシアの初報24日目】

 悠太がトーストを持ったままで言った。

「うわぁ。1000人を超えてしまったのか。もう感染拡大は止められないんだろうね」


「悠太君の認識を修正しておくとね、実際には1000人が発症して病院にかかったという状態であって、アリシアは今回、CDRって呼ばれている捕捉率を10倍って想定しているから、すでに1万人の感染者がいるということになっちゃうのよね。これもR0が6.8の恐怖なのよ。気が付いた時にはとっくに手遅れって現実がね」


「僕が気にしているのは、イギリスの感染一人目が水先案内人だったことなんだ。水先案内人ってさ、大型船が浅いところに行って座礁してしまったり、見えない岩とかにぶつからないように、その湾を知り尽くした人が、船の操作をする艦橋に乗り込んで指示をするんだ。一日のうちに何隻もの貨物船に乗るから、他の貨物船の乗組員の状態が心配なんだ」


 悠太の言葉に美咲は「あ」と言い、しばらく目を丸くしたままで動かなくなっていた。「ん」と言うと、すぐにトーストとスマホを持ち換えて電話をした。


「もしもし、冴子さん?」

「おはよう~美咲ちゃんは早いのね~」

「冴子さんこそ早いですね。まだ家ですか?」

「そんな訳ないじゃないの。お仕事中よ?」


「ごくろうさまです。すぐに確認と対応策を考えて欲しいことがあります。あとでアリシアで共有は図りますけど、イギリスのファーストケースとなった水先案内人が、発症する4日前以降に乗った貨物船について。感染が広がっている可能性が高いです」


「そうね。でもそれは一応イギリスがクリアしているのよね」

「クリアということは、チェックした結果として感染は見つかっていないと?」

「そうそう」


「冴子さん。日本の政府機関が他国にどれだけのことが言えるのか知らないし、洋上の船をどの国が扱うのかも知らない。すでに目的地に到着している船もあるのかもしれないし。ですがイギリスのイプスウィッチ病院からのデータを見ると、アリシアと私は排菌開始が発症3日前と読んでいるの。これはまだ聞き取りとクラスター分析ベースの予想だから、8割程度の自信しかないけれど。そして発症までの期間が結構長いの。1週間から2週間近い可能性もある。イギリスがいつ調査をしたのかわからないけれど、その時は大丈夫だったけれど、今日の段階で発症する可能性も十分ある。私とアリシアではイギリス政府の情報に触れることはできない。お任せするしかないの」


「わかったわ、美咲ちゃん。また連絡するからね」


「ふぅ……」電話を切った美咲は一呼吸置いた。

「おかあさん、こんどはすまほをおいて、ぱんをもってね」

 美咲は眉毛を上げながら、冷えてしまったトーストを口に放り込んだ。


【アリシアの初報26日目】

 英国保健安全庁(UKHSA)はダルトン大臣が記者会見を行った。

「本日、新型ウイルスのゲノム配列の解析が終了いたしました。従いまして、新型ウィルスのゲノム配列を公表します。UKHSAがサフォーク州症例から解読し、GISAID(世界ウイルスゲノム共有データベース)にゲノム配列データをアップロードしたことをお知らせいたします。解析はケンブリッジ大学とオックスフォード大学のウィルス学研究室との相互確認も終了済みとなります。我々は国際社会と協力し、この危機に立ち向かいます」


 隣に座るハーリーズ長官が補う。

「感染力は極めて高いと予測されるが、R0は疫学データ収集中です。重症例が増加傾向ですが、具体的な重症率はデータ不足で未定。解析は我々のウイルス学者チームが10日間で完了しました。ゲノムによりmRNAワクチンの設計が数日で可能になります。世界の総力を挙げて、ワクチン開発と量産体制の構築を加速してほしいと願います」


 記者

「共産主義国の要求への対応ですか?」

「我々は全ての国に透明性を求めるものであります。今後も我々の責任を果たすことでしょう。今こそ国際社会が一致団結して協力すべきだ。我々は隠蔽もごまかしもしない。自分たちの利益だけを求めてはダメだ」


 悠太が出勤して不在の自宅で、美咲は自宅でテレビをつけたまま仕事をしていた。

「やっと医学的に一歩目が踏み出せた感じね……」

 独り言を言うと翔子が言った。

「わたしもこんやから、れでぃへのいっぽとして、ひとりでおふろにはいったほうが、よいのかしら……」

 美咲は噴き出してしまうのを必死にこらえていた。


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