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縁の理(えにしのことわり)上巻~ReTake.ZERO~MORSウイルスとAIアリシアの攻防  作者: 平瀬川神木
第4章 基軸

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第25話 第4章 基軸 第3節 四角いモナカとシックスパックが前に進む鍵となる

 上村は首を傾げたままで声を出した。

「昨日?」

「そう、昨日の夜。新宿のプラザホテル。うちの響子ちゃん、ちょうどオフだったんだけどね。光也がプラザホテルの監視カメラをチェックしてたら、川滝大臣と同じ部屋に入るのを『たまたま』見ちゃったのよ。しかも、『たまたま』録画もされちゃって、『たまたま』室内の音声まで拾えちゃったのよ」

 冴子は上村のコーヒーカップを奪い取り、ゆっくりとコーヒーを口に含み「ごっくん」と音をたてて飲み込んだ。

「響子ちゃん、カワイイ声出してたのよ。大臣も響子ちゃんのことを誉めまくっていたし、あんなプレイの趣味がある人だったのねぇ……政治家の性癖って色々だけど……人は見かけによらないわよね……」

「お前らは怖いよ。この案件は冴子一任だ。ケツは俺が持つから好きにやれ」

「私のカードだけで足りるから。問題ないわよ。大船に乗ったつもりでいてね」


 椅子に座ったままの上村に手を振って、冴子は会議室を出た。光也もその後に続いた。

「光也、エリシオン社と応慶の交渉進捗は逐次教えてね。私はこのまま幹事長の敏ちゃんに中取ってもらって、川滝大臣と話してきちゃうから」

「この国の政治のドンを敏ちゃん扱いって……怖」


 冴子はスマホを取り出して、電話をかけた。

「もしもし敏ちゃん?」

「冴子。30秒くらいだぞ」

「オッケー。敏ちゃんが可愛がっている川滝大臣につないでほしいの。動画流出直前でピンチよ」

「わかった。川滝の秘書から連絡させる」

「オッケー。今回のことは私の借り?敏ちゃんの借り?」

「……まあ、俺の借りになるんだろうな」

「じゃあ時間作って、また敏ちゃんの生まれ故郷に連れて行ってよ。フラワーパークでお花見た後は、こないだ時間がなくて行けなかった、神社のお蕎麦屋さんにも行きたいし、デザートにパンジュウ食べて、お土産にモナカね」

「気に入ってたのか?俺の地元」

「当り前じゃない。かなりお気に入りよ?」

「……気に入ってくれていたのか……わかった。また連絡する」


 冴子はスマホをしまうと、庁舎から地下鉄の駅へ向かって歩き出した。ものの2分程度、まだ庁舎の敷地内を歩いている時に、スマホの着信振動が冴子を呼んだ。

「もしも~し。官房の佐藤で~す。どちら様ですか~?」

「わたくし川滝議員の第一秘書をしております浦野といいます。幹事長からすぐに連絡するようにご指示を頂いたのですが」

「わかったわ。じゃあ一番早く、私と川滝大臣が話せるのはどこでいつかしら?直接本人とじゃなきゃダメよ?川滝大臣の政治生命をかけたサイコロは、川滝大臣自身に投げてもらわなきゃフェアじゃないから」

「……かしこまりました。わたくしの独断で。1時間20分後に厚生労働省庁舎を出て公用車で視察に向かわれます。おそらく移動時間は30分程度です。その時間わたくしは同乗しませんので、ご自由にお話しくださいませ。1時間15分後に、厚生労働省庁舎前に停車しているであろう公用車に先にお乗りください。運転手には伝えておきますが、大臣にはわたくしからは何も申し上げませんので、わたくしはこの件に関してノータッチとさせていただきます」

「あらあら。さすが優秀なのね。驚いたわ。多くの場合もう少しの時間、おまえ怪しいな、怪しくなんてないの合戦が繰り広げられるんだけどね。あなたのご意見まるっと了解よ。ありがとう」


 冴子は通話を切った。

――お隣さんにいたのね。じゃあこの1時間15分で……次の一手として……悩ましいわね。政策統括室か医政局の地域医療計画課あたりかなぁ。リークしておくなら医政局長あたりかな……

 冴子がいる本府ビルと呼ばれる場所から厚生労働省がある中央合同庁舎第5号館までは1キロ程度、歩いて15分くらいの距離だ。川滝の視察出発の時間まで余裕があったが、冴子はそのまま厚生労働省庁舎の地域医療計画課へ向かった。


 歩きながらスマホを取り出し、光也にメッセージを送った。

「アリシアの情報を事前リークしておく先は?」

 光也から180秒後に「リーク相手は誰が良い?の答えは、地域医療計画課課長一択。野心家だよ。学閥絡みで評価低いけど能力高い。庁内サーバーの課長フォルダ直下。『AP』というファイル名のPDFをおいておくよ」というメッセージの返信があった。


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